中国2023年9月、中国国内で最大となる50万羽規模のケージフリーの養鶏場の建設が始まった*1。馬市鎮地方政府と広東省に本拠を置く著名な鶏卵供給会社 Tudama Agriculture Development Companyの共同事業であるという。これを報じた畜産飼料関係のメディアは、「中国では平飼い卵の需要が高まっており、その結果鶏卵生産業界に大きな変革が生じている。持続可能なタンパク質コンサルタント会社レバー・チャイナが食品業界メディアのFTAと提携して実施した最近の調査では、中国の消費者の75%がレストラン、小売店、ホテルで平飼い卵のみを使用するブランドを強く好んでいることが明らかになった。」としている。2021年に中国はケージフリー生産の評価ガイドラインを策定しているが、これを報じた養鶏業界紙のなかで、この基準を策定した公的鶏卵業界団体の副会長は「中国は現在、より高品質の卵を生産するために、鶏卵生産者にケージフリーシステムの採用を奨励している」と述べている*2。2021年、養鶏業界紙は、香港でのケージフリー卵の需要が拡大し4年間で需要は倍増するという予測を報じた*3。中国の鶏卵養殖場の10%がケージフリーであるとされており、この数字は日本よりも5%程度高い。業界紙の報道*4によれば、「2022年に中国第4の都市である重慶で実施された調査では、消費者は放し飼いと表示された卵を好み、割増料金を支払う用意があることが判明した。この研究では、高所得の消費者、妊婦、子供を持つ人々は放し飼いを選択する傾向が高いことが判明した。ラベルを理解し信頼する消費者は、平飼いの卵を選ぶ傾向も高かった。」という調査結果、さらに「2014年に中国で最も人口の多い江蘇省で実施された以前の研究では、卵の購入決定に影響を与える2つの最も重要な要素は栄養と放し飼いでの生産であることが判明」という研究結果も紹介している。別の業界紙の報道でも*5、「2021年の調査では、中国の消費者の約75%が平飼い卵を使用しているブランドから購入することに熱心であり、67%が食品企業は平飼い卵のみを調達することを約束し、それを守る必要があると考えていることが判明」という研究結果を紹介し、実際に大手養鶏企業がケージフリー鶏舎の建設に大きな関心を締めていると報道している。中国では、国を含め、ケージフリーへの移行に前向きであり、研究としても大手含めケージフリー鶏舎が拡大していくことが予測されている*6。とはいえ、中国は最大の鶏卵消費国であり、移行には当然ながら日本よりも多くの費用と労力がかかる。しかし、少なくとも日本より進み早く、世界からも重要な市場である中国は注目され、そして日本政府や日本企業よりも行動が早い。消費者の意識も”ケージフリー”という言葉はまだ浸透していないが、放し飼いを選びたいというニーズは高い。これら前向きな姿勢での報道を、動物保護団体ではなく業界紙がしていることからも、今後に期待が持てる。韓国韓国が日本よりも進んでいることは明快だ。ケージフリー飼育されている鶏の数が正確に把握できるためだ。現時点(2023/10/25)で418,1734羽*7がケージフリーで飼育されている。総飼育数は7,418万羽*8だということなので、ケージフリーで飼育される鶏の数は5.6%となり、2019年と比較すると1%増加している。日本は現時点で1.1%であるわけで、増加数でも羽数でも完全に遅れをとっている。台湾台湾では大型ショッピングモールを展開するカルフールがケージフリーをコミットしており、大きく消費者向けにケージフリーをアピールもしている。日本では大型ショッピングモールがそのような動きをするということはないため、違いの一つと言える。また2021年の報告*9では、15%の卵がケージフリーに切り替わっているとしている。ケージフリー業者の協会も軌道に乗っており、順調な伸びを見せるものと考えられる。*1 https://www.feedstuffs.com/agribusiness-news/construction-begins-on-china-s-largest-cage-free-egg-farm-*2 https://www.poultrynews.co.uk/production/china-develops-its-first-ever-standards-for-cage-free-eggs.html*3 https://www.poultryworld.net/poultry/substantial-growth-for-cage-free-eggs-in-hong-kong/*4 https://www.wattagnet.com/egg/egg-production/article/15537865/could-chinas-egg-industry-go-cagefree*5 https://www.foodnavigator-asia.com/Article/2022/10/18/china-s-egg-industry-prepares-to-go-cage-free-as-consumer-demand-surges*6 https://www.issuelab.org/resources/36545/36545.pdfその他参考 https://www.faifarms.com/cage-free-farms-in-china/ https://www.mdpi.com/2076-2615/12/16/2090 https://www.163.com/dy/article/HBHNKOCE052190PV.html http://business.china.com.cn/2023-10/16/content_42553179.html https://www.sohu.com/a/519195348_379553*7 https://www.animal.go.kr/front/awtis/certification/certificationList.do?menuNo=3000000012*8 https://en.yna.co.kr/view/AEN20230120003200320*9 https://e-info.org.tw/node/231891※北朝鮮については不明クリックして Twitter で共有 (新しいウィンドウで開きます)Facebook で共有するにはクリックしてください (新しいウィンドウで開きます)クリックして X で共有 (新しいウィンドウで開きます)Share This Previous Article日本のケージフリー飼育の鶏の割合は1.11%、ケージ飼育が98.89%(2023年調査結果) Next Article卵の特売 百害あって一利ない理由 2023/10/26