論文概要
アニマルウェルフェアに対する社会的関心から、この問題に関する基準や法律が必要とされている。畜産動物のウェルフェアに対する考え方は一般市民と生産者では異なることが多いが、生産者が社会からの要請に応えられなければ、その事業は社会的に受け入れられなくなり、それによって生産コストが上昇すれば順調な経営は困難となる可能性がある。
本研究では、オーストラリアの一般市民(501名)と食肉の生産者(200名)を対象とした全国調査を実施し、食肉産業における一般的な慣行とアニマルウェルフェア問題についての考え方、これらの慣行に関する知識、食肉産業に従事する人々に対する信頼度について検証した。
一般参加者は、ランダム・デジット・ダイヤリング(RDD)方式による電話調査で募集し、食肉生産者は、オーストラリアの食肉生産者に関するデータベースから無作為に抽出した。性別と年齢による影響を補正すると、一般参加者と生産者の間には、態度・信頼度・知識について検証した27項目の変数のうち、20項目において大きな違いが見られた(p<0.01)。
生産者は、海上輸送や陸上輸送において羊や肉牛がおかれている状況や食肉産業で行われている飼育方法、さらに人間の健康・環境に対する影響・動物の利用・アニマルウェルフェアなど、食肉に関わる様々な問題について、一般市民よりも肯定的に捉えていた。従来のメディアと商業メディアに対する信頼度は、一般市民と生産者でほぼ変わりはなく、動物の権利、動物虐待の防止、人と動物の福祉のバランスについても同じような捉え方をしていた。
本研究の結果は、アニマルウェルフェアに対する考え方、飼育方法に関する知識、畜産関係者への信頼度に関して、一般市民と畜産業者の認識には隔たりがあることを示している。
Grahame J Coleman, Paul H Hemsworth, Lauren M Hemsworth, Carolina A Munoz, Maxine Rice
2022/09/22
Differences in public and producer attitudes toward animal welfare in the red meat industries