高い技術力を持つエンタテイメント企業のSEGAと、自然のありのままの姿を突出した映像力で提供するBBCの共同プロジェクト、オービィ横浜が開業したのは2013年8月。 実際の動物は使用せずに自然界の動物たちの姿をそのままに見ることができるオービィのオープンを私たちは歓迎した。 しかし、同じ館内に2016年7月30日、アニマルスタジオがオープン。このアニマルスタジオでは生きた動物が展示され、ミーアキャットやハリネズミ、フクロウ、カメレオン、ウサギなど数十種類動物を、抱いたり触ったりすることが可能な施設になっている。 動物園のようなエンターテイメントを拒否してオービィを訪れる人も少なくない。しかしそういった人たちは拘束展示されている動物の姿や、触れ合いから逃れようともがいている動物の姿に失望した。アニマルスタジオだけではなく、オービィは期間限定で「サワレルハチュウルイ展」(触れる爬虫類)という生きた動物を展示し来場者に触らせるというイベントを開催したこともある。「Orbiは自然界の素晴らしさを称えるために生まれた、2社による初の共同プロジェクト」だということだが、人の飼育下におかれ自身の意思を奪われた動物たちは、自然な姿からは程遠い。生きた動物の展示の廃止を要望2016年11月、「生きた動物の展示」の廃止をSEGAとイギリスのBBCに要望した。 要望には猛禽類のビジネス利用の廃止を求める署名も添付し、拘束飼育の問題も訴えた。オービィのアニマルスタジオでは動物との「触れ合い」ができるが、フクロウについては展示しているだけで、「触れ合い」はできない。しかしフクロウが短いリーシュで拘束展示されていることに変わりはない。この要望に対して、2017年1月にBBCから回答があった(BBCの回答はSEGAと共同見解とのこと)。 回答の内容は次の通りオービィのアニマルスタジオは動物展示の資格を持った会社が運営しており、アニマルスタジオの個々の動物には健康と福祉を管理するための個別のケアプランがあり、毎日動物の精神面と肉体面の健康がチェックされている。アニマルスタジオをオープンする前に、BBC Earth と SEGAは、動物に最良の状態を維持させることと、エンリッチメントを含めた個々の動物のケアプランについてアニマルウェルフェアの専門家にアドバイスを求めた。アニマルスタジオのフクロウは、信頼関係を確立させるために、鳥を扱ったことのある訓練されたスタッフにより適切に世話をされる。彼らの施設は、国際的な福祉指針に沿って展示時間中に暗くなり、それぞれの動物には連続した9時間の休息がある。展示物に使用されている脚の拘束は、訪問者の安全とフクロウのために法律で要求されていますが、このような拘束は世界中の鷹狩りによって使用され、鳥の脚や肌を傷つけることのない材料で作られている。フクロウは毎日慎重に観察、記録され、食欲不振、羽毛の喪失または傷害などのストレス、病気の兆候がスタッフにより確実に見つけられるようにする。 問題が発生した場合は、動物はその場を離れすぐに治療される。これに対して、BBCに再度次の質問を送った。1) 国際的な福祉指針とはなにか? 2) フクロウにはどのような形で休息が与えられるのか?休息の際にリーシュから解き放たれるのか? 3) もし解き放たれるなら彼らには休息用の場所が与えられているのか?そのスペースはどれだけあるか? 4)もし休息用の場所が与えられていないなら、フクロウはどうやって休息しているのか?これに対して2017年3月、BBCから次の回答があった。ローテーションで、4羽それぞれが4日に1日休んでいる。アニマルスタジオは彼らが自由に動くことのできる人のいない場所をフクロウに用意している。かれらは1週間のうち約2日、人から隔離されている。部屋はバックヤードへ続いており、約10平方メートルの広さがある。それぞれのフクロウは一日二回、30分自然光のもとに置かれている。しかし、昨年11月以降、鳥インフルエンザ流行のために一時的に屋外での日光浴を注視している。それぞれのフクロウは、展示エリア外のエリアで1日2回飛行することができる。 