論文概要
背景: 食品税や補助金を導入することで、より健康的でより持続可能な食生活を社会で促進できる可能性がある。本研究では、オランダにおいて食肉への課税(15%または30%)と、果物・野菜の消費への補助金(10%)を導入した場合の効果について、社会における30年間の費用対便益分析によって推計する。
方法: オランダ全国食品消費調査(2012~2014年)からのデータを参照して推計を行った。価格弾力性*1を適用して消費と消費者余剰*2の変化を計算した。将来の食品消費と健康への影響はDYNAMO-HIAモデルを用いて推定し、環境への影響はライフサイクル分析*3を用いて推定した。これらの推計はすべて30年の時間軸で行った。すべての影響について、その大きさを2018年のユーロに換算して算出した。
結果: 15%または30%の食肉税、または10%の青果物補助金の導入により、30年間で医療費の削減・生活の質の改善・生産性の向上が期待できる。食肉税が環境にもたらす便益は、15%または30%のシナリオではそれぞれ推定3億4,000万ユーロまたは6億3,000万ユーロであり、その一方、青果物の消費が増加することで環境に対するコストとして1億ユーロが発生する可能性がある。
青果物への補助金によって消費者には100億ユーロの消費者余剰の利益があるが、食肉課税によって210億ユーロまたは410億ユーロという大きなコストを負担することになる。全体として、食肉の価格を15%または30%引き上げると、社会における純利益として、30年間でそれぞれ3億1,000万~7億4,000万ユーロ、または4億1,000万~12億3,000万ユーロが得られ、一方、青果物への10%の補助金は、1,800~3億ユーロの純利益をもたらす可能性がある。感度分析でも主な結果は変わらなかった。
結論: 食肉税と青果物への補助金によるオランダの社会福祉への全体的な効果を検証した結果、これらの導入後の30年間において純利益が得られることが明らかになった。
*1 価格の変動によって、製品の需要や供給が変化する度合いを示す数値 *2 消費者の最大留保価格(支払って良いと思う金額)から実際の取引価格を引いたもの *3 製品・サービスの製造・生産から廃棄・リサイクルまでのライフサイクルを細分化し、環境負荷を定量的に評価する手法
Marlin J Broeks, Sander Biesbroek, Eelco A B Over, Paul F van Gils, Ido Toxopeus , Marja H Beukers, Elisabeth H M Temme
2020/05/11
A social cost-benefit analysis of meat taxation and a fruit and vegetables subsidy for a healthy and sustainable food consumption in the Netherlands