諏訪大社は、多くの補助金が出されている(2020年は諏訪大社保存修理費として71,500,000円の補助金*)宗教法人であり、極めて公共性の高い施設です。その場所で、「蛙狩り神事」と称して、カエルを串刺しするという動物に激しい苦痛をもたらす行為が、毎年元旦に行われています。 *令和2年度 (項) 文化財保存事業費 (目) 国宝重要文化財等保存・活用事業費補助金 補 助 金 交 付 一 覧諏訪大社は、蛙狩り神事について次のように述べています。◆蛙狩神事並御占神事(上社)1月1日 本宮前の御手洗川の氷を砕いて蛙を捕え、神前で小弓を以て射通し矢串のままお供えしますが、どんなに寒い年でも蛙が捕れ、七不思議の一つです。続いて宮司が神占を行い、当年の諸祭儀に奉仕する地区、御頭郷を選定する御占神事が行われます。 http://www.suwataisha.or.jp/i/gyouji.htmlこれまで数々の動物保護団体が、動物と犠牲にした神事の廃止を求めて意見を提出しています。多くの国民が、残酷な方法で動物を殺すこの行事に胸を痛めており、現地での抗議活動も行われています。にもかかわらず、カエルの串刺しは続いています。 2020年11月18日、アニマルライツセンターは、諏訪大社に「動物を苦しめたり殺したりする神事を廃止してください」との要望書を提出しました。しかし回答は例年とかわらぬもので、「蛙狩り神事は古来より氏子崇敬者とともに守り伝えられた大切な神事ですので、今後も従来通り慣行する予定です」というものでした。現在、アニマルライツセンターは長野県(諏訪保健福祉事務所)に動物愛護管理法遵守の観点から諏訪大社への指導をお願いしています。また長野県神社庁へも動物を串刺しにするという神事の継続が、法令遵守という観点から問題がないのかどうか関係者間で検討してほしいとお願いしています(追記:県にはアニマルライツセンターからだけではなく、数々の意見が届いているそうです。2020年末に保健福祉事務所は諏訪大社を訪問してくれました。保健福祉事務所としては社会情勢を踏まえて問題意識がないわけではないものの、現行の法律上、諏訪大社に「指導」ということは難しいとのことでした。残念ながら長野県神社庁のほうは、「神事だから問題ない」「個別の神社に意見することはできない」とのことでした。)。ぜひ皆さんからも意見を届けていただけますよう、どうぞよろしくお願いします。【意見先】長野県 県庁へのお問い合わせ諏訪大社(上社本宮) 〒392-0015 長野県諏訪市中洲宮山 1 TEL 0266-52-1919 FAX 0266-52-3383カエルは動物愛護管理法及び関係法令等の対象外なのか?神事であれば何をやっても許されるのか?アニマルライツセンターが初めて諏訪大社に要望をしたのは2016年。そのころから諏訪大社の「神事であるため今後も継続する」姿勢は変わっていません。 2017年1月11日 に諏訪市に要望した時の諏訪市からの回答も「蛙狩神事は、諏訪大社が行っている伝統的な宗教行為であり、このことについて諏訪市がお答えできる立場にはございません。」との回答(当時のやり取りはページ下段)でした。諏訪市の姿勢も、今も変わっていません。 2017年1月24日に、 動物愛護行政を担当する長野県諏訪保健福祉事務所には、動物の愛護及び管理に関する法律及び、同法第四十条2項に基づく殺処分方法に関する指針に反するという理由で指導を要請しましたが、「・カエルはこの法律や指針の対象動物ではない。・伝統的な神事に対して、保健所としては、コメントする立場にない」という理由から指導を断られました(現在長野県のスタンスは変わっており、指導願いに対して対応をしてくれています)。カエルは法令の対象にはならない。神事なら何をやっても許される。いずれも間違いです。それぞれ根拠をしめしますので、皆さんが意見を届けるときの参考にしてみてください。■カエルは法令等の対象外なのか?■動物の愛護及び管理に関する法律において、罰則対象になる動物は「愛護動物*」だけですが、それ以外の部分はすべての動物が対象となっています。 例えば基本原則の部分もそうです。動物の愛護及び管理に関する法律 (基本原則) 第二条 動物が命あるものであることにかんがみ、何人も、動物をみだりに殺し、傷つけ、又は苦しめることのないようにするのみでなく、人と動物の共生に配慮しつつ、その習性を考慮して適正に取り扱うようにしなければならない。*愛護動物とは 動物の愛護及び管理に関する法律 第六章 罰則 第四十四条 4 前三項において「愛護動物」とは、次の各号に掲げる動物をいう。 