このエリアは展示エリアの外の約20メートルの廊下である。BBCからの回答を見ると、日本のフクロウカフェなどの猛禽類の展示店とはかなり様子が異なることが分かる。一般的な店では、人や喧噪を避けて休息することも猛禽類には許されておらず、ましてや休息のためのバックヤードもない。オービィで必要とされているバックヤードは10㎡。つまり3.2m×3.2mくらいだが、そもそも集客のために人の多く集まる町の真ん中で開店されたフクロウカフェに余分なスペースを用意することは金銭的に無理だろう。 オービィの「ケアプラン」では1日2回のフリーフライト、1日2回30分の日光浴があるが、そのようなことを実施している店は皆無だろう。フクロウカフェや猛禽類の販売店では30羽もの猛禽類を一つ部屋に並べて展示しているところもあるのだ。すべてのフクロウにそういった福祉的な環境を整えることは物理的に不可能だ。なにより大きな違いは、オービィではフクロウの「触れ合い」が行われていないということだ。 客はフクロウに触ることはできない。しかし、アニマルスタジオを管理する株式会社Moffはオービィ以外にも複数のフクロウカフェを開いているが、そこではフクロウに「触れ合い」をさせている。なぜか?それはオービィとの取り決めでフクロウの触れ合いはしない、ということになっているからだという。オービィはSEGAとBBCの共同プロジェクトだが、おそらくBBCの求めるレベルが日本のそれより高かったということだろう。アニマルスタジオにおける動物の扱いはBBCが主導でやっているのだと推測される。なぜなら、SEGAとBBCの両方に「オービィでの動物利用廃止」を求めたわけだが、SEGAからは回答が無く、回答があったのはBBCだったからだ。 日本よりもはるかに動物福祉の考えの進んでいるイギリスだけあって、動物の扱いにより慎重だということが質疑の中で分かる。日本の一般的な猛禽類展示店よりはるかによい環境ではあるが、だからといって動物利用を認めるわけではない。拘束度合が高いことに変わりはない。 オービィにはフクロウの展示はもちろん、ウサギやハリネズミを利用した触れ合いなどの生きた動物の使用を廃止してもらうよう今後も要望を続けていく。 皆さんからも意見を届けてみてほしい。 BBCとSEGAの先進的な感性と技術をもってすれば拘束された動物ではない、本当の動物の姿を来場者に見せることができるはずだ。意見先オービィ横浜メール Orbi_Y_toiawase@sega.comSEGAメールフォーム https://sega.jp/contact/location/BBCメールフォーム(英語のみ) https://www.bbcworldwide.com/ContactWizard???????動物への配慮がおくれる日本今回BBCとのやり取りで、やはり日本は動物福祉の考えがおくれていることを感じた。 BBCのいう「エンリッチメントを含めた個別のケアプラン」など立てている展示業者は、国内にほとんどいないのではないだろうか。 最終的には動物の娯楽利用そのものを廃止しなければならないが、今すぐに廃止が無理ならば最低限の福祉が担保される飼育環境が整備されるべきだろう。 泳げる設備のない施設に閉じ込められているペンギン。狭い収容施設に閉じ込められて常同行動を続けるトラやクマ。羽を伸ばすこともできない狭いケージに閉じ込められている鳥類、体をまっすぐ伸ばすこともできない狭い容器に閉じこめられている爬虫類、原因が分からず死亡しても剖検すら行われず葬られる展示動物もいる。 日本の動物施設は問題が山積みだ。クリックして Twitter で共有 (新しいウィンドウで開きます)Facebook で共有するにはクリックしてください (新しいウィンドウで開きます)クリックして X で共有 (新しいウィンドウで開きます)Share This Previous Article犬猫以外の哺乳類・鳥類・爬虫類・両性類等のペットの災害対策 Next Articleニューサウスウェールズ州のガイドライン【魚類や甲殻類の人道的な捕獲、さばき方】 2017/10/07