食生活の変化と土地利用の変化 食肉消費による気候変動と生物多様性へのダメージ

土地利用の変化は、人間の活動に起因する温室効果ガス排出の原因のうち大きな割合を占めており、世界の生物多様性損失の主な要因となっている。土地利用変化に関連した世界のCO2排出と生物多様性の損失における大部分は熱帯諸国で発生…

食品が気候変動に与える外部コスト 畜産物の価格設定は適正ではない

農業部門は世界の温室効果ガスの主要な排出源となっているが、それが環境と社会に及ぼしている外部性*1 についての厳密な経済学的分析はいまだ行われていない。農業の外部費用(コスト)を調べたこれまでの研究では、農業システムと食…

低炭素の食生活は、地球環境と健康にかかるコストを削減できる

動物に由来する食品の消費を削減することで、関連する外部費用*1(コスト)を削減できる可能性がある。しかし、その削減の効果はいまだ十分に解明されていない。ここでは、ライフサイクル・アセスメント*2 の原理とマネタイゼーショ…

サステナビリティ科学におけるコミュニケーション ドイツにおける「真のコスト・キャンペーン」に関する事例研究

人新世*1 においては人為による気候変動が顕著であり、気候変動目標に取り組み、地球環境の限界*2を守るための行動が緊急に必要とされている。サステナビリティ(持続可能性)に関する研究はこの問題に関する知見を提供しているが、…

食品の「真の価格*」に向けて アグリフードシステムを変革する手段としての付加価値税

気候危機、COVID-19のパンデミック、ロシアによるウクライナ侵攻とこれに起因するエネルギーと食糧の不足など、現在のさまざまな危機を通じて明らかになったのは、地域の食糧生産と農地を活用した、強固で持続可能なサプライチェ…

肉の消費を削減するための政策 英国における受容可能性についてのサーベイ実験

食肉消費量を削減する政策は、気候変動目標を達成するために必要であるとともに、国民の健康状態も改善できる可能性がある。こうした政策を実現するうえでは、社会がそれを受容できるかどうかが重要となる。本研究では、赤肉と加工肉の消…

食品に対する付加価値税の改革は、欧州において健康・環境・経済面の便益をもたらす

世界的な政策目標の達成に必要となる食生活の変化を促すためには、財政政策によるインセンティブは重要である。欧州諸国では、健康と環境に関連する食品には付加価値税が課されることが多く、その税率は軽減されるもののゼロではなく、最…

食肉課税に対する社会的・政治的な受容の可能性 – 政策フレーミングと税収の使途に関する実験

本稿では、赤肉・加工肉に対して課税することに関してスウェーデンの国民と政治家の態度を調査し、その課税の枠組みについて、1.気候変動税、2.公衆衛生税、3.気候変動税と公衆衛生税の両方、のいずれかとした場合に課税を受けいれ…

プラントベース代替食品は、動物性食品より健康的であり、環境的に持続可能である

環境と動物のため、また個人の健康と公衆衛生のために、工場畜産から脱却する強い理由はますます増えつつある。動物性食品を代替するプラントベース食品は、嗜好性・価格・利便性という消費者の意思決定の中核をなす要素に対応しているた…

地域ごとに差別化した戦略がなければ、畜産だけで地球環境の限界を超える可能性がある

畜産は環境十全性 environmental integrity を保護するうえで大きな課題となっている。本研究では、1995年から2022年までの畜産業に関する環境フットプリントを10項目について包括的に分析し、203…

代替タンパク質のイノベーション 産業界と消費者における課題

現在の温室効果ガス排出量の4分の1以上は農業に起因するものであり、とくに食肉生産はそのカーボンフットプリント*の大部分を占めている。低・中所得国において富裕化が進むとともに、乳製品や肉製品など動物性タンパク質に対する需要…

今後の畜産政策の方向性に関するドイツ市民の意識

畜産業を持続可能な形で移行させることは、国際的および国内的な規制政策における課題となっている。これまで政治的な議論においては、アニマルウェルフェアを強化したり温室効果ガス排出を削減したりするために、生産や管理の方法をどの…

畜産による温室効果ガス排出量 新たな最小推定値は16.5%である

気候科学から生まれた知識は、ただちに多くの利害関係者によって取り上げられ、科学研究における引用や、さらに広く文化の中で再生産される。これは、その知識がもはや正確なものではなくなったとしてもそのままで変わることはない。本稿…

畜産業と地球環境の限界 「成長の限界」の視点と食生活への影響

人類はこれまでに地球環境の限界(プラネタリーバウンダリー planetary boundary)* を幾度となく逸脱してきたが、畜産業はその主要な動因であり、(牛・羊など)反芻動物からの食肉生産は特に大きな影響を及ぼして…

肥満対策におけるプラントベース食 文献レビュー

目的: 肥満は米国において最も広く蔓延している慢性疾患であり、米国人の70%以上が過体重や肥満の状態にある。近年では、倫理・健康・環境に関する懸念のためにプラントベースの食事を取り入れる動きが広がっている。本研究の目的は…

高所得国におけるプラントベース食への障壁 システマティックレビュー

プラントベースの食事を取り入れることによって一部の疾病を発症するリスクが低下し、環境の面でも有益であることがわかっている。このレビューでは、高所得国に居住する18歳から65歳の成人がプラントベースの食生活を始める際に経験…

体重コントロールの戦略としてのプラントベース食

世界保健機関(WHO)によれば、肥満は1970年代から3倍近くにまで増加している。肥満と過体重は、主要な危険因子として心血管疾患・糖尿病・炎症性疾患・その他の重篤な疾病と関連している。さらに最近のデータでは、肥満・過体重…

プラントベースの食事と心血管系の健康

動物性食品の摂取頻度を低く抑えるという意味でのプラントベースの食事は、健康面でさまざまな利点があるために推奨されることが多くなってきた。プラントベース食は、特に全粒穀物・果物・野菜・ナッツなど、良質の植物性食品を豊富に含…

ベジタリアン食に関する米国・栄養食事療法学会の見解

米国・栄養食事療法学会では、適切に計画されたベジタリアン(ヴィーガンを含む)の食生活は健康的で栄養として十分であり、また特定の疾病の予防と治療に役立つ可能性があるとの見解に立っている。これらの食事は、妊娠期・授乳期・乳児…

米国国土での食料供給における広汎な強制労働のリスク

食品生産の労働環境に関する社会的リスクの検証やケース・スタディは、主として特定の集団や地域、商品を対象として行われてきた。多くの食品は複雑なステップを経て供給されているが、その労働環境に関して国際基準に照らした体系的な検…