高所得国において個人が牛肉の消費を制限するべき道徳的理由

本稿の論点は、牛肉の生産・消費がもたらす悪影響を考慮すると、多くの高所得の国々では、個人のレベルで全般的に牛肉消費を制限し、代わりに植物性タンパク質を摂取する道徳的な理由があるということである。牛肉の生産は、農業による温…

食肉消費、健康と環境

世界における1人当たりの食肉の平均消費量、および世界全体の食肉の総消費量は、個人の平均所得の増加と人口の増加により、いずれも上昇しつつある。さまざまな種類の肉や肉製品を消費することは人々の健康に大きな影響を及ぼしており、…

食肉と健康の結びつきは、英国のニュースメディアでどう表現されているか

公共の場で食事と栄養の問題が話し合われる際に、主要メディアはその議論形成の進め方において中心的な役割を果たしているが、そこで食肉と健康の結びつきがどのように描かれているかについてはほとんど調べられていない。本研究のために…

代替タンパク質への移行に対する消費者の抵抗 システマティックレビュー

動物性タンパク質から代替タンパク質源への移行において、消費者からの抵抗は重大な障害となる。これには染みついた肉食の習慣を変えようとしない消費者と、こうした反応を予想して政策立案やマーケティング、実務に関わる担当者が行動を…

低炭素の食生活は、地球環境と健康にかかるコストを削減できる

動物に由来する食品の消費を削減することで、関連する外部費用*1(コスト)を削減できる可能性がある。しかし、その削減の効果はいまだ十分に解明されていない。ここでは、ライフサイクル・アセスメント*2 の原理とマネタイゼーショ…

サステナビリティ科学におけるコミュニケーション ドイツにおける「真のコスト・キャンペーン」に関する事例研究

人新世*1 においては人為による気候変動が顕著であり、気候変動目標に取り組み、地球環境の限界*2を守るための行動が緊急に必要とされている。サステナビリティ(持続可能性)に関する研究はこの問題に関する知見を提供しているが、…

食品の「真の価格*」に向けて アグリフードシステムを変革する手段としての付加価値税

気候危機、COVID-19のパンデミック、ロシアによるウクライナ侵攻とこれに起因するエネルギーと食糧の不足など、現在のさまざまな危機を通じて明らかになったのは、地域の食糧生産と農地を活用した、強固で持続可能なサプライチェ…

肉の消費を削減するための政策 英国における受容可能性についてのサーベイ実験

食肉消費量を削減する政策は、気候変動目標を達成するために必要であるとともに、国民の健康状態も改善できる可能性がある。こうした政策を実現するうえでは、社会がそれを受容できるかどうかが重要となる。本研究では、赤肉と加工肉の消…

食品に対する付加価値税の改革は、欧州において健康・環境・経済面の便益をもたらす

世界的な政策目標の達成に必要となる食生活の変化を促すためには、財政政策によるインセンティブは重要である。欧州諸国では、健康と環境に関連する食品には付加価値税が課されることが多く、その税率は軽減されるもののゼロではなく、最…

食肉課税に対する社会的・政治的な受容の可能性 – 政策フレーミングと税収の使途に関する実験

本稿では、赤肉・加工肉に対して課税することに関してスウェーデンの国民と政治家の態度を調査し、その課税の枠組みについて、1.気候変動税、2.公衆衛生税、3.気候変動税と公衆衛生税の両方、のいずれかとした場合に課税を受けいれ…

プラントベース代替食品は、動物性食品より健康的であり、環境的に持続可能である

環境と動物のため、また個人の健康と公衆衛生のために、工場畜産から脱却する強い理由はますます増えつつある。動物性食品を代替するプラントベース食品は、嗜好性・価格・利便性という消費者の意思決定の中核をなす要素に対応しているた…

代替タンパク質のイノベーション 産業界と消費者における課題

現在の温室効果ガス排出量の4分の1以上は農業に起因するものであり、とくに食肉生産はそのカーボンフットプリント*の大部分を占めている。低・中所得国において富裕化が進むとともに、乳製品や肉製品など動物性タンパク質に対する需要…

今後の畜産政策の方向性に関するドイツ市民の意識

畜産業を持続可能な形で移行させることは、国際的および国内的な規制政策における課題となっている。これまで政治的な議論においては、アニマルウェルフェアを強化したり温室効果ガス排出を削減したりするために、生産や管理の方法をどの…

高所得国におけるプラントベース食への障壁 システマティックレビュー

プラントベースの食事を取り入れることによって一部の疾病を発症するリスクが低下し、環境の面でも有益であることがわかっている。このレビューでは、高所得国に居住する18歳から65歳の成人がプラントベースの食生活を始める際に経験…

現代の奴隷制と漁獲競争

現代の海洋漁業は危機に瀕しており、同じ漁獲量を確保するためには1950年代の2倍に相当する漁獲努力量*1 を必要とし、多くの船団は経済的あるいは生態学的な持続可能性を超えて操業している。漁獲をめぐるこうした競争において収…

米国国土での食料供給における広汎な強制労働のリスク

食品生産の労働環境に関する社会的リスクの検証やケース・スタディは、主として特定の集団や地域、商品を対象として行われてきた。多くの食品は複雑なステップを経て供給されているが、その労働環境に関して国際基準に照らした体系的な検…

ヒューマン・ファースト 人々はなぜ動物よりヒトに価値をおくのか

人々は当然のこととしてヒトが他の動物よりも道徳的に優位にあるものと考えている。道徳的判断におけるこのような人間中心主義は、ヒトと動物との間に認められる知的能力の差に基づくものなのだろうか、あるいは単にヒトが自分と同じ生物…

ヴィーガンコスメ製品の購入におけるソーシャルメディアの影響

ヴィーガンの食生活の選択や実践に触れる機会は、倫理や環境の問題に関心を持つ人々の意見がソーシャルメディアで広く発信されることによって拡大されてきた。こうした中には、インフルエンサーとしてバーチャルで相当な数のフォロワーを…

セレブリティ・ヴィーガンとエシカル消費のライフスタイル

ヴィーガニズムは、非倫理的で持続不可能な食料生産の慣行に対する批判として重要であるが、歴史的にヴィーガンの人々は主流メディアにおいて否定的に扱われてきた。近年ではヴィーガンのセレブリティが注目されているが、こうした人々に…

培養肉の欧州市場 ドイツとフランスの比較

食肉の消費が動物や環境、人間の健康へ及ぼす悪影響は、かつてなく切迫したものとなっている。ヨーロッパにおいて食肉消費の削減が進んでいることを示したデータもあるが、概して消費者は食肉消費を大幅に減らすことに消極的である。本研…