アニマルウェルフェアの必要性>活動家向け畜産動物のアニマルウェルフェアについて企業との交渉をし、市民意識向上のための啓発をし、政治家にロビー活動をしていますが、アニマルウェルフェアについて反対したり不要だという人はいない。だが、残念ながら2つの層からの批判や反対意見をもらうことがある。一つは動物虐待層といえる動物はどうでもいい、他人はどうでもいい、むしろ傷つけることに興味があるとするような人たちだ。もうひとつが、廃絶主義と呼ばれる人たちだ。これはゲイリーフランシオンという学者が唱えた分類だ。廃絶主義の主張は理論的にまっすぐだが、現実的ではないという問題を抱えている。近しい存在なだけに、批判され苦しい思いをする仲間もいるが、考え方が異なることを理解しておくとスッキリするだろう。動物保護運動にはさまざまなアプローチが存在するが、世界の主要な動物保護団体の多くは「廃絶主義(Abolitionism)」ではなく、「アニマルウェルフェア(Animal Welfare)」の改善を重視している。これは、動物の苦しみを即座になくすことが困難な現実に対応しつつ、長期的に畜産の縮小と動物の権利向上を目指すためである。廃絶主義が採用されにくい理由廃絶主義は、すべての動物利用を即時廃止することを求めるが、畜産産業の規模と社会経済的な影響を考えると、このアプローチは現実的ではない。例えば、世界では毎年850億頭以上の畜産動物が飼育・消費されており、水産動物の数に至っては計測不能なほど多い。このような状況で「今すぐ全廃」を求めても、多くの人々の共感を得ることは難しく、政治的にも受け入れられにくい。また、歴史的な社会変革の多くは、段階的な改革を通じて実現してきた。奴隷制度の廃止や女性の権利運動も、まずは待遇改善や部分的な権利獲得から始まり、最終的に制度全体の変革へとつながった。動物保護運動も同様に、現実的な改善を積み重ねることで、長期的な意識改革と制度の変革を目指すべきである。主要な動物保護団体の例【World Animal Protection】WAPは、動物の扱いを段階的に改善することを重視しており、特に畜産動物の福祉向上に力を入れている。たとえば、鶏のケージ飼育の廃止を促進し、代替のケージフリー飼育への移行を支援している。これにより、何億もの鶏がより良い環境で飼育されるようになった。【Animal Equality】この団体は、動物福祉の基準を引き上げることを目的とし、企業や政府との協力を通じて、畜産動物の扱いを改善する取り組みを行っている。例えば、多国籍企業と連携して、動物福祉の基準を満たす製品のみを使用することを推奨する政策を進めている。段階的なアプローチが有効な理由段階的な改革を採用することによって、動物福祉の改善と同時に、畜産業界全体の変革を促すことができる。社会的受容性の向上急進的な廃絶主義は、一般の消費者や政府の支持を得にくいが、動物福祉の向上は受け入れやすい。すべてを否定することにより最初から拒絶されるやすく、この事により動物への正しい理解を得ることが難しくなる。一方、アニマルウェルフェアを学び、配慮することで動物本来の習性や感情、個性を知ることになり、これは消費削減に繋がる可能性が高い。まずは「より良い扱い」を求めることで、動物に対する意識を変えていくことができる。畜産業界への圧力動物福祉基準の向上は、卵や鶏肉の場合はの生産コストを増加させるため、長期的には畜産の縮小につながる。(外国産に切り替えることでコストを減らすことが可能だが現在の飼育を改善しようとするとコスト増になる)企業の倫理的責任を追及し、企業がアニマルウェルフェア製品を調達し持続可能な代替食品(培養肉、植物性食品)の導入を促進するとなれば生産者は動かざるを得なくなる法制度の確立動物福祉の法制化が進むことで、強制力のある規制が導入され、動物の扱いが大幅に改善される。例えば、EUのように段階的に畜産動物の福祉向上を進めることで、持続可能な変革を実現できる。チャンスを逃さない世界の動物保護団体が廃絶主義ではなく段階的な改革を選択するのは、現実的な成果を上げるためである。畜産動物の数が膨大であり、肉食の文化が根強く残る中で、「今すぐ全廃」という主張は実現可能性が低く、かえって動物保護運動の信頼を損なうリスクがある。一方で、動物福祉の向上を進めることで、動物の苦しみを減らしながら、社会の意識を変えていくことができる。このアプローチは、歴史的な社会変革と同様に、段階的なプロセスを通じて最終的な制度改革へとつながる。実際に動物を救うためには、現実的で効果的な戦略を採ることが重要だ。そして、なによりも、動物の苦しみを減らすことができるチャンスをのがしてはならないのが動物保護団体だ。チャンスを逃さないために、私達は柔軟で、でも内側には芯の通った戦略を考え続けたい。クリックして Twitter で共有 (新しいウィンドウで開きます)Facebook で共有するにはクリックしてください (新しいウィンドウで開きます)クリックして X で共有 (新しいウィンドウで開きます)Share This Previous Article環境大臣に陳情:食鳥処理場、どうにかしてください Next Articleひかり 2025/03/14