最近のメディアでは、米の価格高騰の話題を聞かない日はありません。この米の価格高騰と、わたしたちが活動する卵の価格の問題とは、共通する点が多いことをご存じでしょうか。卵の高値のポイント・行き過ぎた成鶏更新空舎延長事業・鳥インフルエンザ 2024年から2025年初めにかけて、約841万羽が殺処分・飼料価格、エネルギーコストの高騰 卵の価格の6割が飼料価格・流通コスト増・飼料会社、卸売会社、流通・小売業者のマージン固定・インバウンド増による外食産業、ホテル業の卵需要増 参考:米の高値のポイント・行き過ぎた減反政策・天候不順、気候変動で不作・国の在庫管理ミス 国の備蓄米放出の出遅れ・流通コスト増・農協の中間マージン固定・輸出増と円安 円安によって海外需要が増える以上、2つを並べてみると、卵と米、その高値の背景にある3つの共通項が見えてきます。1環境要因 気候変動、感染症2政策要因 生産調整が生産力と意欲を奪いすぎた。なおかつ安定策を誤った。3市場要因 外国人需要の高まりを受け止めきれない行き過ぎた生産調整に疑念なかでも今、問題とすべきなのは2です。行き過ぎた減反政策で人生を変えられた。減反に応じないと農業をつづけられないところまで追い詰められたという当時の心情を、今になってメディアで吐露する米生産者が目立つようになりました。この減反については多くの日本人が知るところだとおもいますが、採卵鶏の命の生産調整、成鶏更新空舎延長事業については、ほとんど知られていないのが実情です。いまの卵高値の最大の要因は、2024年からの鳥インフルエンザ問題ですが、そのさなかにあっても採卵鶏を殺処分する成鶏更新空舎延長事業は行われていました。令和6年5月13日 一般社団法人 日本養鶏協会の速報には「令和6年5月13日時点の鶏卵の標準取引価格(日ごと)が195円/㎏と、安定基準価格202円/㎏を下回りましたので、成鶏更新・空舎延長事業が発動になりました」とあり、この時期に生産調整が入り、応じた生産者には支援金や補助金が支払われたことがわかります。卵不足はこの後深刻になり、いまの高値へとむずびついていくので、一時的な取引価格調整として発動されるこの事業は、動物に対して残忍な事業であるだけでなく、政策的にも適正といえるのかどうか、はなはだ疑問が残ります。動物と生産者の自由と未来行き過ぎた生産調整は生産者の能力と意欲を奪います。農業、畜産業という性質上、国に管理されたくてこの仕事を始める人は少ないはずですが、卵にしても米にしても、出荷ルールが一定数を一定規格で生産しつづけなければならないと硬直的で、さらに価格の決定権が生産者側にない理不尽さがあります。本来、卵も米も価格は生産者が自由に決めるべきですが「売る自由」はあっても「価格交渉する自由」がないのが現状なのです。本来は、売りたい価格と買いたい価格のバランスがとれいていることが、生産者の経営と消費者の生活を安定させる要因です。これを「市場の均衡」といい、社会持続性の基盤となります。「卵10個350円で売りたい」という生産者と「卵10個350円で売りたい」買いたいという消費者の、力のバランスがとれていることが持続性を支えるのです。もちろんその時々に上がったり下がったりするのが価格ですが、バランスがとれていれば自然とみんなが「ちょうどよい状態」に戻っていきます。卵に関しては、平飼い卵は生産者が売りたい価格をつけ、買いたい消費者が購入する上でバランスがとれています。しかしバタリーケージ卵は市場で価格操作して今の安すぎる価格に押しとどめられています。卵にしても米にしても、国や機関が価格を操作する現状は「不均衡」であり、この状態が長く続くことで、消費者は不自然に安い値段でしか買わなくなり、生産者は意欲を失います。市場自体にもゆがみが蓄積するから、なにかをきっかけに突然の大きな価格変動が起こることもあります。それが今、米の流通で起こっていることで、米の現価格は、生産者にとっても「高すぎ」で「生産者も消費者も、共倒れを引き起こしかねない」状況だといいます。米の価格の暴走のようなことが卵の価格にも起こらないとはいえません。アニマルウェルフェアの理念は「5つの自由」と表現されますが、動物の自由を意識することはすなわち、人間の社会や経済の自由を守ることにもつながります。あるべき姿の農業、畜産業であれば、後継者問題も解消され、持続性が生まれます。ケージ卵の価格といういびつな現象を是正するためにどうしたらよいか。私たちの提案は、アニマルウェルフェア、つまりケージフリー農家を拡大していくことに、その鍵があると主張し続けます。クリックして Twitter で共有 (新しいウィンドウで開きます)Facebook で共有するにはクリックしてください (新しいウィンドウで開きます)クリックして X で共有 (新しいウィンドウで開きます)Share This Previous Article毛皮の輸入、少しづつの減少:それでもまだ189,639頭が犠牲に No Newer Articles 2025/04/28