2023年6月、フランスのパリがネズミとの共存の道を探りはじめたと報道された。どの国でも”害”のある動物だとみなされ、迫害を受けてきたと同時に、人間の知恵を上回る生存能力を披露してきたネズミたち。パリの市長は方針を転換し、平和的共存の道を探ることとした。そしてその共存の方法をプロジェクトを立ち上げた研究者たちが研究している。さて、そんな大きな動きが出てきたネズミと人間の攻防だが、アニマルライツセンターではずっと残酷な粘着罠や殺鼠剤の廃止を呼びかけてきた。とくに粘着罠は複数の国や地域で禁止されている。最近では2023年4月にカリフォルニア州ウエストハリウッド市が禁止を決めたところだ(1年後に施行)。世界の傾向世界は、今、ネズミの殺害をしても効果がないことを認めている。ある場所に生息しているネズミを殺害しても、別のネズミの餌場を確保するだけであり、結果的にずっと変わらないことになるのだ。これは、カラスや鹿などでも同じだ。また残酷な罠を排除する方向にもある。アニマルウェルフェア上、よりマシな方法をさきに検討をするのは当然の事となっている。オックスフォード大学2022年2月の研究*1では、以下のような分類がなされた。アニマルウェルフェア上最悪の評価がされているもの粘着トラップ抗凝固剤の毒餌コレカルシフェロールの毒餌セルロースの毒餌アニマルウェルフェア上比較的マシな評価がされているもの箱罠で捕獲し脳震盪で殺処分高品質のスナップ トラップを適切に使用した場合画期的な解決策?!繁殖制限犬猫ではもはや義務化されている繁殖制限は、ネズミに対してはほぼ行われてこなかった。まさに古いようで新しい方策の成功事例が出始めている。野生のネズミにそんな事できないだろうなんて笑っている場合ではない。世界はどんどん進んでいるし、課題解決をしようとすれば、思考停止せずにあらたなイノベーションを生み出さなければならないのだ。先に言っておくと、下記の画期的な製品は日本ではまだ販売されていない。ContraPest®オスの精子の生存率を低下させ、メスの卵胞の老化を誘発。これは、早期閉経のようなものだという。個体数が減少するまでには少し時間がかかるが、人道的であるというメリットがあり、ネズミの縄張りを乱すことなく (繁殖能力の衰えたネズミが定着し、縄張り間の移動を防ぐ)、より優れた長期的に維持ができるペストコントロール方法だ。すでに米国では広く使用されており、製造元である Senestech はニューヨークやワシントン DC などの都市と契約を結んでいるとのこと。まさに、ネズミとの攻防のゲームチェンジャーになりそうである。動物を殺すことに費やす費用も、科学の力も、教育機関の時間も、こういうより人道的で明るい方向に発揮してほしいものだ。もし企業でこのような製品に興味を持たれたら、ぜひ日本での販売にこぎつけていただきたいと思う。私達もそのような働きかけを少しづつだが始めている。*1 S.E. Baker, M. Ayers, N.J. Beausoleil, S.R. Belmain, M. Berdoy, A.P. Buckle, C. Cagienard, D. Cowan, J. Fearn-Daglish, P. Goddard, H.D.R. Golledge, E. Mullineaux, T. Sharp, A. Simmons, and E. Schmolz. 2022. An assessment of animal welfare impacts in wild Norway rat (Rattus norvegicus) management, Animal Welfare, 31: 51-68 https://www.ufaw.org.uk/press-releases/study-reveals-common-methods-of-rat-control-often-fail-to-consider-animal-welfare-impactsクリックして Twitter で共有 (新しいウィンドウで開きます)Facebook で共有するにはクリックしてください (新しいウィンドウで開きます)クリックして X で共有 (新しいウィンドウで開きます)Share This Previous Article放し飼い卵を使ったメニューがウリのカフェ、海辺のテーブルエッグはケージフリー! Next Articleブラジル:炭素排出制限の新規制から農業分野を抜かす見込みか 2023/09/06