2023年6月23日に行われた糸満ハーレーのアヒル取り競争時においてアヒルに対し行われた行為が動物愛護及び管理に関する法律 第44条第2項(動物虐待罪)違反であるとして、沖縄県警察に対して告発状を提出していましたが、11月1日付で受理されましたので、報告いたします。アニマルライツセンターでは、6月25日に告発状を提出をし、その後虐待に当たると考えられる罪状を追加するなどの訂正を加え、最終的に、8月10日に代理人を通して、糸満ハーレー行事委員会委員長を始めとし、アヒル取り競争の参加者3名、糸満ハーレーの行事委員会委員でありアヒル取り競争に賛同した委員を告発しました。アヒル取り競争は、その性質上、動物に対して過度な恐怖心と心理的抑圧が必ず加わるものであり、これをクリアする代替案は、動物を使わないという選択肢しかないとわたしたちは考えています。しかし、本年8月の行事委員会にて、来年もアヒル取り競争を継続することが決まったと聞いています。改善する方法すら協議決定されないまま、継続することだけを決めたというのは、大変残念なことであり失望しています。警察の捜査、そして処分を待ちたいと思います。告発した行為の詳細は以下のとおりです。1 糸満ハーレーアヒル取り競争について東恩納博は、糸満ハーレーの行事委員会会長であり、糸満ハーレーとは毎年旧暦5月4日、爬竜船を漕ぎ競い合うことで航海の安全と豊漁を予祝する地域の伝統行事で、アヒル取り競争はそのプログラムの一つとして因習的に挙行される、愛護動物アヒル30羽と、その他スイカやボールを主催者側が海上に投げ入れ、参加者が追いかけ奪いあう水中競争である。参加は自由であり、参加者の資格や規定はない。2 アヒル取り競争の性質アヒル取りに使用されるアヒルは羽を切り取られ、鳥類生来の動きを発現できない。水鳥ではあるが水のある環境で生育されたかどうか不明で、慣れない海洋に投げ込まれ、大勢の人間に追われる恐怖と精神的負荷のなかで、アヒル取り競争中に骨折など負傷する可能性が高い。そのような弱い存在であるアヒルを追いかける者のなかには、嗜虐的な感情に支配され虐待行為に及ぶ参加者もあれば、アヒル取り競争によって粗暴な感情が発揚され、愛護動物アヒルに対して、結果的にことさら嗜虐的な行為に及ぶことが予想される。3 経緯 平成27年以来、告発人NPO法人アニマルライツセンターは、糸満ハーレーのアヒル取競争にて、動物虐待が行われていると市民からの相談を受けている。平成27年には沖縄県動物愛護センターが市民の声を受け、糸満ハーレー行事委員会の中核組織である糸満漁業協同組合に指導を行い、実際のアヒル取り競争を視察した。その折、捕獲したアヒルを持ち帰る際に紐で捕縛していたのを籠に変更する、またアヒル取り監視員の配置を事前に提出するなどの改善があった。さらに同年よりアヒルの首や羽を掴むことを禁止し、違反した場合は退場処分とするなどのペナルティが設けられた。糸満ハーレー行事委員会は、告発人の問い合わせに対し平成27年に、アヒル取りは「アヒルの習性等に配慮して実施されており、アヒルの健康および安全を損なうことがないよう努めている」と回答し、平成27年の開催時から、沖縄県の指導により、アヒルの首や羽等を持ってはいけない旨と、違反した場合は退場である旨を注意喚起を行っていたというが、令和元年に開催されたアヒル取り競争においても、アヒルの首や羽を掴み、また脚を掴んで逆さ吊りにし続けるなどの違反行為が見られていたが、違反行為に対して退場やアヒルの保護などは行われていなかった。4 本件告発行為が行われた令和5年のアヒル取り競争このように、過去に虐待行為が頻繁に見られていたこと、また、海中で泳ぎながらという、人にとっても余裕のない中で競い合って生き物を捕獲するというゲームの方法、嗜虐性を生みかねない性質からしても、アヒルに対する暴力的な行為が発生することは容易に予測できたにも関わらず、中止の措置を取らず、アナウンスが聞き取れない状況を改善せず、参加者を事前登録させるなどの実行的な対策を取らず、競争心を煽るアナウンスを継続するなど、改善のための実効性のある対策を糸満ハーレー行事委員会は取らないまま、アヒル取り競争は開催され、海上に30羽のアヒルを投入した。進行船の乗船者3名は、それぞれ、段ボール内のアヒル8羽を海上に投げ入れており、特に、2羽のアヒルは、動いている船に衝突しそうになっている。