一 牛、馬、豚、めん羊、山羊、犬、猫、いえうさぎ、鶏、いえばと及びあひる 二 前号に掲げるものを除くほか、人が占有している動物で哺乳類、鳥類又は爬虫類に属するもの動物の愛護及び管理に関する法律の「動物」の定義 動物愛護管理業務必携(2016年版)**では、動物の愛護及び管理に関する法律の「動物」を次のように解説しています。ここでいう「動物」とは、条文上明らかにされているものではないが、人とのかかわりがあるものであることが想定されていることから、純粋な野生状態の下にある動物は含まれないものと考えられる。**動物愛護管理業務必携は、関係法令、法律の逐条解説、通達、判例、資料を取りまとめたもので、この中で動物愛護管理法が条文ごとに解説されています。2017年のやり取りの際、長野県諏訪保健福祉事務所は、諏訪大社で使用されるカエルを『野生動物』だと捉え、法令等の「対象動物ではない」と回答しました。 しかし諏訪大社の蛙狩神事で使用されているカエルは、養殖蛙だと言われています。それなら野生動物とは言えません。もし野生のカエルだったとしても(都合よく儀式の時にカエルを見つけることは不可能だと思いますが)、「純粋な野生状態の下にある動物」とは言えません。いったん捕まえて保定し、人の占有下においているからです。この部分は行政がいかに動物に配慮した解釈をできるかにかかっているといえるでしょう。次に、動物愛護管理法第四十条二項に基づく動物の殺処分方法に関する指針には次のように書かれています。動物の殺処分方法に関する指針 第3 殺処分動物の殺処分方法 殺処分動物の殺処分方法は、化学的又は物理的方法により、できる限り殺処分動物に苦痛を与えない方法を用いて当該動物を意識の喪失状態にし、心機能又は肺機能を非可逆的に停止させる方法によるほか、社会的に容認されている通常の方法によること。同指針における「動物」の定義は愛護動物*だとされていますが、同指針の第4 補足2には次のように書かれています。2 対象動物以外の動物を殺処分する場合においても、殺処分に当たる者は、この指針の趣旨に沿って配慮するよう努めること。つまりカエルであっても「できる限り苦痛を与えない方法を用いること」「社会的に容認されている通常の方法によること」に配慮するよう努めなければならないということです。生きたカエルを串刺しにするという行為は動物愛護管理法 第二条 第1項の「動物が命あるものであることにかんがみ、何人も、動物をみだりに殺し、傷つけ、又は苦しめることのないようにするのみでなく、人と動物の共生に配慮しつつ、その習性を考慮して適正に取り扱うようにしなければならない。」に則した扱いとは言えません。 またどうしても「神事」のために使わなければならないのであっても、「動物の殺処分方法に関する指針」にのっとった扱いをするよう努めなければなりませんが、その努力もなされていません。 『生きたまま串刺し』が「できる限り苦痛を与えない方法」や「社会的に容認されている通常の方法」だとは、とても考えられません。■神事であれば何をやっても許されるのか?■諏訪大社、諏訪市、長野県諏訪保健福祉事務所も、「神事」であることを理由にカエルの串刺しを容認していますが、この態度は責任を放棄してしまっているとも言えます。なぜなら「伝統行事」であっても法律や基準等の対象外とはなっていないからです。動物愛護に関する法律・基準等のどこにも「伝統行事」は除く、などとは書かれていません。また、古いものではありますが、1974年(昭和49年)の疑義照会*1で、警察庁は「伝統行事として行われるものであっても、残虐であれば同法第13条*2に該当すると解している。」と回答しています。 *1 動物愛護管理業務必携(2016年度版)より引用 *2 当時の「動物の保護及び管理に関する法律」において罰則規定が書かれている条文疑義照会 (1) 動物の保護及び管理に関する法律第13条の疑義取り扱いについて(照会) [昭和49年10月1日青環第798号]青森県環境保健部長から内閣総理大臣官房管理室長あてこのことについて、次のとおり疑義を生じたので至急御教示くださるようお願いいたします。 記 本県で、古くからの慣習として闘犬会(主として土佐犬)及び馬力大会等が行われていますが、この行為は動物の保護及び管理に関する法第13条の規定に該当するかどうか。これに対する内閣総理大臣官房管理室長から青森県環境保健部長への回答伝統行事として社会的に認容されている闘犬、馬力大会等を実施する行為は、当該行事を行うために必要な限度を超えて動物に苦痛を与えるような手段、方法を用いた場合を除き、動物の保護及び管理に関する法律第13条の規定に該当しないものと解する。