2018年1月に老朽化と経営破綻で閉館した千葉県銚子市の「犬吠埼マリンパーク」にはハンドウイルカのハニーやフンボルトペンギン、魚たちが残され、行く末を心配する声が絶えませんでした。海外からも強い関心が集まったにも関わらず、マリンパークは私たちやマスコミとの接触を拒み、情報を閉ざしてきました。新オーナーのもと経営再開!? ハニーとペンギンたちは中国へ売られる!?2019年7月5日号の「週刊フライデー」の記事によると、代表取締役が中国人女性に代わっているとあり、さらには驚くべきというか、あるいは最悪の予想が的中したともいえる内容が掲載されていました。新オーナーはハニーやペンギンを中国に売るつもりである。これまでのオーナーとともにマリンパークを再開する予定である。イルカやペンギンがいない状態で水族館をどのように再開するのかという疑問は残りますが、本当に中国に売られるとすれば、ハニーにとっては新たな苦痛の始まりです。長時間の輸送というストレスの後に再び狭いプールに入れられ、イルカショーと展示、そして繁殖にも利用されてしまうかもしれません。中国では水族館ビジネスが拡大しており(現在78館、建設中26館)、イルカは高額で取引されています。娯楽要素の強い中国の水族館では福祉的な環境など期待できません。そもそもイルカは水槽での飼育には適さない動物です。現在、世界では2,900頭あまりのイルカが監禁された状態にあると言われています。日本では約500〜600頭のイルカが飼育下にあるとされるので、世界で監禁されているイルカのうち20パーセントが日本のイルカということになります。中国と日本をあわせると、世界のほぼ半数近くを占めてしまうのではないでしょうか。イルカのショーや飼育に対する反感、鯨類の捕獲や飼育の禁止海外ではイルカやシャチのショーに対する反感が高まり、捕獲や飼育は禁止の傾向にあります。2019年6月10日、カナダでは議会がイルカなどの鯨類の捕獲や繁殖を禁止する法案を可決しました。ロシアでは「イルカ監獄」に閉じ込められたシャチやベルーガ(シロイルカ)の解放が始まっています。極東で捕獲されたシャチ11頭とベルーガ87頭が、小さく劣悪な生簀「イルカ監獄」に販売目的で閉じ込められていました。ほとんどが皮膚異変や低体温症を発症と、健康に問題があるため、リハビリの後に解放するというものです。ロシアは今後、鯨類の捕獲に対する取り締まりを強化するとしています。2018年9月に神奈川県の新江ノ島水族館で行われた、セーリングのワールドカップ開会式におけるイルカショーの演出に対し、ワールドセーリングは「失望した」と非難、選手も「困惑した」とSNSでツイートし、日本セーリング連盟が謝罪する事態となりました。世界に逆行、「四国水族館」2020年3月にオープン環境保護や動物福祉において常に世界とは逆行するのが日本です。四国の香川県では夕日をバックにしたイルカの水槽や音や映像を使った夜のイルカの展示など娯楽とデートスポットを目的とした、イルカには負担の大きい大型水族館が建設中で、2020年3月にオープンの予定です。犬吠埼マリンパークの例でもわかるように、水族館は持続可能な事業ではありません。水族館の耐久年数は約30年といわれています。1989年にオープンした、クロマグロの連続死で問題になった葛西臨海水族園も配管の漏水やろ過装置の老朽化が進んでおり、建物を建て替えしなければ対応できないとされています。この場合、移し替えや仮の水槽など、動物や魚たちには大きな負担が考えられます。展示から保護と福祉へ、そしてサンクチュアリへ海流のない水槽で長く暮らし、人から餌をもらうのに慣れてしまったイルカを野生に戻すのは容易ではありません。リハビリの後に海に戻れる個体もいれば、それが難しい場合もあります。カナダ、ボルチモア、ギリシャなどでは、人間の飼育下にあったイルカを本来の生息環境に近い海で終生保護する「サンクチュアリ」が進められています。中国からは2頭のベルーガがアイスランドのサンクチュアリに輸送されました。 人間の社会でおこった動物の問題は人間の問題です。本来ならば野生であるべき動物たちへの償いと保護へと方向転換するべき時はすでにきています。高額でイルカを購入するよりも、その資金を劣悪な環境で苦しんでいるイルカたちの保護や、穏やかな余生をおくるためのサンクチュアリ建設へと使うべきです。「ハニー問題」は捕獲、飼育、繁殖において、すべてのイルカ問題の象徴といえます。 「ハニーに穏やかな余生を」水族館の水槽で苦しむイルカたちがいる限り、ハニーキャンペーンはこれからも続きます。 参考資料カナダ議会、イルカやクジラの捕獲・繁殖禁止する法案可決 ロシア極東の「イルカ監獄」97頭の解放始まる ロシア、「イルカ監獄」から100頭を解放へ 売買目的で飼育か セーリングW杯、イルカの演出物議 統括団体「失望」 水族館に「2020年問題」 改修100億円超の例も 老朽化で 自治体財政を圧迫 「葛西臨海水族園のあり方検討会」報告書について The first sanctuary for dolphins rescued from captivity, opens on Greek island of Lipsiクリックして Twitter で共有 (新しいウィンドウで開きます)Facebook で共有するにはクリックしてください (新しいウィンドウで開きます)クリックして X で共有 (新しいウィンドウで開きます)Share This Previous Articleプリマハム、新しい農場では母豚の拘束飼育を辞めていく見込みか?! Next Article今日の「なつぞら」アニマルライツセンター解説 2019/07/01