2016年の夏から秋にかけて、LCAはITRカナダ社への調査を行いました。 ITRカナダ社はケベック州モントリオールの郊外にある受託研究機関で、ビーグル犬、ミニブタ、マカクザルを用いた実験を行っています。LCAの調査から、動物への虐待、ネグレクトが日常的に見られ、行政の定める動物保護関連法や動物実験ガイドラインに明らかに違反していることが判明しました。 ※LCA: Last Chance for Animals署名はこちらから。 https://www.change.org/p/demand-justice-for-grace-victim-of-cruel-research-labLCAの調査によって判明した事実・動物たちは乱暴に放り投げられ、壁や床に打ちつけられ、耳や四肢をつかまれてぶら下げられ、調査用の録音にも捉えられているほど強く殴られる。・裂けた開いた傷口や化膿して腫れた感染症は、治療されずにおかれるか、いい加減な処置しかなされていない。・手荒で悲惨な扱いを受ける仲間たちを、他の動物たちは目の当たりにせねばならない。・ビーグル犬もマカクザルも人や他の仲間と接することもなく、体を動かすこともできない。9カ月の研究期間中(研究終了と同時に殺処分される)、運動する機会を一切否定した。・マカクザルは十分な飲水へのアクセスができなかった。・監禁のストレスからくる反復的な行動からくる脱毛であるにもかかわらず、実験技師はマカクザルの脱毛を無視するように指示した。ガイドラインは動物福祉の程度を示す指標となるこのような行動を数値化して測定すべきであると定めているにもかかわらず、無視していた。・動物が閉じ込められるのは、適切な寝床や休むための乾燥した平らな場所のない不十分な飼育環境。絶え間ない騒音と、檻の後ろに堆積した糞尿により発生した有毒なガスに晒され、ケージのワイヤーに挟まれる危険もあります。・ビーグル犬は肩甲骨の間にカテーテルが差し込まれる状態で常に繋がれているので、振り返る自由すらない。・マカクザルの事例では、吸入装置に固定されている間、観察されることもなく放置され、その後窒息死した。これらの虐待事例にみられるような無慈悲で傲慢な行為は日常化しています。 実験はしばしば監督官の立会いのもとになされています。ビーグル犬による呼吸器実験では実験室に監視カメラが設置されています。つまり、実験技師は自分たちの実験行為が厳しく批判されることなどないと高をくくっているのです。ITR社の管理責任者は、動物への虐待、組織運営の不備によるネグレクトを防止しようとする対策を一切講じようとしていません。注目すべきは実験動物の生存期間中の飼育形態の虐待です。 LCAの報告によると、研究に使われる動物たちは、無機質な金網ケージの中に一頭で閉じ込められ、体を自由に動かしたり仲間と関わることもできません。それどころか、目の前で仲間が耐え難い扱いをされるのを見せられ、さらに恐怖にさらされるのです。犬もマカクザルも群れで生きる動物であり、人や他の仲間と関わることができない状態を私達は容認できません。特に、長期間にわたって動物を孤立させることは許しがたい行為であるとLCAが厳しく追及しているにも関わらず改善しようとしません。マカクザルは群れで生活し、野生では幅広いファミリーを作る動物です。孤立による絶望感や実験に使われることによる恐怖と苦痛から、10~14%の猿が自傷行為をすると報告書は伝えています。今回のLCAの調査記録では、マカクザルを除く全ての動物は実験終了と同時に殺処分されています。マカクザルは死ぬまで何回も実験に供されます。それが30年にも及ぶことがあります。研究者は動物たちの苦しみを最小限にすることを目的として、医学研究に動物を使うことを正当化する必要があります。しかし、今回の調査中、LCAはこの原則が破られる衝撃的事例を知ることとなりました。 人間の皮膚に塗るジェルや軟膏の研究で、ミニブタに軟膏を刷り込んで皮膚を観察するものがあります。その薬剤がひどいただれや炎症を引き起こすと実験技師は実験の中止を求め、獣医師も管理責任者も実験中止に同意したにもかかわらず、その研究のスポンサーは実験の中止に同意せず、代わりに、研究のパラメーターを変え、豚に薬剤を強制的に摂食させるよう管理責任者に指示しました。多数の動物たちが、のどにチューブを差し込まれ、得体のしれない物質を胃に流し込まれ、妥当で有意な結果をもたらすとは到底考えられない研究のために苦痛を味わうこととなりました。このような実験を行うITR社の冷酷な業務実態は、研究者が曲げてはならない最も基本的な倫理基準に抵触しています。LCAは、ケベック州水産食品農業省(Le ministere de l ‘Agriculture,des Pecheries et de l‘Alimentation(MAPAQ))、ケベック州野生生物・公園・林業省(Le ministere des Forets,de la Faune et des Parcs(MFFP))、野生生物・天然資源省(Ministere de L’Energie et des Ressources natureless(MERN))に対して公式に異議を唱えました。 