以下は2013/7/12締め切りのパブリックコメントでアニマルライツセンターが送付した意見です。実験動物の飼養及び保管並びに苦痛の軽減に関する基準(平成18年環境省告示第88号)▼意見1<該当箇所>資料4の1ページ 第1 一般原則 1 基本的な考え方<意見内容>「動物を科学上の利用に供することは、生命科学の進展、医療技術等の開発等のために必要不可欠なものであるが、」を削除すべき。<理由>人間と動物では越えられない種差があり、動物実験の結果を人に当てはめることの危険性や、人と同じように感受性のある生き物を実験に使うことの倫理的問題が存在することは周知の事実である。さらに、実験動物の適正な取り扱いの推進にあたって、動物を科学的利用に供することの必要性を基準に示すのは、法の目的に無関係であり、必要のない一文であるため。 ▼意見2<該当箇所>資料4の1ページ 第1 一般原則 2 動物の選定<意見内容>「管理者は、施設の立地及び整備の状況、飼養者の飼養能力等の条件を考慮して飼養又は保管をする実験動物の種類等が計画的に選定されるように努めること。」を「管理者は、施設の立地及び整備の状況、飼養者の飼養能力、アニマルウェルフェアの知識、3Rの原則等の条件を考慮して飼養又は保管をする実験動物の種類及び数等が計画的に選定されるように努めること。」<理由>動物の選定においての当法律の主旨が含まれていないのは不自然であるため。 ▼意見3<該当箇所>資料4の1ページ 第1 一般原則 1 基本的な考え方<意見内容>「適正な飼養及び保管並びに科学上の利用に努めること。」を「適正な飼養及び保管並びに科学上の利用をしなければならない」に修正すべき。<理由>動物の愛護及び管理に関する法律、第四十一条に「動物を科学上の利用に供する場合には、その利用に必要な限度において、できる限りその動物に苦痛を与えない方法によつてしなければならない。」とある。できるだけ苦痛を与えない方法をとることは、努力義務ではなく義務とされている。法律との整合性を保つべきであるため。 ▼意見4<該当箇所>資料4の2ページ (改正案) 第1 一般原則 4 その他<意見内容>「管理者は、定期的に、本基準及び本基準に則した指針の遵守状況について点検を行い、その結果について適切な方法により公表すること。なお、当該点検結果については、可能な限り、外部の機関等による検証を行うよう努めること。」を「管理者は、施設における動物実験等に関する情報(例:機関内規程、動物実験等に関する点検及び評価、当該研究機関等以外の者による検証の結果、実験動物の飼養及び保管の状況、取扱動物数、飼育頭数等)を、毎年1回程度、、インターネットの利用、年報の配付その他の適切な方法により公表すること。」に修正すべき。<理由>文部科学省、農林水産省の「研究機関等における動物実験等の実施に関する基本指針」には「管理者は、施設における動物実験等に関する情報(例:機関内規程、動物実験等に関する点検及び評価、当該研究機関等以外の者による検証の結果、実験動物の飼養及び保管の状況等)を、毎年1回程度、インターネットの利用、年報の配付その他の適切な方法により公表すること。」と記されている。この指針は各省の所管する施設にしか適用されていないが、一般企業そのほかすべての実験施設には適用しなくてよいとする根拠はない。 ▼意見5<該当箇所>資料4の2ページ 第2 定義 (3)実験動物 <意見内容>「実験等の利用に供するため、施設で飼養又は保管をしている哺乳類、鳥類又爬虫類に属する動物(施設に導入するために輸送中のものを含む。)をいう。」を「すべての脊椎動物、頭足類、円口類(施設に導入するために輸送中のものを含む。)をいう。」 に修正すべき。<理由>CIOMS(国際医科学団体協議会)は医学生物学領域の動物実験に関する国際原則の中で「実験者は、人間に痛みを引き起こす処置は他の脊椎動物にも痛みを引き起こすと考えるべきである」と記している。またEU動物実験指令には「本指令には、脊椎動物に加え、痛み、苦痛、ストレスそして持続的な害からの苦痛を感じることが科学的に証明されている円口類、頭足類を含む。」と記されている。痛みを感じる動物は実験の保護対象から外されるべきではない。さらには「管理者等は、哺乳類、鳥類又は爬虫類に属する動物以外の動物を実験等の利用に供する場合においてもこの基準の趣旨に沿って行うよう努めること。」とすでに記載されているため。 ▼意見6<該当箇所>資料4の3ページ 第3 共通基準 1 動物の健康及び安全の保持<意見内容>以下の項目を追加すべき「動物に恐怖や不安を与えないよう、適切な取扱を行うこと」<理由>動物福祉の目標として国際的に認知されている「5つの自由」のひとつ、「恐怖や不安からの自由」を盛り込むべきであるため。 ▼意見7<該当箇所>資料4の3ページ 第3 共通基準 (2)施設の構造等 ア <意見内容>「実験等の目的の達成に支障を及ぼさない範囲で、個々の実験動物が、自然な姿勢で立ち上がる、横たわる、羽ばたく、泳ぐ等日常的な動作を容易に行うための広さ及び空間を備えること。」のうち「実験などの目的の達成に支障を及ぼさない範囲で、」を削除すべき。<理由>自然な姿勢で立ち上がる、横たわる、羽ばたく、泳ぐなどは、動物福祉の目標として国際的に認知されている「5つの自由」のひとつ、「通常行動への自由」であり、この自由はすべての動物に与えられなければならない、とされており、実験動物も例外ではない。 ▼意見8<該当箇所>資料4の3ページ (2)施設の構造等 イ <意見内容>「実験動物に過度なストレスがかからないように、実験等の目的の達成に支障を及ぼさない範囲で、適切な温度、湿度、換気、明るさ等を保つことができる構造等とすること。」の中の「実験などの目的の達成に支障を及ぼさない範囲で、」という部分を削除する。<理由>動物のストレス、不快、痛みを最小にすることは道徳的な責務であり、目的の達成如何にかかわりなく、ストレスのない適切な環境で飼育されるべきである。 ▼意見9<該当箇所>資料4の3ページ 第3 共通基準 1 動物の健康及び安全の保持 (2)施設の構造等<意見内容>以下の項目を付け加えるべき。 「災害時に備え、飼育ケージは耐久性のあるものにし、壁や床に固定しなければならない。また、電気・ガス・水道が停止した際、SPF(無菌)動物や、実験中の動物の生存を維持するために必要な燃料の確保、自家発電機などの装置を備えなければならない。」<理由>2011年の東日本大震災の際、東北大学では、動物被害は、地震による直接被害がマウス約80匹死亡(漏水等による)、イヌ、ウサギ各1匹(いずれも実験中の動物)死亡、空調停止や断水等による衛生環境悪化により、マウス約7,000匹、ラット約1,230匹、その他28匹が殺処分されている。命ある動物を人間の管理下におく以上、災害時に動物を救護できる設備づくりは不可欠である。 ▼意見10<該当箇所>資料4の5ページ 第3 共通基準 3 危害等の防止 (3)逸走時の対応<意見内容>「また、管理者は、実験動物が逸走した場合の捕獲等の措置についてあらかじめ定め、逸走時の人への危害及び環境保全上の問題等の発生の防止に努めるとともに、人に危害を加える等のおそれがある実験動物が施設外に逸走した場合には、速やかに関係機関への連絡を行うこと。」を「また、管理者は、実験動物が逸走した場合の捕獲等の措置についてあらかじめ定め、実験動物の種類及びその危険性について周辺住民へ事前に周知し、逸走時の人への危害及び環境保全上の問題等の発生の防止に努めるとともに、実験動物が施設外に逸走した場合には、速やかに関係機関及び周辺住民への連絡を行うこと。」<理由>施設によっては住宅近くや都市部にあるものもあり、逸走時には影響が大きいため。また、生態系への影響や周辺住民への不安等、どのような危害が及ぶかは予測がつかないため、危険性の有無に関らず、全ての動物の逸走時には全て連絡を行うべきであるため。 ▼意見11<該当箇所>資料4の6ページ 第3 共通基準 3 危害等の防止 (4)緊急事の対応<意見内容>「地震、火災等の緊急時に採るべき措置に関する計画をあらかじめ作成するものとし、」を「地震、火災、津波等の緊急事態に際してとるべき管理者の行動、動物の救護方法及び避難場所、飼料の備蓄、動物実験中に災害が起こった場合の対応等の計画をあらかじめ作成するものとし、」に修正すべき。<理由>2011年の東日本大震災の際、東北大学では、動物被害は、地震による直接被害がマウス約80匹死亡(漏水等による)、イヌ、ウサギ各1匹(いずれも実験中の動物)死亡、空調停止や断水等による衛生環境悪化により、マウス約7,000匹、ラット約1,230匹、その他28匹が殺処分されている。また同大学では、犬の開胸手術中に東北大震災が起こり、研究者は酸素供給をオフにして避難、戻ったときには犬は死んでいた。こういった動物実験施設という特殊な環境では、より綿密な防災計画が必要である。 ▼意見12<該当箇所>資料4の6ページ 第3 共通基準 6輸送時の取り扱い ア <意見内容>「なるべく短時間に輸送できる方法を採ること等により、実験動物の疲労及び苦痛をできるだけ小さくすること。」