八幡平熊牧場の熊の今後と課題

経緯

2012年4月24日に八幡平クマ牧場のクマ2頭が逃げ出し、飼育員2名を襲い食べ、その後射殺されました。
この凄惨な事故は、クマの餌不足、ストレス過多が原因と思われ、そもそもこの牧場の悲惨さ、環境のむごさが露呈しました。

クマたちは、そもそも北海道にいるべきで、本州にいるべき熊はないヒグマが中心で、その他のツキノワグマは、本州で有害獣駆除で親が殺されて行き場を失った子熊を、引き取る環境もないのに熊胆のために引き取っていたようです。
(引き取った八幡平クマ牧場とともに、引き取りを依頼した人間にも責任があります)

この痛ましい事故は、飼養能力のない経営者と不適切な施設による動物の飼養が大きな原因となっています。
さらに、大型の熊の飼育は、一般的な飼育知識だけでなく、クマの習性に基づいたエンリッチメント(環境エンリッチメントと行動エンリッチメント)を理解し対応することが求められます。このことが動物の福祉だけでなく、事故防止や、職員の安全性を担保することになります。
つまり、その理由が商売のためや、かわいそうだという感情的理由だけで、飼育延長および他施設への移動を判断するのは間違いです。
特に、痛ましい事故を起因としている今回の八幡平クマの処遇を移動するにあたっては、施設的な収容能力だけでなく、エンリッチメントのトレーニング、施設の改善が必須となるはずです。
海外の主だったクマに関する団体は明確にエンリッチメントがお紺われないのであれば安楽死をするのが福祉であることを明言し、要望をしています。

Alertis- fund for bear and nature conservation (アラティス:クマと自然保護の基金)
Animal Asia Foundation (アニマルズ・アジア・ファンデーション:アジア動物基金)
Free the Bears (フリー・ザ・ベアズ:クマの解放)
World Society for the Protection of Animals (世界動物保護協会)
Asian Animal Protection Network (アジア動物保護ネットワーク()
Animal Guardians (アニマル・ガーディアン)
Animal People (アニマル・ピープル)
Animal Concerns Research & Education Society (動物問題研究と教育協会)
Coexistence of Animal Rights on Earth (地球での動物の権利との共存)
Humane Society International (国際人道協会)
International Animal Rescue (国際動物救援協会)
International Fund for Animal Welfare (国際動物福祉基金)
Society for the Prevention of Cruelty to Animals, Hong Kong (香港動物虐待防止協会)

熊

しかし、その後、専門家の意見、動物福祉団体の意見などを踏まえ、安楽死処分を検討していたようですが、北秋田市が全頭を引き取ることを突如明言し、八幡平クマ牧場の熊は、全頭を北秋田市の施設「阿仁熊牧場」に引き取る方向性となっています。
なお、ツキノワグマ6頭は2012/11/7・8に移送され、そのうちの2頭がストレス性腸炎により死亡しました。
残るヒグマ20頭については、現阿仁熊牧場の隣接する土地に新施設を設置し、そこで飼育する構想です。
その費用は秋田県の予算から出される想定です。また、これまでのコンクリート式ではなく、現在の地形を生かしたフェンス式となります。
この阿仁熊牧場の視察をしてきました。

課題

ヒグマ

エンリッチメントは実現できるのか?

自然を生かした展示になるものの、ヒグマ20頭を収容するにはあまりにも小さすぎます。
また、環境・行動エンリッチメントは、施設の充実だけでは実現されません。多くのスタッフの雇用、スタッフのトレーニングも必要ですが、現在の阿仁熊牧場には3名の飼育員しかおらず、現状でもすでに不足しているものを、十分な数の確保が可能なのか疑問です。

現状のツキノワグマ施設はコンクリート式

約70~80頭の動物が、狭いコンクリート式の展示場に入れられています。環境エンリッチメントと思われるものはなく、観光客が餌を投げ込むというやってはならないことが行われています。冬眠はさせていることは良い点です。
すでに過密であるにもかかわらず、人寄せと研究のために繁殖を続けています。
さらに、現在すでにヒグマが1頭いるが、このヒグマは小さなコンクリートの檻のなかに閉じ込められています。
現在展示施設として機能させていますが、阿仁熊牧場の施設自体の意識の変革・方針の転換も必要です。

運営費はもつのか?

運営費が今までよりも多くかかることになります。
その施設を、熊の寿命である20年~30年、続けることは至難の業です。
これからが動物たちにとっては始まりです。

生かせという声を上げた一部の人々は、これから熊の寿命=20~30年、この施設を支え続ける義務があると思います。熊たちにとって、これから死ぬまでふたたび狭い中に閉じ込められるのですから、少しでも福祉的な施設(環境エンリッチメントと行動エンリッチメントが充実した施設)を目指すことは必須です。人を雇い、トレーニングをしなくてはこれは実現されません。現在は3名で約70~80頭を飼育していますが、これはただ管理するのみの飼育であり、エンリッチメントを取り入れることはこの人数では不可能です。さらにヒグマとなると、より飼育は難しいでしょう。
さらには、現在の阿仁熊牧場は赤字経営となっており、入場者数も減少の一途をたどっています。北秋田市の負担となっているわ
けですが、その負担は今後増えるのではないでしょうか?
施設の周辺は、昔から熊の狩猟をしてきたマタギの地域で、私たちがいった日も、近くの道の駅には生々しい血の付いた熊の手や肉が売られていました。
この施設をいかしていきたいのであれば、地域としての方向転換も必要であるのかもしれません。

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