動物の権利論では、苦痛を感じる能力があることが重視されます。そして、苦痛を感じるための感覚器官や神経組織、脳を備えていることが一応の判断基準となります。さらに、種々の感情や欲求を持つこと、知覚、記憶、未来の感覚があることなども考慮されます。そうした能力や感覚は、細菌には明らかに存在しませんが、哺乳類や鳥類には確実に存在します。魚類についても、やはり苦痛を感じているという研究が最近出てきています(参考:ヴィクトリア・ブレイスウェイト『魚は痛みを感じるか?』, 高橋洋訳, 2012年, 紀伊國屋書店)。軟体動物や昆虫などの節足動物については、議論が分かれています。したがって動物の権利論は、哺乳類や鳥類、魚類について、人間に利用されたり殺されたりせず、なるべく自然のままに生きていく権利を求めることが基本となります。では、軟体動物や昆虫はいくらでも利用したり殺害したりしてよいのでしょうか。そんなわけはありません。どんな生物に対してであれむやみに生命を奪ってはいけないという人間の持つ自然な感情を、動物の権利論は尊重します。それではさらに、植物はどうなのでしょう。植物は苦痛を感じないのでしょうか。植物はいくらでも犠牲にしてよいのでしょうか。これについては、「植物は食べてもかまわないのですか?」の項目でみます。Share This Previous Article種差別(スピーシーシズム)とは? Next Article植物は食べてもかまわないのですか? 2019/04/02