論文概要
EUにおける高タンパク質の飼料への需要の増大、集約的畜産に伴う環境の悪化を背景として、従来の飼料に代わり昆虫ベースの飼料が持続可能な代替品となるかが議論されている。
しかし、このような技術革新の確立は、技術面や経済面での実現可能性だけでなく、それを受容できるかどうかの社会的な要因によっても左右される。本稿の目的は、さまざまな社会集団における、飼料としての昆虫の利用に対する受容可能性を明らかにし、肯定・否定の態度や、利益・リスクの認識へとつながる価値観の議論について洞察を得ることである。
我々は質的内容分析法を用いて、豚や鶏の飼料に昆虫由来のタンパク質を認可することに関するEUの公開協議プロセスでの回答を分析した。その結果、これまでの定量的調査では見逃されてきた、受容可能性についての複雑な判断プロセスに影響を与える価値観が幅広く見出された。特に、アニマルウェルフェアへの懸念や、昆虫を利用した飼料が持続可能な畜産システムに貢献できるのかという懐疑的な意見など、より批判的な声が浮き彫りになった。
これらの知見に基づき、飼料としての昆虫が、持続可能性を重視した農業-食糧システムの変革に貢献できるのかについて議論する。結論として、昆虫ベースの飼料は特定の条件のもとであれば(肥料のように低価値の有機物サイドストリームに載せる場合など)、持続可能性の漸進的向上に寄与する可能性はある。しかし全体としてみれば、規制に関する条件だけでなく特に倫理的懸念の観点からも、この技術革新には限界がある。
Tina Klobučar, David N. Fisher
2023/01/19
Societal Acceptability of Insect-Based Livestock Feed: A Qualitative Study from Europe