2023年5月に三重県多度大社で開催された上げ馬神事は、7月末現在も”伝統の中の動物虐待”として社会に問題提起をし続けています。そのような中、7月27日、田村憲久元厚労大臣ご同席のもと、一見勝之三重県知事および三重県担当課の方々にお時間をいただき、公益財団法人動物環境・福祉協会Evaと共に動物への扱いの改善をお願いしました。冒頭に一見知事から、時代とともに形を変えなくてはならないが地域での世代間の意識の違いなどがあること、県としての改善の要請をしているとのご説明をいただきました。知事は現在の上げ馬神事が社会的に容認されないものであることを十分にご存知でした。また田村議員からもご自身の地元の祭りでも、人々の安全のために大きく形を変えているなどの事例を上げ、変化を後押ししてくださいました。Eva、アニマルライツセンターからは、まず生きた動物を使う神事からの代替、そしてそれが難しい場合には大幅改善をお願いをしました。代替でより持続可能な神事へ神事やお祭りでは昔から人柱などから代替し続けているものです。今まさに、生きた動物の利用から、さらに現代にあった形に代替するべきときがきています。まずは何を残したいのか、神事の中心となっている総代会は見極める必要があるでしょう。元々この神事は豊作か凶作化を占う予祝のために行われています。しかし多度大社に行ってみるとわかりますが、”場”つまり急坂と崖自体も保全している様子が見られます。とはいえ、急坂と崖はこれまでも高さなどが変化してきて今の過激な急坂と崖になっているものと考えられます。もしかしたら今ではまつりの要素こそ残したいのかもしれません。何を残すか決めたら、それにあった代替を考えてほしいと思います。例えば私達からは以下の案を出しました。馬の形の神輿や山車を組ごとに作って崖に上げる巨大なボールを転がし崖を上げる垂直壁をボルダリング壁に変更(新たな名所へ?)人間が竹馬で走って競争する一般から案を募る伝統を変えることを後ろ向きに捉える必要はありません。馬の利用を残せば、今後、多くの人々がカメラを構え、動物虐待が起きないか監視する祭りになってしまうでしょう。祭りという要素から、興奮した人々から荒々しさを取り除くことは容易ではありません。馬がパニックを起こすようなことや不適切な扱いがあれば、再び坂の傾斜を変えたり改善にお金を費やすことにもなるでしょう。そうではなく、新たな価値付けをすることこそが、地域への良い効果をもたらすものなのではないでしょうか。動物保護団体として、動物を利用しない形への転換を強く推奨しました。代替をしない場合は大幅改善そして上記代替をしないのであれば、急坂と崖を取り去り、厳しいルールのもと開催するという大幅な改善が必要です。以下が私達からの改善の要望です。1:障害物について1-1:馬に壁を登らせることは習性に反しており、最終地点にある壁は撤去すること障害競技であっても、硬い壁を登らせるようなことはしません。また障害競技では長年の訓練を行っており、それでも事故で馬が死亡することがあり、多くの批判を受けています。壁は高さの改善ではなく、撤去する必要があります。1-2::馬に現状の30~45度程度の坂を登らせることは習性に反しており、どのような馬でも登れる傾斜に改善すること通常、傾斜は馬の速度を制限するためにつけられます。急坂を馬に全力疾走をさせることは無理があります。上の広場までどうしても馬を登らせたいのであれば、走路の前半からなだらかな傾斜をつけ、駈歩(かけあし)程度で登らせるようにする必要があります。坂を全力疾走させることは馬に負担がかかりすぎます。2:環境について2-1:地面は馬の脚に適した良質なダートやウッドチップ、芝に変更すること現在の砂利は走行する馬の脚にとって負担が大きく、さらに坂に差し掛かったところでは大きな石やコンクリートの破片のようなものも混ざり、配慮が見られません。走路すべての砂利を、馬の脚に適した良質なダート、ウッドチップ、芝に変更する必要があります。なお、馬の障害レースではダートは馬の故障の割合が多いことが知られています。また障害レースではダートは使用されず芝であることも考慮し、素材を検討する必要があります。2-2:雨などにより水分含有量が22%を超える場合は開催を中止すること雨が降ったあとなどで水分量が多くなると滑りやすく、馬にも人にも危険な状態になるため、不良馬場に分類される水分量22%以上であるときは開催を中止するルールを作ってください。