日本には、ケージフリーで飼育される鶏の割合の公式なデータがない。つまり全体の数字はわかるがどんな飼育方法なのかを国は正確に把握していない。一方で、ヨーロッパ諸国や米国、韓国、オーストラリアやニュージーランドなどには公式なデータがちゃんとある。つい先週の2023年10月11日には米国USDAが発表したデータによると2023年6月時点で38%の鶏がすでにケージに閉じ込められていない。果たして日本はどうなのか。政府は平飼いの鶏の割合ではなく、国際鶏卵委員会が発表する平飼いの農場の割合を使ってくる。これは全く正確ではなく、比較のしようがないし現状の分析にも使用しにくいデータである。なぜならケージ飼育の場合、20万羽、100万羽などの鶏が1つの農場に詰め込まれているが、ケージフリーの場合は1つの農場に多くても10万羽を超える程度、一般的には数千羽といったところだからだ。現状を把握できないところからは、改善策を導き出すことは難しい。国はそもそもアニマルウェルフェア改善をしようと思っていないということの現れかもしれないが、わたしたち市民、消費者、企業は違うはずだ。アニマルウェルフェアを高めていくことは重要な社会課題である。そこで、アニマルライツセンターでは2023年夏に、ケージフリーで飼育をしていると確認される養鶏場に対し、電話での聞き取り調査を行った。また一部WEBサイト上で公表されているデータを加え、日本でケージに閉じ込められていない採卵鶏(正確には産卵中の成鶏)の数を割り出した。結果、国内のケージフリー飼育の鶏の割合は、【1.11%】※であることがわかった。これまで、1%にも満たないと試算していたため、その認識からするとケージフリー飼育の割合は増加している。実際に1000羽以上飼育する養鶏場の場合は、羽数を増やす傾向にあり、万単位での増加をしている養鶏場もあった。また、こちらの養鶏場のようにケージ飼育から平飼い飼育に切り替えた養鶏場もあった。この数字をどう捉えるべきか1.11%という割合は、明らかに日本のアニマルウェルフェアの遅れを表している。世界では欧米、オーストラリアなどは飼育される半分以上の鶏がケージフリーに切り替わっている時代であり、アジアでも韓国は4.6%(公式データより)、インド22%、インドネシア12%だとされている。日本国内のみに絞って評価をすれば、「1%もあるの?」と思っていたよりも多いと感じて驚く企業もある。平飼い卵の調達に苦労している企業としてはこの数字でも多いと感じるのかもしれない。しかしこの1.11%はどう考えても世界最低レベルであり、日本はまさにアニマルウェルフェアのスタート地点にようやく立ったといったところだろう。98.89%の鶏たちが極限状態で苦しんでいる。98.89%の鶏たちをすべて、ケージから解放しなくてはならない。世界と同様に。※電話による聞き取りアンケート、及びサイト等での公表データの累計 アンケートに協力いただけなかった平飼い養鶏場もあるためケージフリーの鶏の割合が多少増える可能性ありクリックして Twitter で共有 (新しいウィンドウで開きます)Facebook で共有するにはクリックしてください (新しいウィンドウで開きます)クリックして X で共有 (新しいウィンドウで開きます)Share This Previous Article糸満市の文化財としての再考を求める Next Article東アジアのケージフリーの動きの中で日本が遅れている証拠 2023/10/25