のあとに「また、実験動物の輸出入を行わないこと。」を追加すべき。<理由>毎年日本は海外から犬や猫、サル、マウスなどの実験動物を輸入している。サルについては、家族の群れから引き離された野生のサルが、小さな木箱に詰め込まれ、米国や英国、ヨーロッパ、日本といった世界中の実験施設に輸送されており、日本は2010年に、中国・ベトナム・フィリピン・インドネシアなどから計6229匹のサルを輸入している。日本貨物航空ではすべての動物の輸送を、動物福祉の観点から中止している。「なるべく短時間で輸送できる方法を採る」ならば、輸出入はすべきでない。 ▼意見13<該当箇所>資料4の6ページ 第3 共通基準 6輸送時の取り扱い ア <意見内容>以下の内容を追加すべき「輸送の際には、輸送待機時を含め、適切な温度管理、空調管理の下に置くこと。また四肢の拘束は行う等、不要な苦痛を与えないこと。また、獣医師が随行し、定期的に動物の状態を観察し、不調の場合には即座に処置を行うこと。」<理由>サルの四肢の拘束や、輸送待機時に屋外に長時間放置されるなど、実際に日本の空港で目撃されたことである。動物の輸送は非常にストレスのかかる行為であり、誰もが行ってよい作業ではない。獣医師の随行と観察、即座に処置ができる体制はどのような場合でも必須であるため。 ▼意見14<該当箇所>資料4の7ページ 第4 個別基準 1 実験等を行う施設(1)実験等の実施上の配慮<意見内容>以下の項目を追加すべき。「「脊椎動物を用いた実験で、避けることのできない重度のストレスや痛みを伴う実験」「麻酔していない意識のある動物を用いて、動物が耐えることのできる最大の痛み、あるいはそれ以上の痛みを与えるような処置」に該当する実験を行ってはならない。」<理由>Scientists Center for Animal Welfareでは「カテゴリーEの実験は,それによって得られる結果が重要なものであっても,決して行ってはならない。」とされているが、日本ではカテゴリーEの実験について「カテゴリーEの実験であっても研究機関の動物実験委員会が正当性を認めれば実施することも可能であると理解される。」との見解を国立大学動物実験施設協議会は示しており、日本においてカテゴリーEの実験は禁止されていない。カテゴリーD、Eともに動物愛護の観点からも、人道的にも容認できるものではない。動物の愛護および管理に関する法律の基本原則には「動物が命あるものであることにかんがみ、何人も、動物をみだりに殺し、傷つけ、又は苦しめることのないようにする」とされており、この法の対象には実験動物も含まれており、カテゴリーDやEの実験を正当化できる理由はない。 ▼意見15<該当箇所>資料4の8ページ 第4 個別基準 2 実験動物を生産する施設<意見内容>「ただし、系統の維持の目的で繁殖の用に供する等特別な事情がある場合については、この限りでない。」の中を削除すべき。<理由>この基準は動物の愛護および管理に関する法律に基づいて作られている。法の基本原則には「動物が命あるものであることにかんがみ、何人も、動物をみだりに殺し、傷つけ、又は苦しめることのないようにする」とされており、この法の対象には実験動物も含まれており、幼齢や高齢の実験動物を強制的に繁殖させたり、みだりに実験動物を繁殖させることを正当化できる理由はない。 ▼意見16<該当箇所>資料4の8ページ 第5 準用及び適用除外<意見内容>「また、この基準は、畜産に関する飼養管理の教育若しくは試験研究又は畜産に関する育種改良を行うことを目的として実験動物の飼養又は保管をする管理者等及び生態の観察を行うことを目的として実験動物の飼養又は保管をする管理者等には適用しない。」の中の「畜産に関する飼養管理の教育若しくは試験研究又は畜産に関する育種改良」を削除する。<理由>畜産に関するものであっても動物実験の性質に変化はなく、同様に動物の科学上の利用であり、適応からはずす理由にはならないため。クリックして Twitter で共有 (新しいウィンドウで開きます)Facebook で共有するにはクリックしてください (新しいウィンドウで開きます)クリックして X で共有 (新しいウィンドウで開きます)Share This Previous ArticleICCR7 第7回化粧品規制協力国際会議 ステークホルダーセッションご報告 Next Articleツキノワグマの飼育管理: エンリッチメント 2013/07/12