論文概要
闘牛はこれまで多くの論議を呼んできたが、ポルトガルを含む世界各国で法的には容認されているスポーツ競技である。闘牛が動物に与える痛みや苦しみに対する懸念のために、長年にわたって動物保護団体から注視されてきた。ポルトガルではこれまで闘牛に対して強い支持が存在していたが、今後の地域や国による法規の改正が必要かどうかを考えるうえで、闘牛がどの程度まで社会的に受容されているかを調査する必要がある。
本研究ではポルトガル人の参加者を対象として、闘牛を観戦した経験に加え、アニマルウェルフェアと倫理に関する認識について、人口統計学的要因を考慮しながら検証した。参加者8,248名は、主にポルトガルのソーシャルメディアを通じて募集された(このため、回答者はポルトガル社会の人口構成を代表していない可能性がある)。
アンケートで得られたデータについて、度数表・多重対応分析・2段階クラスター分析を用いて検証した。ほとんどの回答者は、闘牛に対して否定的な意見を持っており、闘牛はポルトガルになんら良い影響を与えていないと認識していた。ほとんどの回答者は、闘牛が牛に苦痛を与えていると考えていたが、その一方で闘牛を禁止することに関しての考え方にはまったく一致が見られなかった。
人口統計学的分析によれば、闘牛に対して好意的な回答をした人々の特徴は、65歳以上の男性、ローマ・カトリック教徒、低所得者層または高所得者層、ポルトガルの地方に在住していることであった。やや意外な結果として、獣医師には闘牛に対して好意的な傾向が見られた。闘牛における動物の苦しみが認識されているにもかかわらず、ポルトガル社会には伝統的な闘牛の慣習を維持することを望む人々がまだ多く存在していると考えられる。
Francisco Javier Diéguez, Yara Zau, Inés Viegas, Sara Fragoso, Patricia V Turner, Gonçalo da Graça-Pereira
2020/11/07
An Evaluation of Portuguese Societal Opinion towards the Practice of Bullfighting