2016年の企業のエシカル通信簿では加工食品企業5社を調査したが、その際の通信簿はオール1。アニマルウェルフェアの取り組みの痕跡を市民から見て見つけることがほぼできないという状況だった。2022年の調査では、企業のアニマルウェルフェアの取り組みが大きく進んだ結果になった。全体のポリシー アニマルウェルフェアの方針や行動計画があるかという最初の設問郡では、10社中9社になんらかの取り組みが見られた。まだ取り組みが見えてこない企業もあるが、アニマルウェルフェアがSDGsの一環であり、2016年と比べて市民の意識も変化していることから今後も変化は大きいものと予測できる。この調査対象になった10社だけでなく、アニマルウェルフェアのポリシーを持つ食品関連の大手、中堅企業はこの2~3年で急激に増加している。少なくとも、アニマルウェルフェアの5つの自由(飢餓と乾きからの自由、苦痛や疾病からの自由、恐怖及び苦悩からの自由、暑さや臭いなど身体的不快さからの自由、正常な行動ができる自由)に基づいた飼育が必要であることを社内に浸透させ、調達方針を検討し始める段階に、多くの企業が到達してきた。調査した企業の中には、アニマルウェルフェアの行動計画をもち、進捗状況の報告を始めていたり、アニマルウェルフェアについて第三者の意見を聞く機会を設けていたりといった企業もあった。具体的な取り組み 一方、まだまだ具体的な取り組みまで届いている企業は多くなかった。アニマルウェルフェアの取り組みの開始自体が遅れていた日本企業として、よりスピードを上げ具体的な取り組みを進める必要がある。畜産動物、水産動物のアニマルウェルフェアに資する具体的な取り組みは、配点が大きい部分であり、全体163点の内98点を占める。この具体的な目標、進捗、達成が今後アニマルウェルフェアを企業価値に変えていく肝だと言える。畜産、水産動物のアニマルウェルフェアの向上は、畜産物自体をやめようという取り組みではなく、飼育や屠殺の方法を改善するという取り組みだ。もともと多くのボリュームの畜産水産物の取り扱いがある中で、良い取り組みを追加するだけでは、企業の評価を上げることはできず、悪い飼育、悪い取り扱い方法を排除していくという取り組みが求められる。アニマルウェルフェアがより低い畜産・水産物を排除していくことが重要なのだ。なぜなら、世界中の畜産動物のほとんどが、その低いアニマルウェルフェアの飼育の中にいるからだ。ここを改善しなければ、薬剤耐性菌の拡大、新興ウイルスの発生、資料生産による森林破壊、生物多様性や倫理の喪失など低いアニマルウェルフェアがもたらす様々な悪影響を払拭はできないということを指している。例えば、日本の卵用の鶏たちは、韓国での飼育基準の3分の1のスペースに入れられていることすらある。その異常な飼育が日本最大手の養鶏場の状態であり、日本の卵の供給の10%を占めている。鶏たちは400~600日後に屠殺されるときには心身ともにボロボロになっている。世界ではこの採卵鶏のケージフリーへの取組みが最も重視されながら進んでいるが、残念ながらこの部分の改善ができている企業は今回なかった。一方で、高く評価した企業の取り組みは、期限を定め妊娠ストールフリーに移行すると発表し進捗も公開している日本ハム、水産養殖において総水揚量の96%において、事前のスタンニングを行い、また作業手順の改善を検討しスタンニングの実施を推進しているという情報を公開しているニッスイだ。スタニングというのは、屠殺の過程で、首を切る前に気絶処理をする工程だ。豚肉や牛肉で気絶処理を事前に行わないというのは、日本でも離島とハラルミートを除いて残ってないが、鶏は別だ。世界でスタニングなしの屠殺を許容するグローバル企業はほぼないが、残念ながら、国内の多くの食鳥処理場がスタニングをしていないことがわかっている。これは日本の法律があやふやだから許されてしまっているが、一方で、世界の国々は事前のスタニングを義務化している。日本が鶏肉を輸入するブラジル、タイ、米国ではスタニングが義務であり、間違いなく行われている(※ハラルミートは除く)。これらの国々は、スタニングが行われていることを国や州が保証してくれる。しかし、日本は違う。企業が自ら方針を示さなければ、気絶させないまま首を切った苦しみ抜いた鶏肉が使っているということになるのだ。今後、企業にとってリスクになるものだと私たちは考えている。法整備が遅れた国でビジネスをしているということは、それだけアニマルウェルフェアの状態は脆弱であり、より信頼を得ることがむずかしいということだ。自分たちの企業を守るために、悪い飼育、悪い取り扱いを排除するアニマルウェルフェアの調達方針、生産方針を持ち、目標や現状を公開して誠実に対応することが求められる。動物実験 化粧品の動物実験が国内企業の中で自主廃止に向かっている中、今、次の課題になっているのが食品の動物実験である。調査した食品企業の多くはヘルスクレーム、つまり機能性や有効性を確認するための動物実験をしないという方針にとどまっていた。一方、ヤクルト、キユーピー、キッコーマンやアサヒグループなど、安全性試験や予備試験や基礎研究なども含め、食品分野で廃止する企業が徐々に増えてきており、次なる対応が求められる。食品という本来危険なものが含まれない想定の分野に関しては、化粧品と同様に全般を廃止する必要がある。アニマルライツセンターの一般調査会社のインターネットモニターを使用した調査では、68.4%の人々が食品に新たな効能を追加するために動物を犠牲にしたくないと答えている。植物性タンパク質 10社中8社で植物性タンパク質を増やす取り組みがあった。日清製粉は社内の食堂でミートフリーマンデー(週に一日お肉や卵をやめる)を実施されており、高く評価した。世界でも投資獲得が年々急増している分野であり、日本でも企業の新たなメニューや素材の開発に、大いに期待している。クリックして Twitter で共有 (新しいウィンドウで開きます)Facebook で共有するにはクリックしてください (新しいウィンドウで開きます)クリックして X で共有 (新しいウィンドウで開きます)Share This Previous Article動物福祉を考える議員連盟 再始動! Next ArticleアニマルライツチャンネルVol43[殺される最後の日 せめて水を飲ませて] 2023/07/23