論文概要
質の高い食生活は、精神疾患の患者数が増加傾向にある中で、有効な対策の1つとして可能性が期待されている。本研究では、EAT-Lancetダイエット*1 を遵守した場合のうつ病・不安症に罹るリスク、および両者を併発するリスクを検証するため、UKバイオバンクの参加者180,446人を対象とした前向き調査を実施した。
参加者がEAT-Lancetダイエットの基準をどの程度まで守っているか、その遵守度を3種類の食事スコアに換算して評価した。11.62年間の追跡期間を通じて、Knuppel EAT-Lancet 指数における遵守度が最も高いグループでは、最も低いグループと比較すると、うつ病・不安症に罹るリスク、両者を併発するリスクはいずれも低下しており、それぞれのハザード比*2 と95% 信頼区間は、うつ病=(0.806、0.730-0.890)、不安症=(0.818、0.751-0.892)、両者の併発=(0.756、0.624-0.914)となっていた。
これをStubbendorff EAT-Lancet 指数で比べた場合、上記に対応するハザード比(95% 信頼区間)は、それぞれ0.711(0.627-0.806)、0.765(0.687-0.852)、0.659(0.516-0.841)であり、一方、Kesse-Guyot EAT-Lancet 指数では0.844(0.768-0.928)、0.825(0.759-0.896)、0.818(0.682-0.981)であった。
これらの結果から、EAT-Lancetダイエットへの遵守度が高いほど、うつ病および不安症に罹るリスク、両者を併発するリスクはいずれも低くなることが示唆された。
*1 プラネタリーヘルスダイエットとも呼ばれ、果物や野菜など加工度の低い植物性食品の摂取を重視し、魚や肉、乳製品の摂取は控えめにする食事法。スコアでは、14項目の食品成分について摂取レベルの基準に食事内容が準拠しているかを測定する。*2 単位時間当たりにイベントが発生する相対的な危険度(ハザード比が2.0の場合、危険度は2.0倍となる)
Xujia Lu, Luying Wu, Liping Shao, Yulong Fan, Yalong Pei, Xinmei Lu, Yan Borné, Chaofu Ke
2024/07/03
Adherence to the EAT-Lancet diet and incident depression and anxiety