論文概要
肉の消費を減らすことは、個人のレベルで二酸化炭素排出量を減らすうえで非常に効果が大きいが、欧米諸国ではいまだにほとんどの人が肉を食べている。最近の研究によれば、食生活の変化は異なるグループの間に存在する境界によって妨げられており、それはこうした境界によって肉食を肯定する規範が強化され、肉食をやめてベジタリアンやヴィーガンなどの菜食を促す呼びかけが封じられるためであるとされている。これまでの研究は、菜食に関する自己報告や遵守状況に関する行動尺度に基づいているため、これらの効果が食事を摂る際の状況や実際の食事の選択に及ぶかどうかは検討されてこなかった。
本研究では、事前登録された2つの実験において、肉食を批判し菜食を促す記事を準備し、肉を食べる参加者に提示した。これらの記事は、ヴィーガン(参加者と異なるグループ)または肉を食べる人(参加者と同じグループ)のいずれかによって書かれたものであった。実験2ではさらに、菜食主義に関する規範および肉食を肯定する規範のいずれかについて解説する記事を準備して参加者に提示した。参加者はこれらの記事を読んだ後、現実の環境(実験1)または仮設的な状況(実験2)において食事を選択する課題を行った。データ分析に際しては、そこで選択された内容を従属変数として検証した。
予想された通り、参加者からみて異なるグループである菜食主義者からの批判は、同じグループである肉を食べる人からの批判と比べると、一貫して参加者から拒否される結果となった。しかし、このことは食事の選択には影響していなかった。自己報告や行動選択に対して、菜食主義に関する規範、肉食を肯定する規範による主効果はなく、これらの規範との間には交互作用も見られなかった。ヴィーガン食を遵守することとヴィーガン食を選ぶことの間に存在する潜在的な中間過程について考察し、異なるグループ間の建設的なコミュニケーションのためにエビデンスに基づいた提言を導出する。
J Lukas Thürmer, Christoph Bamberg, Sean M McCrea, Jens Blechert
2024/09/01
Social impediments to meat-eaters' adherence to critical calls for a meat-free diet: An experimental test of social norm and message source effects