これらの省庁は動物福祉安全法(Animal Welfare and Safety Act ( CQLR c.B-3.1))、 犬猫安全福祉条例(the Regulation Respecting the Safety and Welfare of Cats and Dogs(CQLRP-42.r.10.1))、野生生物保全に関する法律(the Act Respecting the Conservation and Development of Wildlife (CQLR c. C-61.1) )、および飼育野生生物保全条例(the Regulations Respecting Wildlife in Captivity (CQLR C-61.1, r. 5))の違反を是正する責任があります。 地域の動物福祉条例も実験動物を保護対象から外しておらず、また今回の報告内容に見られる実験動物への虐待は免除されるものではありません。報告されたITR社における動物の扱いは、施設のケアにおける動物福祉を無視して居ることを示しており、LCAはITR社を告発する準備をしています。専門家の見解「このビデオを観て、専門家の立場から赤い首輪の猿について非常に懸念される。すぐに対処してこの猿を苦しみから救わなくてはならない。他の動物もこの施設では同様のリスクにさらされているに違いない。」「動物たちの心身の福祉を実現するためにこの施設は根本から改革せねばならない。」Margaret Whittaker 動物行動学顧問 AZA(Association of Zoos Aquariums)オナガザル類顧問団行動学顧問 「高度に社会的動物は自然界で雄雌入り混じった多様な群れの中で過ごす。報告にあったような研究所に閉じ込められた動物たちは根本的に残酷な扱いを受けている。このような状況におかれた動物たちは常動行動や自傷行為のような不自然な行動をとる。本来群れで暮らす動物たちをあのような形で飼うべきではない。心理的社会的問題行動が猿の内面の苦しみを示している。」ゲイナス博士は実験施設の類人猿と野生の類人猿の研究を20年以上に渡って行ってきた。進化人類学のマックスプランク研究所で博士号を取得している。彼女はウガンダの野生のマウンテンゴリラを研究し論文を出している。また、合衆の3つの類人猿研究所にて働いた経験もある。霊長類を檻に閉じ込めているところもあれば半野生状態にしているところもあった。そこでアカゲザルの社会的行動を主に研究した。ジェシカ・ゲイナス博士(Dr.Jessica Ganas)ここ十数年で科学技術が著しく発展し、動物を用いた実験が時代遅れになってきています。投資家は粘り強く、代替法がある場合は、動物実験をやめるように働きかけるべきです。多くの動物実験はすでに代替法に置き換え可能であり、学術団体には倫理的責任があり、動物に実験を依存するのを止め、より有効で効果的で倫理的実験法に移行すべきです。動物への虐待行為を止めさせるために協力してください。署名はこちらからhttps://www.change.org/p/demand-justice-for-grace-victim-of-cruel-research-lab翻訳:アニマルライツセンター 原文:http://www.lcanimal.org/index.php/component/content/article/18-investigations/investigations-in-the-field/240-cruelty-at-itr-animal-testing-labITRと日本の関係※以下はアニマルライツセンターから追記 ITR Laboratories Canadaは、日本の企業である株式会社ボゾリサーチセンターの子会社です。株式会社ボゾリサーチセンターが持つ日本国内の実験所もGLP(Good Laboratory Practice)認証や、AAALAC(The Association for Assessment and Accreditation of Laboratory Animal Care)認証を取得していますが、日本には法に基づく内部査察の制度はありません。 ITR Laboratories Canadaはまた、CCAC(Canadian Council on Animal Care) を取得しており、さらにFDAとEMA(European Medicines Agency)の査察を受けています。その上での、この動画、レポートの状態であることを、私たち日本人は重く受け止めるべきでしょう。 実態が隠された状態であることは、常に状況を悪くするのみで改善することは無いのだということが、これまで数々の事例で実証されてきました。ITR Laboratories Canadaは閉鎖されるべきですが、同時に日本の他の動物実験(非臨床)施設の内情や実行力のある規制の必要性についても、改めて考えなくてはなりません。クリックして Twitter で共有 (新しいウィンドウで開きます)Facebook で共有するにはクリックしてください (新しいウィンドウで開きます)クリックして X で共有 (新しいウィンドウで開きます)Share This Previous Article2017年5月14日、木下サーカスを見に行ってきました。 Next ArticleOIE陸生動物衛生規約 第7.3章 陸路による動物の輸送(日本語訳) 2017/05/16