法務省刑事局刑事課長から 内閣総理大臣官房管理室長あてへの回答伝統的な行事として社会的に認容されている闘牛・闘犬等を実施する行為は当該行事を行うために必要な限度を超えて動物に苦痛を与えるような手段、方法を用いた場合を除き、動物の保護及び管理に関する法律第13条第1項に該当しないと解する。警察庁保安部防犯少年課長から 内閣総理大臣官房管理室長あてへの回答本件照会の闘犬・闘牛等は、他に特別の事情のない限り、動物の保護及び管理に関する法律第13条の規定に該当しないと解する。 (理由) 警察庁では、伝統行事として行われるものであっても、残虐であれば同法第13条に該当すると解している。 闘犬、闘牛について残虐かどうかは、当該闘犬・闘牛が動物を死に至らせ又は以後の生存に重大な影響を及ぼすような傷を負わせる性質を有するかどうかを基準として判断している。 本件については、当庁が青森県警察を通じて調査したところ、上記の性質を有するものではないと思料するので、同法第13条には該当しないと解する。 また、馬力大会については、馬に荷を引かせて競争させる行為自体は、 一般的には虐待にあたらないが、殴打するなどによって馬を死に至らせ、又は著しい傷を負わせた場合には、虐待にあたるものと解する。 本件については、当庁が調査したところでは、上述の性質を有するものではないと思料するので、一般的には、同法第13条には該当しないと解する。いかに長年続いた伝統のある神事でも、残虐な行為は残虐な行為であり、法令の適用範囲内にあります。参考2017年1月11日アニマルライツセンターが 諏訪市に出した要望当法人アニマルライツセンターは、動物の権利向上を願い、様々な啓発活動を行っています。 諏訪大社上社で毎年元旦に行われている蛙狩神事を廃止していただきたく、このたびメールを差し上げました。 カエルを生きたまま串刺しにして「いけにえ」とするこの行事は、動物の権利を甚だしく侵害する虐待行為です。 諏訪大社は、諏訪市、国から多くの補助金が出されている宗教法人であり、極めて公共性の高い施設です。その場所で、生きたまま串刺しという動物に激しい苦痛をもたらすという行為が行われていることは大きな問題ではないでしょうか。 伝統や文化は時代とともに変化します。中国の伝統行事「犬肉祭り」も近年国際的に非難の声が高まり、禁止する省も出てきています。 昨年の6月、イギリスBBCニュースは、動物愛護のためにタイの雨乞いの儀式で猫ではなく「ドラえもん」が身代わりに使われたと放送しています。西洋で何百年も続けられてきた闘牛は動物愛護の観点から禁止する州もあり、近年縮小傾向にあります。日本においても、「動物愛護を図る」「善良な風俗を保持する」という目的から、東京都 神奈川県 富山県 石川県は闘犬・闘鶏・闘牛を禁止しています。 痛みを感じて苦しむのは、カエルも私たちも同じです。串刺しは強烈な苦痛を伴う残酷な行為です。 脊椎動物であるカエルはもちろん痛みを感じます。 CIOMS(国際医科学団体協議会)は動物実験の国際原則のなかで「人間にたいして苦痛を引き起こす行為は、すべての脊椎動物にも苦痛を引き起こすと想定する必要がある」としています。 ヨーロッパでは「実験やその他の科学で利用される動物の保護に関する欧州条約」の対象動物でもあります。苦痛を感じると考えられているからです。 動物に関心を持つ日本人は年々増えています。2013年の動物愛護管理法の改正時には、動物愛護を気にかける国民の意見が、のべ248,417人寄せられています。 国内で行われている残酷な行事を廃止してほしいというのは日本人として当然の思いです。 多くの市民が生き物を殺す行事に胸を痛めています。毎年現地における抗議活動も行われています。 私たちは国民を代表して、諏訪大社における命の犠牲と苦痛を伴う行事を廃止していただけるよう、貴市にお願い申し上げます。 ご多用中恐縮ですが、貴市のお考えを郵送もしくはメールでご回答いただけますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。2017年1月23日 長野県諏訪市秘書広報課より回答お問い合わせいただきました蛙狩神事は、諏訪大社が行っている伝統的な宗教行為であり、このことについて諏訪市がお答えできる立場にはございません。ご理解くださいますようお願い申し上げます。クリックして Twitter で共有 (新しいウィンドウで開きます)Facebook で共有するにはクリックしてください (新しいウィンドウで開きます)クリックして X で共有 (新しいウィンドウで開きます)Share This Previous Articleさくらねうねう・アニマルライツセンター合同チャリティパーティー ~全国生中継~ Next Articleスーパーにお願い!置いて欲しい商品リスト 2020/12/16