アニマルライツセンターは茨城県霞ケ浦周辺のレンコン栽培における野鳥被害に、要望書を出すなど14年間にわたり取り組んできました。この問題はなぜ解決しないのか。農業と食害という問題は、駆除した動物を無駄にしないで利用する方向(食用、皮革)に議論が向きがちです。そのためビジネスに利用できない動物の問題は放置されがちですが、どうしたらよいのか。2023年3月23日、アニマルライツセンターは茨城県庁とレンコン栽培野鳥被害について話し合いをしました。県庁側参加者は担当者3名、他3名の計6名、アニマルライツセンターは2名です。県庁の野鳥被害防止策はチラシ配布茨城県庁は現在、野鳥被害に配慮をしたレンコン食害対策について具体的な方法を知らせるチラシを配布しています。内容は直置き網などを推奨する妥当なものですが、その効果が目に見えて出てこないというのが、現在の状況です。チラシはもともと交流のある農家さんに対面で配られることが多く、レンコン農家全体にもれなく配布されていないことが、効果がでない元凶ではないかと、アニマルライツセンターは考えます。しかし役所という性格上、それ以上のことはできないというのが県庁の説明でした。効果が期待できるか不明の「光」防止策県庁との話し合いのなかに、将来的には網にかわる、光で野鳥を寄せ付けないバーチャルネットシステムの導入を検討しているとの説明がありました。それについては野鳥の順応性を考えると、一般論的に効果に信ぴょう性の問題があること、その検討にお金と時間をかけることが問題解決を遅くするのではないかというところに、アニマルライツセンターは懸念を抱きます。チラシ以外の防止策はない?県庁担当者によると、現状ではチラシ配布という地道な啓発以外の対策は「ない」ということです。この件に対する消費者の苦情が県に押し寄せており、それがときには公務をひっぱくすることに頭を悩ませている様子でしたが、県としてできることには限界があり、対策に進展は見られませんでした。そもそも野鳥飛来を防止できていない防鳥ネットこの件についての茨城県の担当は、農業と環境部署ですが、圧倒的に農業経営の問題としての検討がされています。そのため県としてはレンコン農家の収入を確保することが第一義であることは理解します。しかし野鳥はレンコン畑に飛来して、ネットの隙間、とくに開いているサイドからネット内に侵入し、水面に出ている植物を食べ、飛び立つときに天井部のネットの内側に捕らわれています。つまり、防鳥ネットに野鳥が引っ掛かり続けることは、そもそも食害が防げていないということです。この中途半端な現状を、健全な農事運営を促進する義務を負う県は、どのように理解しているのでしょうか。現状の防鳥ネットを使用しても、天井だけでなくサイドにもネットを張ってレンコン畑を完全に覆えば、野鳥の食害も、野鳥が侵入して天井にひっかかることもないのです。それにはコストがかかるという反論が農家からあるようですが、この件がさらに広がり消費者に茨城県のレンコンが嫌われるリスクを考えれば、コストを負担することが、茨城県のレンコン栽培の持続性のために大切なのだと説得することこそが、管轄内農業の健全経営を保持する県の役割ではないかとおもいます。他県では防鳥ネットを使用することなくレンコン栽培をしています。この点について県は、霞ケ浦という野鳥の生息地に沿って広がっている茨城県のレンコン畑には、飛来する野鳥の数が違うと反論します。それはそうなのです。現地を見るとわかるのですが、霞ケ浦という巨大な野鳥の生息地の中に、レンコン畑が広がっているのですから。レンコン畑が野鳥の生息地のなかに存在している茨城県には、本来的に自然との共生の課題があり、野鳥を保護する問題意識があって当然なのです。しかし今回の話し合いにおいて、環境部署から合理的な対応策は聞けませんでした。この問題を中途半端にすることは、断じて、農家の生活を守ることにはなりません。サイドまで防鳥ネットを張ることや、野鳥被害の少ない直置き網に変えることは、それほどに困難なのか。いまできることはこれ以上ないと繰り返し回答する県には、せめていつまでにどの程度改善することを目標とするのか示してほしいとおもいます。茨城県霞ケ浦は東京都心からも近く、物流に恵まれた生産地です。レンコン栽培は湿地を利用した「自然環境に大きく依拠する農業」で、自然や動物をねじ伏せる経営を続けるのは、産業の存在意義にかかわる問題と捉えてほしいと思います。間違えた対応が続けば当地農業の持続性が大きく損ねられます。アニマルライツセンターはすでに、レンコン畑野鳥被害を防ぐ方法を提案しています。その周知がいきわたり、実行率があがれば、問題は解決の方向へ向かい始めます。そのための方策は本当にチラシ配布しかないのか。もう一歩踏み込んだ対策ができないものか。意識調査によると消費者の認知度が低いことも、この問題を長引かせる一つの原因になっていることがわかります。しかし生物多様性や動物の命を尊重し、野鳥被害を減らしたいと考える人が多いことも分かっています。わたしたちは引き続きこの問題をみなさんとともに取り組んでいきます。クリックして Twitter で共有 (新しいウィンドウで開きます)Facebook で共有するにはクリックしてください (新しいウィンドウで開きます)クリックして X で共有 (新しいウィンドウで開きます)Share This Previous Articleアニマルライツセンターで働きませんか?採用開始! Next Article水も足らないビニールで売られる観賞魚たち 2023/04/09