生きたまま、意識のあるイセエビをいきなり頭と腹部で真っ二つにして、また動いている状態で皿に盛るという「料理」は日本で珍しくありません。イセエビやカニを、生きたまま沸騰した熱湯の中に放り込むという方法も、一般的です。私たち日本人は、魚や甲殻類、頭足類(タコやイカ)などの動物の痛みや感情をないがしろにする傾向があります。このような感覚は日本人に顕著なのかもしれません。皿の上で足を動かすイセエビや、網の上で生きたまま動けないように串刺しにされ火にあぶられてもがくイセエビを眺めたり、クルマエビの皮を生きたままでむいて食べることを面白がるという人さえも、一部で残っているほどです。しかし諸外国は違います。ニュージーランド、ノルウェー、オーストラリアのいくつかの州は甲殻類、魚を動物福祉法の対象としている。(日本では、動物愛護管理法の対象動物になっていない)イタリアでは、最高裁判所が、ロブスターは殺される前に、レストランの厨房で氷で保管してはならないと裁定。裁判官は、生きている甲殻類を氷上に置いていたフィレンツェ近郊のレストランの所有者に、2,000ユーロの罰金(5,593ドル)とさらに3,000ユーロの法定費用を支払うよう命じた。レッジョ・エミリア(イタリアの都市)では、ロブスターを生きたまま煮沸した場合、495ユーロの罰金が科せられる条例が採択。スイスでは、ロブスターがまだ生きている場合、調理のために熱湯に入れることを禁じる法律が成立大手スーパーのテスコ、ウェイトローズは、甲殻類を殺す前にスタニング(気絶処理)すると約束。イギリスでは多くのメジャーなレストランが殺す前に電気式の気絶をさせる装置を使用。2021年7月、イギリスで既存の動物愛護法で対象とする「動物」の定義について、甲殻類や軟体動物も含むべきという旨を明文化した「動物福祉(感覚)法」の審議が行われている。この法案が成立すると、ロブスターやタコを気絶させずに茹でる行為などが禁じられる可能性がある。イギリスがロブスターやタコをそのまま茹でる行為を禁止する可能性、「甲殻類や軟体動物も動物愛護の対象とすべき」という新法により gigazine国内でもまったく動きがないわけではありません。エビ養殖場では、繁殖用メスのエビが、そのほうが繁殖性が高まるという理由から麻酔なしで片目が切断されていますが、国内においてもこの行為を廃止しようとする動きが始まっています※より詳細な魚や甲殻類への虐待の規制・裁判などについてはコチラをご覧ください。甲殻類が味わう痛みと苦しみ欧州食品安全機関(EFSA)から委託された科学者は、知見に基づいて、十脚甲殻類(カニ、ロブスター、ザリガニ、エビなど)は痛みを感じる可能性があるため、それに応じて福祉を管理する必要があると結論付けました。EFSA(2005)「Opinion of the Scientific Panel on Animal Health and Welfare (AHAW) on a request from the Commission related to the aspects of the biology and welfare of animals used for experimental and other scientific purposes」オクスフォード大学ベーカー博士「甲殻類の感覚器官は高度に発達しており、神経系は複雑である」甲殻類は、記憶し、不快な刺激を避けることを学ぶ認知能力を持っている。Elwood RW & Appel M (2009). Pain experience in hermit crabs? Animal Behaviour 77:1243-1246./Elwood RW Barr, S & Patterson L (2009). Pain and stress in crustaceans? Applied Animal Behaviour Science 118:128-136./Magee B & Elwood RW (2012). Shock avoidance by discrimination learning in the shore crab (Carcinus maenas) is consistent with a key criterion for pain. Journal of Experimental Biology 216:353-358.生きたまま茹でられるカニやロブスターはのたうつ、四肢を抜け出そうと動かすなどのストレスと言われる行動をとる。RothとØinesは生きたままカニをゆでるという行為は3分にわたる痛みを与えると推定 (Roth, B. and Øines, S., 2010. Stunning and killing of edible crabs (Cancer pagurus), Animal Welfare, Volume 19, Number 3, August 2010 , pp. 287-294(8). Universities Federation for Animal Welfare.)。英国獣医師会は、ロブスターを生きたまま沸騰した湯に入れた場合、殺すのに最大15分かかる可能性があるとして、甲殻類が知覚力があることを示す最新の科学的証拠を踏まえ、殺して調理する前に気絶させることを義務付けるよう要求( British vets launch battle to stop lobsters being boiled alive after scientific evidence finds the creatures DO feel pain and chefs are urged to stun them before they are killed )生きたままで、カニやロブスターを沸騰したお湯に入れると、手足を落とす(自切)ことが知られている。