論文概要
はじめに 代替肉には、持続可能な食料システムを形成できる可能性がある。本研究では、プラントベース肉や培養肉に対する若い消費者の認識と嗜好を調査した。アジアの主要市場における代替肉に対する消費者の嗜好に関する比較研究はまだ不十分であるため、アジアの代替肉市場として将来性が見込まれる日本と中国において研究を実施した。
方法 合計で2006人の若年消費者(日本:887人・中国:1,119人)を対象として、離散選択実験と共起ネットワーク分析を実施した。研究では介入-対照デザインを採用し、介入群の回答者は食肉生産における抗生物質の使用についての健康情報を受け取った。
結果 両国の回答者は、代替肉を従来の肉に代わる食品として認識し、これに関連して植物性タンパク質・加工品・健康上の利点などを連想した。全体として、日本と中国の回答者ではハンバーガーのパティに対する嗜好に違いが見られたが、その他の属性については同様の嗜好を示した。両国の回答者は、「抗生物質不使用」、「トレーサビリティ*1」、「低カーボンフットプリント*2」の表示に対して割増料金を払っても良いと考えていた。本研究の結果から、消費者の嗜好は一様ではなく、情報介入による消費者の嗜好への影響は複雑であることが明らかとなった。
考察 プラントベース肉は両国においてすでに市販されているが、培養肉はいまだ研究開発の段階にあるため、若年の消費者は培養肉に比べてプラントベース肉についてよく知っていた。日本の若い消費者が従来の食肉よりも培養肉を好んでいたことは注目に値するが、このことは、食の安全保障と食用動物の福祉に対する懸念に起因している。また、情報介入によって回答者の注意が代替肉についてのネガティブな認識へ誘導される可能性も明らかとなった。本研究は、これらの研究結果から、代替肉製品の販売を促進するためのマーケティング・メッセージ、食品のラベリング、製品開発の3つに関して示唆を与えている。
*1 追跡可能性。物品の流通経路を生産段階から最終消費段階あるいは廃棄段階まで追跡が可能であること。*2 製品やサービスの原材料調達から廃棄・リサイクルに至る過程を通して排出される温室効果ガスの総量。カーボン(CO2 )の排出量に換算して表示される。
Shuo Huang, Takuro Uehara
2023/11/10
Young consumers’ perceptions of and preferences for alternative meats: an empirical study in Japan and China