論文概要
農業を拡大して食料や資材に対する需要の増大を満たすことは、土地利用の変化を引き起こす重大な要因であり、気候変動と生物多様性の喪失を加速させている。海洋で養殖される海藻バイオマスは、食料や飼料、バイオ燃料を代替・補完することできることから、陸上作物に対する需要を減らし、農業による温室効果ガス排出を削減するのに役立つ可能性がある。
ここでは、海藻養殖の世界的な拡大可能性をモデル化し、食料・飼料・燃料に海藻を利用することを想定した5つの異なるシナリオにおいて、海藻の利用が増加した場合に農業の環境フットプリントにどのような影響があるかを検証した。各シナリオについて、海藻の利用拡大が陸上の環境に及ぼす影響の変化を推定し、商業的に重要となる34種類の海藻に関して、予想される海洋養殖の拡大を地図上にマッピングした。
その結果、世界の海域のうち6億5,000万ヘクタールで海藻の養殖が可能であることがわかった。ここで検討したシナリオの中で、温室効果ガスを削減するうえで最も大きな効果があるのは、アスパラゴプシスAsparagopsisを養殖して反芻動物の飼料とすることであった(~2.6 Gt-CO2e/yr)。また、世界全体の食料を10%の割合で海藻によって代替することで、最大1億1,000万ヘクタールの土地を節約できると推定される。
全世界で海藻を生産することにより、陸上農業が環境に及ぼす影響を軽減できる可能性があるが、環境に関するこうした課題が陸上から海洋に転嫁されることのないように注意する必要がある。
Scott Spillias, Hugo Valin, Miroslav Batka, Frank Sperling, Petr Havlík, David Leclère, Richard S. Cottrell, Katherine R. O’Brien & Eve McDonald-Madden
2023/01/26
Reducing global land-use pressures with seaweed farming