2022年6月、岐阜県の笠松競馬場で馬を殺処分する際に、麻酔の投与なしにパコマ=消毒薬を注入して殺しているという情報提供を受けました。これに関し、私たちは岐阜県地方競馬組合、岐阜県知事古田肇、及び地方競馬全国協会に改善の要望を提出しました。この要望に応え、6月30日付けで、改善する旨の回答をいただきました。なお、岐阜県は岐阜県地方競馬組合(笠松競馬場)に改善を指導したとの回答をもらい、また、岐阜県地方競馬組合(笠松競馬場)からは改善の方針についても回答をいただきました。改善の方針は以下の通りです催眠鎮痛薬投与後十分な鎮静状態が得られてから、麻酔薬を投与し倒馬させ、筋弛緩薬を投与し、馬に苦痛を与えないように行う殺処分動物のスタニングや致死までの間にアニマルウェルフェア上の問題が起こらないか常に観察をする殺処分中にアニマルウェルフェア上の問題が起こった際に、予備の方法で殺処分動物の苦痛を最小限に抑えるよう、追加の麻酔薬および筋弛緩薬を準備しすぐに対応できるようにする確実な死亡確認をこれまでどおり行うこれまでに長い期間、パコマで殺されてきた馬たちはひどく苦しんできましたが、今後は麻酔で意識を失わせてからの致死処分となります。要望を受けてから早急に改善を取り入れてくれたことに感謝します。またなにより、この事実に対し、声を上げてくれた通報者、情報提供者に対し、感謝します。ありがとうございました。もしあなたも畜産動物に対する虐待を目にしたという場合は、どうぞ情報提供をお願いします。パコマによる殺傷は不適切パコマ消毒薬による殺処分は日本国も加盟するOIE国際獣疫事務局「陸生動物衛生規約」及びAVMA米国獣医学会「安楽死に関するガイドライン」において適切な安楽死方法と認められておらず、深刻なアニマルウェルフェア上の問題が伴う方法です。OIE陸生動物衛生規約第7.1章「動物福祉のための推奨への導入」には良い動物福祉の条件として「無痛殺処分」が記されており、第7.6.1条の一般原則では、「6 動物が殺処分される場合には、使用される方法は、即時の死亡、又は死亡まで持続する即時の意識喪失をもたらすものであるものとする。意識の喪失が即時でない場合には、意識喪失への導入は、不可逆的又は可逆的可能性が最小であるものとし、避けることができる不安、痛み、苦難又は苦痛を動物に与えないものとする。」と書かれています。また第7.6.3条の責任の項目には獣医師の責任について「動物が、避けることができる痛み及び苦難を受けることなく殺処分されることを確保するため、最も適切な殺処分法の実施を決定及び監督すること。」とあります。米国獣医学会AVMAによる安楽死に関するガイドライン( AVMA Guidelines for the Euthanasia of Animals:2020 Edition)にも消毒剤について、いかなる状況下でも安楽死剤として使用することはできない。」と規定しています。当然ながら、消毒薬であるパコマに麻酔作用は含まれていません。製造会社への聴き取りや日本中毒情報センターの情報からもパコマ消毒薬に麻酔作用がないことがわかっています。北米の科学者の集まりであるScientists Center for Animal Welfareもパコマの作用について、「動物が耐えることのできる最大の痛み,あるいはそれ以上の痛みを与えるような処置」に位置づけています。日本でも国立大学動物実験施設協議会や京都産業大学総合生命科学部松本研究室において、パコマの作用を安楽死に適さない注射剤に規定し、注意を促すものとしています。そもそもパコマは消毒薬であって、致死処分に使うために売られているものではありません。安楽に死に至るという証拠は何一つ、ないのです。このようにパコマ消毒薬は動物の殺処分に用いてはならない方法であることは明白であり、麻酔薬の投与なしであれば尚の事です。動物を利用する上での責務動物の愛護及び管理に関する法律に基づく「動物の殺処分方法に関する指針」では、殺処分動物の殺処分方法を「化学的又は物理的方法により、できる限り殺処分動物に苦痛を与えない方法を用いて当該動物を意識の喪失状態にし、心機能又は肺機能を非可逆的に停止させる方法によるほか、社会的に容認されている通常の方法によること。 」と示しています。一般的にパコマのような苦痛を伴う殺処分方法は社会的に容認されているとは考えにくく、国内法の考え方に照らし合わせても、苦痛を与えない殺処分方法に変えなければならない内容です。さらに、動物の愛護及び管理に関する法律 第41条の2には獣医師が虐待を受けた当たると思われる動物を発見した場合には遅延なく通報しなくてはならないという規定が、2019年の改正時に追加されています。これをうけて、一部地域の獣医師会では農場内で大動物の殺処分を行う際には麻酔をすることなどが通達されています。2021年1月21日には、農林水産省と環境省から連名で「農場における産業動物の適切な方法による殺処分の実施について(環自総発第2101214号)」とする通知が発出されており、「個々の行為が虐待にあたるかを一律に判断することは困難であるものの、動物虐待は、人が社会の中で関わるあらゆる動物の取扱いにおいて、法的にも道義的にもあってはならないこと」と明記されたうえで、虐待に当たる行為がある場合は「警察への告発を含めて厳正に対処」することを求めています。なお、OIE陸生動物衛生規約では馬科の殺処分方法を「貫通式家畜銃、その後のピッシング又は放血」「バルビツールその他の薬剤の注射」と規定しています。動物を利用する以上は、その苦痛への配慮は常識的に最低限の責務です。安くて昔から使っていて簡単で、動物が動けなくなるからといって、消毒薬を殺処分に利用することは許されない行為です。競馬の問題点はこちらからクリックして Twitter で共有 (新しいウィンドウで開きます)Facebook で共有するにはクリックしてください (新しいウィンドウで開きます)クリックして X で共有 (新しいウィンドウで開きます)Share This Previous Articleランバン、デサントが2023年からファーフリー&ファーウールフリーへ Next ArticleOIE屠畜に関するコード改訂への日本政府修正案に意見 2022/07/10