本件のアヒルは予め羽を切られており、そのようなアヒルを海上に放つという一連の行為は、アヒルの身体に外傷が生ずるおそれのある危険な行為である。その結果、氏名不詳者A及びBは、自らの成果を誇示するがごとく、告発事実の行為に及び別の途中参加者である氏名不詳者Cは、アヒルを捕獲した後に長時間海の中にアヒル全体を沈めている様子も見られた。動画にあるように、被告発人Cが捕まえていたアヒルは、勢いよく海上に首を出した際、胴体の半分以上が海上に勢いよく飛び出し、海中でもがいていた事がわかる。アヒルが口を大きく開けて呼吸をし、またその後動きが悪くなっていることから、アヒルの体力が奪われるまで海中に沈められていたことがわかる。運びやすいよう、弱らせることを目的に海中に沈めることもあるという情報も聞いたことがあるため、故意に行った可能性もある。このように無理矢理海に沈められれば、アヒルの生命に危険が生じる。その恐怖は計り知れない。その他、抜けた羽が海上に散乱するなども見られ、逃げ惑うアヒルを捕まえるためには手荒な扱いにならざるを得ないことを示している。主催者は、これらのような動物虐待は、動物愛護法違反で有罪となりうることを周知し、行われた場合には、厳粛に退場処分等対応すべきであるが、主催者は競争を煽るアナウンスを続け、「羽を掴まないように」という注意喚起が合間に付け加えたものが1度聞きとれただけだった。5 動物の愛護及び管理に関する法律(以下「法」という)及び動物虐待等に関する対応ガイドライン(以下「ガイドライン」という) ① アヒルは法に定める「愛護動物」である。 ② 法第44条第2項は、「愛護動物に対し、みだりにその身体に外傷が生ずるおそれのある暴行を加え」ることを禁じ、「一年以下の懲役または百万円以下の罰金」と定める。 ③ ガイドラインは、法第44条第2項の「虐待」とは、暴力を加える、酷使、恐怖を与える等、とする。⑵なお、伝統行事法は44条2項の「みだりに」の要件を満たさないのか、すなわち「虐待」該当性が問題となり得るが、「当該行事を行うために必要な限度を超えて動物に苦痛を与えるような手段、方法を用いた場合」には伝統行事であったとしても同要件を満たすとされている。過去の疑義照会及び「動物の虐待防止に関する意見」はおよそ50年近く前のものではあるが、それでも伝統行事であれば全て動物虐待の範囲外であるとは判断していない。 また、意見においては、今回問題となっている沖縄県内でのメキシコ闘牛について、「好奇的な娯楽として行われることに正当化理由は無い」等厳しい意見がされている。しかも、今回のアヒル取り競争は、以前から度々動物虐待の疑いを指摘されており、沖縄県は、行事委員会が第一種動物取扱業ではないとしながらも「アヒルの首や羽等を持ってはいけない旨と、違反した場合は退場である旨の注意喚起を行う」といった指導をしている。そうだとすれば、アヒルの首や羽等を持つことは、「当該行事を行うために必要な限度」を超えたものであると沖縄県は認識しているものと言わざるを得ない。加えて、アヒルを含め鳥は羽(風切り羽)を切られると、通常の身体の動きに制約が発生するうえ、その状況でアヒルが普段生活していない海面に投げ入れられれば、骨折等の事故が発生する確率が上がる。このような鳥にとって危険な行為をさせる一方で、アヒル取り競争はスイカやボールといった物も景品としているため、アヒルである必然性に乏しい。そうだとすれば、アヒルの羽を切って海中に放つという手段そのものも、「当該行事を行うために必要な限度」を超えて苦痛を与えるような手段、方法に該当する。⑶ 以上を踏まえると、伝統行事であるアヒル取り競争であっても、本告発状記載の告発事実については、いずれも「当該行事を行うために必要な限度を超えて動物に苦痛を与えるような手段、方法を用いた場合」に該当し、法44条2項の「みだりに」の要件を満たし、動物虐待罪が成立する。クリックして Twitter で共有 (新しいウィンドウで開きます)Facebook で共有するにはクリックしてください (新しいウィンドウで開きます)クリックして X で共有 (新しいウィンドウで開きます)Share This Previous Article豚の外科的去勢、世界は廃止に向かう。日本は麻酔すら進まず Next Article改良型ケージまたはケージフリーの環境は本当に鶏の生活を改善するのか? 2023/11/01