千葉県睦沢町「道の駅むつざわ」花木販売コーナーには、金魚やメダカの販売があります。ここでは魚たちがビニール袋にいれられて販売されています。とくに「らんちゅう」という金魚の一種は、体全体を覆う水も無い少ない水量のビニール袋に1匹で入れられていました。この販売方法ではもちろんエサを与えることもできませんし、水を替えることもないでしょう。糞の量を見ると、金魚がこの中に閉じ込められているのが1日程度ではないことがわかります。もちろん隠れる水草などもありませんし、なんとかしてこの環境から逃げようとするのか、あるいは少しでも水が溜まっている場所を求めるのか、金魚は袋の端にとどまり動きませんでした。観賞魚をビニール袋にいれて販売することに、わたしたちは以前から反対しています。(カインズへの意見)水槽にいれるより魚の体がよく見えるように、あるいは消費者が手に取りやすいようにという意図だと思われますが、アニマルウェルフェアの観点から廃止すべき販売方法です。この件についてアニマルライツセンターはいすみ市と「道の駅むつざわ」双方に意見をしていますが、すぐに改善できないのには2つの理由がありました。1、販売管理責任がさだかではない「道の駅むつざわ」の土地建物の権利は睦沢町にあります。そのため当初アニマルライツセンターはは睦沢町に観賞魚販売方法の改善を意見しました。ところが、不動産的には睦沢町のものだが、維持管理運営は民間事業者に委託している。そのため町には改善に際して、権限がないので委託先の民間業者に話してほしいと言われました。この道の駅内にはウェルネス住宅もあり、それらは町営なのですが、直売所運営は委託しているということです。さらに町の担当者に、町にとっての観賞魚販売の意義を問うと、「とくに当地の名産ということもなく、2年前、道の駅がリニューアルする前から、地元の人たちによって販売されていたことの名残ではないか。道の駅出荷協議会という組織があるはずなので、そちらに相談したらどうか」ということでした。睦沢町担当者に促されたので、次に道の駅内の販売担当者に連絡をとりました。すると今度は「金魚は民間人が繁殖して、道の駅で販売している。繁殖している人は町内にも町外にもいる。金魚の販売パッケージは繁殖者がやっているので、道の駅は販売場所を提供しているだけだから口出しはできない」この担当者には、道の駅出荷協議会に関しても、さらには運営している企業の名称も教えてもらえませんでした。なにより生き物を扱う責任についての理解は極めて低いと言わざるをえません。日本中で人気の道の駅ですが、人気の理由のひとつが生産(制作)者直売ということです。農産物などが生産者が決めた価格で販売されるため、市場より安価に入手できる仕組みです。野菜などはそれでよいかもしれませんが、生き物の場合はどうでしょう。すくなくとも売り場には動物の扱いを熟知した担当者を置くべきではないでしょうか。2、販売担当者に知識がない道の駅販売担当者とのお話の中で「ではどうすればよいのか?」と聞かれました。金魚は養殖魚ですから、OIEの基準があてはまります。OIE水生動物衛生規約 第7章、養殖魚の福祉の導入へ向けた序論7.1.1条「魚類を利用するにあたり、利用される動物の福祉を最大限に確保するための倫理的責任が求められる」などが該当すると思われます。しかし、今回お願いしたのはそのようなレベルのお話ではありません。「販売されている金魚の水が足らない。体が水面から出てしまっているからなんとかしてほしい」ということです。水が足らないのは客として売り場を見てもすぐにわかる状況でした。当売り場は何度も確認していますが、いずれも同じ形態の販売でした。道の駅担当者によると、金魚の販売パッケージは繁殖者が行っているということですから、今回改善できるのはその繁殖者なのですが、道の駅や睦沢町も販売する商品に関して一定のルールを定める必要があるとおもいます。とくに生体販売に関しては、販売方法を慎重に規定するべきですし、何らかの事情で規制が無理なら、その場所での生体販売は廃止すべきです。運営業者や道の駅出荷協議会が必要としてくれるなら、アニマルライツセンターは改善のサポートをしていきます。OIEは「養殖魚の福祉の改善はしばしば生産性を向上させ、その結果経済的利益につながる」と、養殖魚のアニマルウェルフェアが生産性や経済利益を高めることを指摘していますが、販売関係者にそこまでの認識がない、収益に対しビジネスとしての期待値もない場合、むしろ扱われる魚たちは水さえ与えられない環境になる恐れがあることを、わたしたちは懸念しなければなりません。道の駅むつざわの金魚の販売の仕方は、もし死んでしまっても大した損害だと感じさせない販売方法です。生体販売は過度に儲けようとしても問題だし、そこまで儲けようとしないと今度は命にかかわる無関心につながる恐れがあるということです。コロナ禍が一段落し、人々の生活に行楽の楽しみがもどってきた今、みなさまが各地にお出かけの際は、おみやげものとして生体販売される動物たちを意識してください。魚類は鑑賞用以外、食用でも生体が不適切に販売されるケースがあります。そのような状況を見かけたら、動物たちのために意見をしていきましょう。OIE水生生物に関する規約についてはこちらOIE水生動物衛生規約 第7章 養殖魚の福祉(日本語訳)クリックして Twitter で共有 (新しいウィンドウで開きます)Facebook で共有するにはクリックしてください (新しいウィンドウで開きます)クリックして X で共有 (新しいウィンドウで開きます)Share This Previous Articleレンコン畑野鳥被害 茨城県と話し合い報告 Next Article窓の外にいるコウモリは駆除してよいか? 2023/04/14