論文概要
私たちが口にする食べ物は、私たち自身の健康と、私たちが皆で共有している環境に大きな影響を及ぼしている。最近の研究では、食事に占める動物性食品の割合を減らすことができれば、健康と環境の両面において有益であることが強調されている。ここでは、世界の各地域ごとに食生活と体重に関する危険因子を組み込んだ健康モデルを構築し、これを排出量推定および経済評価モジュールと組み合わせることで、食生活の変化が健康と環境に及ぼす影響を初めて定量化した。
その結果、食肉消費を減らし、プラントベース食品を増やす方向への食生活の変化がもたらす影響は、地域によって大きく異なることがわかった。環境と健康に対する数値上の効果が最も大きいのは発展途上国における食生活の変化であるのに対し、欧米の高所得国や中所得国では1人当たりの恩恵が最も大きい。標準的な食事ガイドラインに沿った、よりプラントベースの食事への移行によって、2050年の基準シナリオと比較して、世界の死亡率を6~10%、食品に関連した温室効果ガス排出量を29~70%削減できる可能性がある。
健康面でのこのような便益を経済効果として見た場合、評価方法によって相当異なるものの、推定される効果の大きさは、環境面で得られる便益による経済効果と同等か、それを上回ることがわかった。全体として、食生活の改善によって得られる経済的便益は1~31兆米ドルと推定され、これは2050年の世界のGDPの0.4~13%に相当する。しかし、世界の各地域における食生活を、ここで検証した食生活のパターンに一致させるには、世界の食料システムに大きな変化が必要となる。
* 環境行動に伴って得られる副次的・間接的・相乗的な便益(共便益)
Marco Springmann, H. Charles J. Godfray, Mike Rayner, Peter Scarborough
2016/03/21
Analysis and valuation of the health and climate change cobenefits of dietary change