ある調査はすべてのカニが沸騰中に足を失ったと報告。( Welfare during killing of crabs, lobsters and crayfish )カニやロブスターで観察されるストレス行動には、逃げようとすること、むち打つ、自切(自分で手足を切る)などがある。自切は、体の残りの部分へ有害な刺激の広がりを止めるために、手足または他の体の部分が動物自身によって切られる行動反応。オーストラリアのカニの殺害方法の研究では、カニが手足を落としたり、肢や腹部を引き裂いたり、緊張して硬直したり、筋肉のけいれんを起こしたりした時は、痛みを引き起こしていると判断された。( Welfare during killing of crabs, lobsters and crayfish )Experimental Biologyのジャーナルに掲載された2013年の研究は、カニが痛みを経験することを示す。この研究を主導したクイーンズ大学のベルファスト教授のボブ・エルウッド教授は、有害刺激に対するカニの反応は「すべての痛みの基準に適合している」と指摘。(Further evidence crabs and other crustaceans feel painBy Rebecca Morelle Science reporter, BBC World Service 17 January 2013)触覚に刺激物を塗られたエビがどのような反応をするかの実験では、刺激物を塗られたエビは、尾部を打つ反射反応のほかに、なんども触覚をつくろう仕草をみせ、水槽の壁に触覚をこすりつける場合もあった。研究者はこのつくろったりこすりつけたりする反応は反射反応ではなく、長く続く痛みをエビが経験しているからだ、と主張する。(『魚は痛みを感じるか』ヴィクトリア・ブレイスウェイト)ヤドカリが殻にいるときに電撃を与えられたらどうなるかという実験では、電撃を与えられたヤドカリはすぐに殻から出てくるが、気に入った殻にいるときは、その殻にいることで電撃を受けても、長く殻の中にとどまろうとした。(『魚は痛みを感じるか』ヴィクトリア・ブレイスウェイト)カニは、以前に感電したことがある場所を避ける、またザリガニは光の信号とショックを関連を学習し、ショックを回避する方法を学んだ。Evidence for pain in decapod crustaceansヨーロッパミドリガニは一般的に明るい場所を避け、岩の下などの暗い環境に隠れることを好む。1つは明るく照らされ、もう1つは暗いという2つの部屋を用意すると彼らは暗い部屋を選択する。 しかし、暗い部屋に軽いショックを与える装備をしたとき、カニたちは通常は避ける明るい部屋を選び始めるようになった。試行回数が増えるにつれて、カニはますます明るい部屋を選択するようになった。01 FEBRUARY 2013 Shock avoidance by discrimination learning in the shore crab (Carcinus maenas) is consistent with a key criterion for pain 2021年の研究では、ザリガニは、有害な刺激を避けるために、長期にわたって行動を変えることが分かった。青く照らされた出口と白く照らされた出口をのある十字迷路にザリガニを置いたところ、ザリガニは青い光に向かっていった。次に、ザリガニが青く照らされた出口に向かった時に電気ショックを与えると青い出口を避けるようになった。トレーニング[青く点灯した出口に向けて感電を与える]を3回行った場合、長期記憶は少なくとも48時間保持されたが、一回のトレーニングでも長期記憶が形成された。15 MARCH 2021 Aversive operant conditioning alters the phototactic orientation of the marbled crayfish甲殻類をできるだけ苦しめずに殺す方法はこちらをご覧ください。ドイツの医師エルヴィン・リークは「ある医師の見解」の中でつぎのように述べています。「ある水族館で、一匹の大きなエビが仰向けにひっくり返って、その重い甲羅のために姿勢を直すことができなくなる。仲間が救助に駆けつけ、いろいろとやってみて、うまく立たせることができるようにする」*甲殻類も私たちと同じように社会生活を営み、痛みを感じ、感情があります。カニやエビの人道的な殺し方は、電気式衝撃(感電死:できるだけ苦しませずに殺せる可能性の高い方法は今のところこれしかありません)後→中枢神経を破壊→茹でたり解体する、という方法です。しかし日本でこのような方法は皆無です。かれらは意識のあるままで解体され、茹でられ、イセエビは前半分(頭胸部)と腹部の間でナイフを使って切断されてさらに盛り付けられます。中枢神経系が破壊されていないため、イセエビは死ぬまで皿の上で痛みに苦しみます。彼らは私たちと同じ地球の生き物です。これほどまでに苦痛を与え、痛めつけた「料理」が本当に必要でしょうか?逃げられないように網で尾が固定されています酒をそそいて火を点ける生きたまま蒸す生きたまま動けないように鉄串にさして焼く(口あたりから鉄の串が出ているのが分かります)生きたまま鉄板の上で焼く生きたまま下半身と切り離して皿に盛る*「罪なきものの虐殺」ハンス・リューシュから引用クリックして Twitter で共有 (新しいウィンドウで開きます)Facebook で共有するにはクリックしてください (新しいウィンドウで開きます)クリックして X で共有 (新しいウィンドウで開きます)Share This Previous Article鶏を殺す補助金制度変更で、大手鶏卵企業は多額の金を得る Next Article甲殻類(ロブスター/イセエビ/カニ等)をできるだけ苦しませずに殺す方法とは?茹で殺し、焼き殺し、上半身と下半身の分割は論外 2021/01/30