年末年始は国際的な映画祭が開催されるシーズンです。アニマルライツセンターは今年8月、50日間にわたって公開した国産鶏肉になるブロイラー養鶏の飼育記録映像『ブロイラーの50日 メイの見た世界』をもとに、同名のショートムービーを海外向けに英語で制作し、いくつかのイベント出展します。しかし残念ながら、コロナ感染拡大に対処して、直近の映画祭がオンライン開催に順延されたため、情報が古くなることにも配慮し、作品を先立って一般公開することにしました。 制作にはボランティア支援者もかかわり、鶏への思いあふれるアニマルライツエンターらしい作品になりました。すでに内容について、映画祭関係者からの問い合わせもありました。アニマルライツが世界に広がったのは、SNS上の拡散した、肉になる動物の悲惨な映像の力が大きいといわれています。この作品を通じて、動物を商業利用することがどれだけ残酷な結果をもたらすのか、一人でも多くの人に考えるきっかけを与えることができればと思っています。50日目の鶏舎に嘴の曲がった雛が居ました。体が恐ろしくやせ小さく、飲水器や給餌皿に長い間届かなかっただろうと思います。飢えと脱水に苦しみながら、出荷されるまで生き延びてきました。「アニマルウェルフェア」ではこういう雛は早期に淘汰することが求められます。苦しみが長引くだけだからです。しかし一人あたり数万の鶏を管理しなければならない今の畜産では、苦しんでいる雛をすべて見つけ出すことすら物理的に不可能です。弱った雛たちは長期にわたり苦しみ、じわじわと死んでいきます。このブロイラー農場で働いた人は、農場で見て来た残酷な光景は「アニマルウェルフェアでは解決できない」といいます。たとえばベターチキンというアニマルウェルフェア基準は、1平方メートル当たり10羽、メイたちの鶏舎が16羽ですからかなり緩和されます。しかし一般的な常識に照らして考えると酷く過密な虐待飼育です。床が糞だらけになるのも変わりはありません。ベターチキンの基準では数種類のスローグローイングと呼ばれるややゆっくり成長する品種が指定されています。しかしメイたち一般的なブロイラー種の成長速度が100とすると、ベターチキンのブロイラー種の成長速度はその80%程度に落ちるだけで成長が早いことに変わりはありません。そんなベターチキン基準でも「アニマルウェルフェア」だとして評価されるのは「所詮畜産動物だから」です。地鶏であっても生産性を目的とした人為的介入が行われています。ある地鶏では増体が進んだ結果、出荷前に足が変色し皮が破れるなどの問題が発生しています。問題はアニマルウェルフェアの有無ではなく、動物の経済利用そのものにあります。ここ数年、SDGsやESG投資の考えの広がりに伴い代替肉市場が史上空前ともいえるほど拡大しています。国内でも複数の著名人が畜産動物の扱いの人道的問題に言及し始めています。こういった動きを後押しできるよう、アニマルライツセンターは今後も尽力します。同時に、今後畜産がしばらくは続くことを考えると、苦しみを少しでも減らすためにアニマルウェルフェアの取り組みも必要です。アニマルウェルフェアの状況は国によって異なるため、その格差を国の内外に訴えていく必要があります。アニマルライツセンターは、これからも日本のアニマルウェルフェアの問題を国際的に訴求していきます。みなさまも映像の拡散よろしくお願いします。 ブロイラーの50日間をすべて見るクリックして Twitter で共有 (新しいウィンドウで開きます)Facebook で共有するにはクリックしてください (新しいウィンドウで開きます)クリックして X で共有 (新しいウィンドウで開きます)Share This Previous Article賛同団体100!バタリーケージの卵を食べたくない!キャンペーン Next ArticleOIEへの日本コメント、(裏金で?)どうなっちゃったの? 2020/12/08