2018年5月3日、東京都練馬区にあるアニューズメント施設「としまえん」で『お魚 つかみどり』用に用意された魚が死亡し、同イベントが中止になりました。 施設内には、次のようにお知らせが掲示されました。本日開催を予定しておりました「お魚 つかみどり」は、 水温上昇により準備しておりました魚が死亡したため、 中止させていただきます 故意ではなかったとはいえ、水温上昇により死亡させるというのは、人間に置き換えてみれば釜茹でで殺されるようなもので、苦痛度が高く残酷な行為と言えます。死に至るほど水温を上昇させたことに気が付かなかったということから、管理方法に根本的な問題があったことがうかがわれます。「お魚 つかみどり」はとしまえんのプール内に放たれたニジマスを、60名の子供たちが、制限時間30分で追いかけて手でつかみ取りし、捕まえることができたニジマスを塩焼きにして食べるというイベントです。入場料は一人500円。 イベントは2018年4月29日、5月3日、5月5日に開催され、魚が水温上昇で死亡したのが5月3日、しかし5月5日には新たに魚を仕入れてイベントが継続されています。魚は使い捨ての「モノ」ではありませんが、実際にはモノのような扱いが行われているということが、としまえんでの魚の扱いにみてとれます。 魚は苦痛を避けることができるよう配慮されるべき存在日本では「魚の人道的な扱い」という考えが普及していませんし、魚が苦痛を感じることができるということさえも知られていないかもしれません。 しかし国際社会では、魚が苦痛を避けることができるよう配慮されるべき対象であるという考えが拡がりつつあります。日本も加盟するOIE(世界動物保健機関)にも魚の福祉規約あり、人道的な輸送方法や屠殺方法について規定されています*。科学者の間では魚が苦痛を感じることができるという視方が拡がりつつあります。たとえば「としまえん」で使われたニジマスについては次のような研究が行われています。ある研究では、研究者らは明るい色のレゴブロック群をニジマスを入れたタンクに落としました。ニジマスは突然落とされた見たこともないこのレゴブロックを避けるのが一般的です。しかし、研究者たちがニジマスに痛みのある酢酸の注射をしたとき、ニジマスはその痛みに注意を奪われていたためか、レゴブロックを避けようとする防御行動を見せなくなった。対照的に、酢酸に加えて鎮痛剤であるモルヒネを注射された魚は、レゴブロックに対して通常の注意を払った。 すべての鎮痛剤と同様に、モルヒネは痛みの感覚を鈍らせるが、痛みの原因そのものを取り除くものではありません。これはつまり、このニジマスの行動が単なる生理ではなく精神的なものに由来することを示唆しています。別の研究では、唇に酢酸を注入されたニジマスは、呼吸が激しくなり、水槽の底面を前後に行ったり来たりし、唇を砂利やタンクの側面にこすりつける動きをみせました。また酢酸を注射されたニジマスは、生理食塩水を注射されたニジマスに比べ、通常の摂食行動に戻るのに二倍の時間がかかりました。酢酸とモルヒネの両方で注射された魚も、これらの異常な行動のいくつかを示しましたが、酢酸だけのニジマスに比べてはるかに異常行動は少なく、生理食塩水を注射された魚は異常行動を行いませんでした。 引用元 Hakai Magazine Coastal science and societies "Fish Feel Pain. Now What? Terrestrial animals get humane treatment and legal protections, but until now, fish pain has largely been ignored."Authored by by Ferris Jabr 2018年1月2日 https://www.hakaimagazine.com/features/fish-feel-pain-now-what/?xid=PS_smithsonian 動物愛護管理法の基本原則に反する扱い日本国内においても動物の愛護及び管理に関する法律があります。同法において、魚は動物取扱業の対象動物ではなく、罰則規定はありえませんが、基本的な原則は魚にも適用されます。例えば次の部分は魚にも適用されます。動物愛護管理法第一章(基本原則)第二条 動物が命あるものであることにかんがみ、何人も、動物をみだりに殺し、傷つけ、又は苦しめることのないようにするのみでなく、人と動物の共生に配慮しつつ、その習性を考慮して適正に取り扱うようにしなければならない。2 何人も、動物を取り扱う場合には、その飼養又は保管の目的の達成に支障を及ぼさない範囲で、適切な給餌及び給水、必要な健康の管理並びにその動物の種類、習性等を考慮した飼養又は保管を行うための環境の確保を行わなければならない しかし、としまえんにおける魚の扱いは、この基本原則第二条二項に反するものとなっています。「魚のつかみどり」というイベントそのものが、魚への負担が大きいものとなっています。 このイベントを取材した練馬経済新聞は次のように記事を書いています。子どもたちが「きゃーきゃー」叫びながら魚を追い掛けるが、元気な魚は縦横無尽に泳ぎなかなか捕まえられない様子も。その様子を見て大人たちは、「いけー」「そこだ、捕まえろ」と子どもたちよりも興奮した様子を見せていた。 捕食者にとっては楽しいイベントかもしれませんが、捕食者から逃避し続けなければならないことは肉体的にも精神的にも魚にとっては負担が大きいものとなっています。このような動物をみだりに苦しめるイベントは動物愛護管理法第二条第一項「動物が命あるものであることにかんがみ、何人も、動物をみだりに殺し、傷つけ、又は苦しめることのないようにする」からかけ離れたものになっています。としまえん「お魚 つかみどり」の廃止を練馬経済新聞によると、としまえんはこのイベントを「また企画したい」と言っているそうですが、アニマルライツセンターの元へは、5/3にとしまえんを訪れた東京都民や、今回魚が死亡したことを知った市民から、としまえんでのこのような魚の扱いを憂慮する声が届いています。 これらの声を代表し、このような魚を利用したイベントを今後廃止するよう、としまえんへ文書を発送しました。 (→としまえんからの回答はこちら)魚への不当な扱いがなくなるよう、皆さまからも意見を届けてください。としまえん 電話問い合わせ先 http://www.toshimaen.co.jp/contact/index.html としまえん 意見箱(メール) http://www.toshimaen.co.jp/idea/index.html* OIE規約「養殖魚の福祉」 SECTION 7.WELFARE OF FARMED FISH http://www.oie.int/en/standard-setting/aquatic-code/access-online/ クリックして Twitter で共有 (新しいウィンドウで開きます)Facebook で共有するにはクリックしてください (新しいウィンドウで開きます)クリックして X で共有 (新しいウィンドウで開きます)Share This Previous Articleドキュメンタリー映画『THE LAST PIG』2018/6/9 ※受付締め切りました Next ArticleEmpty The Tanks 水槽を空に!水族館前で訴えました 2018/05/10