魚を生きた状態でさばき、客に提供する活造り。皿の上に載せられてもなお口を喘がせエラを動かし、身をはねらせる様子をみせるパフォーマンスとして、現代もなお国内の料理店で提供しているところがあります。脳を破壊するなどの気絶(意識の喪失)処理なしで、解体した場合、魚の種類によって異なりますが、死(窒息死)に至るまでの時間は内臓をのぞいた場合:25〜65分内臓を残した場合:55〜250分です*。上記の動画は「うずしお温泉 旅館 うめ丸」を訪れた客が動画サイトにアップロードしているものからリンクしています。日本も加盟するOIE(世界動物保健機関)は「養殖魚を殺す際は、即時かつ不可逆的な方法で意識を喪失させなければならない」と人道的な殺し方の基準を定めており、その方法の一つとして、スパイクなどを脳に挿入して脳を物理的に壊す方法が挙げられています。しかし当旅館ではそのような意識の即時喪失というやりかたがとられていません。当該旅館に対しては電話や文書で非人道的な屠殺方法の廃止を求めていますが、2016年11月27日時点でまだ回答いただけていない状況です。 反射なのか?魚が皿の上で動いている様子を見て「ただの反射だ」という声もあります。しかしスパイクなどで脳を破壊する、脊髄を切断する、などの神経回路のシャットダウン、放血を伴わない活造りでは、死ぬまでに時間がかかるため、その間魚は脳で苦痛を感じます。魚が感じる痛み日本人の多くは魚は痛みを感じないと思っているかもしれません。しかし魚には近年、体へのダメージをキャッチする侵害受容体があり、そのダメージに対して人と同じように苦悩するという数多くの証拠が見つかっています。たとえば毒を投与されたマスの行動観察では、マスはエラの開閉速度が上昇させ、時折突進するような異常な動きを見せ、食欲も低下させるなど、通常とは違う行動をとります。水槽の中に見慣れないレゴブロックの塔を入れ、毒を投与されたマスがどのような反応を示すか調べる実験では、投与されていないマスはレゴブロックの塔を警戒し近づくのを避けたのに対し、投与されたマスのほうはレゴブロックの塔のかなり近くまで泳いでいき、それに注意を払う様子が見えなかったことが観察されています。これは私たちが頭痛がするとき、勉強に集中することができなくなることと似通っています。(参照「魚は痛みを感じるか?」ヴィクトリア・ブレイスウェイト)魚の痛みについての詳細はコチラをご覧ください。皿の上でピチピチ跳ねる=新鮮=旨い のか?「活きがいい」といって喜んでいる客もいるようですが、魚のうまみが増すのは死後数時間たってからであり、最近の「味」を主張する料理店では、“活け造り”を売りにするお店は少なくなっているようです。そもそも即死をともなわない「活け造り」は死に至るまでの魚の苦痛度が高くなります。魚に限らず豚も牛も鶏も、屠殺前に苦痛を感じると「味がまずくなる」ことが科学的に明らかになっています。フランスのいくつかのミシュランの星付きレストランでは日本の技術である”イケジメ(スパイクなどですばやく魚の脳を破壊し意識を消失させ、血抜きをする方法)”された魚が使用されています。アメリカでもいくつかのレストランがイケジメの技術を取り入れるようになっています**。「魚の苦しみを取り除くのが早ければ早いほど、肉質が向上する」ことが認識されつつあります。活け造りというパフォーマンスは、他者への配慮の意識が高まりつつある近代に似つかわしいものとは言えません。今後、命で遊ぶかのようなこのパフォーマンスは、人々から受け入れられなくなってくるはずです。* humane slaughter Processing of wild-caught fish alive when landed** How to Kill a Fish Words by Cat Ferguson Illustration and animation by Diana Marques クリックして Twitter で共有 (新しいウィンドウで開きます)Facebook で共有するにはクリックしてください (新しいウィンドウで開きます)Share This Previous ArticleVICTORY! 最後のミンク農場閉鎖!国内毛皮生産は0に。 Next Article野生動物の殺され方-ワナ 2016/11/27