野生動物の飼育環境として不適切であるとして、海外ではサーカスなどのエンターテイメントに動物を利用することはやめる傾向にあります。この場合の野生動物とは家畜以外の動物のこと。野生動物をたとえ何世代繁殖したとしても、生来の生態が抜けることはないので、日本国内で飼育繁殖した動物も野生動物として、世界58か国※1では規制の対象となっています。サーカスにおける動物福祉の問題は、どんなに気を付けてもサーカス興行という環境下では常時防げない問題と、動物の扱い方が悪ければ起こる問題との2つの方向性があります。動物サーカス運営企業が動物を大切に飼育する努力をすれば、虐待による動物の苦しみは減るかもしれませんが、そもそもサーカスという一年中国内を車両移動する環境や、曲芸という習性に反した動作をさせながら、大型動物に適したアニマルウェルフェアな飼育環境は実現できないのです。さらに動物たちは芸を楽しんでやっているのではなく、やればご飯がもらえるし、ムチで叩かれるのが怖いから、仕方なく言うことを聞いているに過ぎないので、突発的な刺激があれば、観客や市民に危険が及ぶ暴走事故も起こりえます。このコロナ禍に開催がはじまった、東京都立川市におけるサーカス興行に端を発して、アニマルライツセンターはあらためて動物サーカスの問題を考える契機とします。サーカス開催がはじまった2020年には主催企業に要望書を提出※2しましたが、今回は2022年12月20日に、開催地である立川市社会教育推進課に、動物サーカスの問題を説明し、立川市としての積極的な協力や関与を控えるよう要望しました。サーカスを開催する他の行政においては、サーカス団による首長への表敬訪問やサーカスを広告するかのようなsns発信、さらには児童生徒の校外学習にサーカスが利用されるなど、動物サーカスを廃止する世界の動向に逆行するイベントや発信が行われています。立川市担当者は前向きに対応すると答えてくれました。アニマルライツセンターはさらに、開催場所を提供している地元企業にも面会要請しています。動物に不自然な芸をさせるということは、飢餓や暴力で相手を支配するのと同じこと。力で相手をねじ伏せる文化を肯定すれば、その社会はいつまでも野蛮で未熟なままです。アニマルライツセンターは動物搾取のない社会を目指して、動物サーカスにも反対をしていきます。【立川市への要望全文】私たちは、動物の権利・福祉向上を願い、様々な提案活動を行う、NPO法人アニマルライツセンターです。このたび立川市で開催される民営サーカスに対する、行政としての協力・積極的な関与につき、下記を要望いたします。要望一、動物を使用するサーカスに立川市は協力・積極的に関与しないでください。2022年12月20日時点で、58の国がサーカスでの動物使用を禁止あるいは制限をしています。年々動物サーカスへの非難の声は高まっており、禁止・制限する地域は拡がっています。日本国内では規制こそないものの、サーカスの動物利用に対して市民が啓発運動を行うなど、問題視する声は拡がっています。2019年の動物愛護管理法改正では、ライオンなどの特定動物の福祉が問題となり、愛玩目的での飼養が禁止になっただけでなく、「触れ合いや娯楽目的での飼養についても規制も検討すること」との付帯決議がなされています。動物の愛護及び管理に関する法律等の一部を改正する法律案に対する附帯決議 (令和元年6月11日)より引用。「特定動物の飼養・保管の許可については、人体への危害の防止、住民不安の解消、災害時の対策等の観点から、娯楽、触れ合い等を目的とした飼養・保管を規制する措置も含めた規制の在り方を検討すること。また、飼養施設の強度を担保し逸走防止策を図るだけではなく、移動檻での常時飼育などの不適切な扱いを防止し、特定動物のアニマルウェルフェアについても指導、監視できるよう検討し、その結果に基づいて必要な措置を講ずること。」犬や猫をサーカスに使用することも問題ですが、野生動物の使用はさらに深い問題を引き起こします。犬の例を見てもわかるとおり、動物が家畜化されるまでには数千年かかります。ライオンやゾウは家畜化された生き物ではなく、彼らには野生下と同じ強いニーズがあります。英国獣医師会がいっているように「家畜化されていない野生動物の福祉は、巡回サーカスの環境内では満たすことができない。」のです。狭い収容施設、長距離移動、芸の強要、すべてが動物福祉の大きな問題をはらんでいます。ゾウに逆立ちや後ろ足のみでの二足歩行をおこなわせるサーカス団がありますが、巨大な体重を抱えるゾウにとって、二本足で体を支えることは大きな負担となります。逆立ち、後ろ足立ち、ひざまずき、これらは関節や脊椎の損傷や爪の裂けにつながり、バランスをとる行為は、肘と膝に問題を引き起こす可能性があると、専門家は言います。以上の観点から、サーカス運営に行政が協力・積極的に関与すれば、市政における動物・自然との共生という大きなテーマに支障が生じることを懸念します。そのため立川市には持続可能な人間社会と環境の実現にむけて、野生動物利用をなくしていくことにご協力をいただきたく、本件を要望いたします。2022年12月20日※12020年木下大サーカス 動物虐待の廃止を。関係者へ要望 – アニマルライツセンター (arcj.org)※2サーカスでの動物利用を禁止・制限する国々 – アニマルライツセンター (arcj.org)クリックして Twitter で共有 (新しいウィンドウで開きます)Facebook で共有するにはクリックしてください (新しいウィンドウで開きます)クリックして X で共有 (新しいウィンドウで開きます)Share This Previous Article子供向けの必読書『いつか空の下で さくら小ヒカリ新聞』発刊! Next Article排泄物から発生する身近な畜産環境問題">排泄物から発生する身近な畜産環境問題 2022/12/22