2-3:参加者(関係者)が待機する場所は走路の幅を広げること3メートルしかない走路の両脇に、人が多数立って待ち構えている状態は、馬に恐怖やストレスを与えます。走路の幅を広げ、関係者は隠れられる部分に待機しておく程度にする必要があります。2-4:走路内に立ち入る関係者、及びその数を制限すること馬が暴走するなどのために関係者を待機させる必要はあろうかと思いますが、現状の人数は多すぎます。馬の制御が可能な技術を持った人を、数名のみ待機させるように変更してください。坂が緩やかになったとしても、逃げ場の無い走路です。とくに未成年者を立ち入らせるべきではありません。3:馬の扱い3-1:ムチとして使用している棒を廃止し、乗馬用のムチ(短鞭)に変更し、原則合図ムチとしてつかい、過度な利用を禁止すること乗馬、競馬でも硬い棒などは使用できません。また、興奮した乗り子がむやみにムチ打ちしている様子も見られ、原則的にムチで馬を叩かないことをルールとしてください。乗馬用の短鞭を持つことは致し方ないものと考えますが、これらは馬に指示を出すための合図ムチとして使用してください。3-2:ハミを引っ張ったり、しゃくることを禁止することハミは馬の口の内側に痛みを与え制御する器具であり、興奮した乗り子、または制御が不安定な乗り子が引っ張り続けるなどにより怪我をしている可能性があります。ハックモアというよりアニマルウェルフェアに配慮された制御器具があり、こちらに変更してください。少なくともハミを引っ張る、しゃくるといった行為は禁止してください。3-3:足を痛めた馬を引き馬で移動させないこと、および負傷した馬をすぐに運び出し治療できる経路を常時確保すること万が一、馬が転倒したり足を痛めたりした場合、馬にそれ以上の苦痛を与えないよう、引き馬ではなく馬運車などで運び出す必要があります。また獣医師による治療はできるだけ早くに行われる必要があるため、常に馬を運び出すことができる経路を確保してください。4:乗り子4-1:乗り子は少なくとも半年以上、乗馬の訓練を受け、乗り降り、早足、駈歩、馬への合図ムチでの指示出し(走り出しなど)が一人でできる状態とし、最低限それらが一人でできない場合は出場しないこと4-2:乗り子の服装を風の抵抗が少ないものに改善すること駈歩や疾走、ましてや坂を登らせるにもかかわらず、乗り子の服装は風の抵抗が大きく、馬をより疲弊させます。4-3:乗り子の訓練のために、下記の条件に応じた適切なインストラクターを雇用すること全力疾走を継続する場合は競馬用のインストラクターを雇用すること全力疾走はやめ、駈歩までとする場合は乗馬用のインストラクターを雇用すること競馬や乗馬でのルールもアニマルウェルフェアの向上などで最新の情報を知っている必要があるため、現役のインストラクターを雇用すること5:観客5-1:観客を馬の走路から遠ざけること馬はちょっとした変化でも動けなくなることがあるなど、環境の変化に敏感な動物です。ましてや見知らぬ場所、見知らぬ人々が大勢いる環境はストレスになります。にも関わらず、現在の馬の走路は幅3メートルしかなく、馬の習性を考慮すると、馬が観客に怯え、動けなくなったり制御不能になる可能性があります。競馬では、観客は馬の行動への影響が出にくい十分な距離を取るという配慮がなされています。※走路左手の建物内からの観覧は除く5-2:大声や大きな音を立てることを禁止すること上げ馬神事ではすぐ横に観客がおり、大声を上げています。また観客が音を鳴らすなどの行動制限もなされていないようです。これらは5-1の理由同様に馬を怯えさせます。6:厳格な運用6-1:上記ルールに違反した組は次年度以降出場停止にすること6-2:万が一上記ルールでも馬がパニックになったり立ち往生するようなことがあれば、さらなる改善を行うことクリックして Twitter で共有 (新しいウィンドウで開きます)Facebook で共有するにはクリックしてください (新しいウィンドウで開きます)クリックして X で共有 (新しいウィンドウで開きます)Share This Previous ArticleアニマルライツチャンネルVol43[殺される最後の日 せめて水を飲ませて] Next Article近代以前の日本にみる動物との共生 No6〜牛〜 2023/07/28