アニマルライツセンターが制作したショートムービー『ブロイラーの50日 メイの見た世界』が、東京ビデオフェスティバル TVF2021アワードを受賞しました。知らせを聞いて、わたしたちはとても驚きました。日ごろからアニマルライツセンターの活動を支えてくれるみなさんとともに、今回の受賞を喜びたいと思います。この作品は昨年8月に、アニマルライツセンターが公式サイト上で『ブロイラーの50日 メイの見た世界』として公開した映像をもとに、3分間のショートムービーに再編集したものです。アニマルライツセンターは昨年から、動物に関する所蔵映像を、再編集し作品として広く発表する取り組みをしています。普段は動物のことを考えることがない一般の人たちにも、映像作品の鑑賞を通して、広く畜産の問題を知ってもらうという狙いがあります。3分間という短い映像ではありますが、ブロイラーの異様な成長や、メイたちヒナの痛み苦しみをじゅうぶんに伝える作品ができたとおもいます。とくに、出荷直前のメイが、満身創痍の姿で「希望はある」と気丈につぶやく場面を見て思わず泣いた…という、ある審査員の評価がありました。人間ならだれでも、食べものとなる動物にも哀れみを感じるのが、普通の感性なのでしょう。一方、畜産という産業に否定的な立場で制作することは、映像制作者として偏っているのではないかと監督自身の姿勢を問う、批判的な評価も受けました。本年度の東京ビデオフェスティバルは、コロナ禍でオンラインにて開催されました。多発する自然災害、原発、外国人労働者問題、教育など、旬な社会問題を素材にしたほかの映像作品に混ざって、わたしたちのブロイラーメイが並んだことには、動物の問題に注目が集まっている実感、ある種の誇らしさを感じました。さらに言えば、畜産動物の存在は、それらの社会問題と深く関わりがあり、問題をむしろ複雑化させる要因といえるのです。アニマルライツセンターの発信を、いつもチェックしているみなさんなら、自然災害や原発事故によって、畜産動物がどんな悲惨な目にあったかご存じとおもいます。また、日本人が働くことを嫌がる畜産の現場には、現在、多くの外国人学生が従事し、差別を受け、理不尽な扱いに傷ついていることが分かっています。さらに教育においては、子どもたちの健康な成長のために、オーガニック給食の導入が要望される時代になり、食材のアニマルウェルフェアが注目されますが、日本の遅れた畜産の現状が足を引っ張っています。このように畜産のあり方をあらゆる角度から考えることは、結局、社会の闇をズルズル引き出すことにつながります。畜産はこの社会の闇の一番深いところに存在して、今までのところ、あまり表に出ないまま、社会の陰を一層陰惨にする悪影響を及ぼしてきました。しかし今その闇は、アニマルライツの活動を通じて、じょじょに明らかになっています。国民みんなが畜産の真実を知ることで、隠し事のない社会、間違ったことを見て見ぬふりをしない社会が実現するでしょう。事実、昨年末から今年にかけて、バタリ―ケージをはじめとして、畜産動物の問題は大転換期を迎えています。これまでアニマルライツセンターは支援者に支えられ、その運動の最前線で活動してこれましたが、これからはより多くの、動物とは直接関係のない生活をおくる人々の心にも、何らかの手段で強く訴える展開をすべきときに来ています。その一つが畜産動物の問題を、「動物」という特殊な枠の中ではなく、人間社会が抱える問題の一つとして広く訴える映画活動だと思っています。アニマルライツセンターはこの受賞を契機として、動物のために映画ができることは何か?を模索しながら、少しでも畜産動物の苦しみと犠牲を減らす作品を、これからも制作していきたいとおもいます。クリックして Twitter で共有 (新しいウィンドウで開きます)Facebook で共有するにはクリックしてください (新しいウィンドウで開きます)クリックして X で共有 (新しいウィンドウで開きます)Share This Previous Articleアニマルウェルフェアの観点から平飼い卵を使うBARAQUEはケージフリー Next Articleベジフェス2021 畜産が環境に及ぼす影響を知ろう 2021/04/07