茨城県のレンコン田(蓮田・ハス田)で使用される天井型防鳥網(天井網のみ、天井網+四周網の完全防備型天井網を含む。以下同じ)は、無差別に野鳥をからめとり、宙づりにしてしまいます。野鳥は長時間、逃れようともがき、翼や足を骨折し、衰弱し、死に至るか、生きたままでカラスや猛禽類などの捕食者に食べられることもあります。(問題の詳細はコチラをご覧ください)レンコンの生産に、天井型防鳥網はどうしても必要なのでしょうか?下は天井型防鳥網です。レンコン田の周囲に鉄の支柱をたて、高い位置に網(黒く見えるのが網)が設置されます。天井型防鳥網 茨城県レンコン田 2021年2月網目は17㎝程度と大きいものになっています。そのため野鳥は離水時に頭が通り抜けても羽が絡まったり、胴まで通り抜けても足が絡まったりして、羅網し、網から逃れることができなくなってしまいます。離水時だけでなく、田に着水しようと空から降りて来た野鳥の体の一部がからまり羅網することもあります。網目が17㎝と大きいものでなければ、たとえば2㎝などであれば、体の一部が網目に入り込むこともなく網に絡まることもないでしょう。にもかかわらず17㎝などという粗い網目にしているのには理由があります。網目が細かければそれだけ網が重くなり、周囲の支柱で支えられなくなります。また風の抵抗を受けやすくなり飛んだり支柱ごと倒れたりしてしまいます。それを避けるため、17㎝ほどという粗い網目が採用されている理由です。天井型防鳥網 茨城県レンコン田 2020年11月上の写真は天井型防鳥網にからまって死んでいる鳥たちです(2020年11月撮影)。このように天井型防鳥網は野鳥を多数犠牲にすることで成り立っています。茨城県霞ケ浦・北浦では2カ月余りで多い時には2千羽にものぼる鳥類が死んでいることもある*そうですが、アニマルライツセンターはもっと多くの野鳥が犠牲になっているのではないかと推定しています。なぜならレンコン田の生産者が死体をはずすこともあり、それらについては外部の者がカウントすることができないからです。茨城県レンコン田の傍の畔に捨てられていた死体 2021年1月天井型防鳥網にかわる、直置き網結論から言うと、天井型防鳥網は必須のものではありません。それ以外の方法でレンコン田を管理している生産者たちがいることが、それを証明しています。以下の写真は、野鳥の羅網問題に長年取り組んできた野鳥の会の働きかけで、直置き網が増えている地域の写真です。この地域では広範囲に直置きが使用されていました。(直置きが使用されているレンコン田は、この写真がすべてではありません)見えづらい写真もあるかもしれませんが、オレンジ色の部分が直置き網です。下の写真は次のシーズン用の種レンコンにするためか、一部収穫が終わっていない部分に直置き網が使用されています。収穫が終わっていない部分にだけ設置された直置き網(以下3枚は同じレンコン田)収穫が終わっていない部分にだけ設置された直置き網 2021年2月茨城県小美玉市収穫が終わっていない部分にだけ設置された直置き網 2021年2月茨城県小美玉市以下の写真も直置き網です。周囲に高い鉄の支柱が立っています。このように天井網型防鳥網用の鉄柱がありながら、直置き網を採用している田があちこちで見られました。これは以前は天井型防鳥網を使用したけど、直置き網に変更したためと思われます。この日、現地にいたある生産者は「うちも天井網を減らしている」と言っていました。直置き網 左の田は網をくくり付ける周囲の支柱が高い。以前は天井網を使用していたと考えられる 2021年2月茨城県小美玉市見えづらいが直置き網 網をくくりつける周囲の支柱が高い。以前は天井網を使用していたと考えられる 2021年2月茨城県小美玉市直置き網 網をくくりつける周囲の支柱が高い。以前は天井網を使用していたと考えられる 2021年2月茨城県小美玉市直置き網 2021年2月茨城県小美玉市直置き網(下の写真と同じ場所から撮影) 2021年2月茨城県小美玉市直置き網 2021年2月茨城県小美玉市天井型防鳥網は上述した理由により17センチ程度の網目のものが使用されますが、直置き網の場合は天井型防鳥網のような懸念は少ないため、使用されている網目は4.5㎝のものがよく見られます。レンコン田の上に直に置くため、野鳥が入り込んだとしても離水時に網に絡まるということは起こりません。地面からネットまでの距離が短すぎるため、野鳥が飛び上がった時に絡まるほどの推力が出せない*からです。この地域では、直置きのレンコン田があちこちで見られます。とはいえ、まだ天井型防鳥網を使用しているレンコン田もあります。そこでは、野鳥たちが絡まって宙づりになっていました。一つのレンコン田で4羽が宙づりになっているところもありました。しかし、この日、この地域で見て回った直置き網(ベタ置き)のレンコン田では、絡まっている野鳥は一羽もいませんでした。直置き網 2021年2月茨城県小美玉市この地域では、直置き網が広範囲に使用されています。直置き網(下の写真と同じ場所から撮影)2021年2月茨城県小美玉市奥まで続く直置き網 2021年2月茨城県小美玉市直置き網の使い方は?直置き網であれば何でもいいというわけではないことに注意してください。地面にベタに置くのが直置き網ですが、中には支柱をたてて、少し浮かして「直置き網」を設置しているレンコン田もあります。その場合天井型防鳥網と同じ効果をもたらしてしまう可能性があるからです。1mほど浮かした直置き網(網目4.5㎝)に絡まって死亡したカモ。2021年2月小美玉市上の写真をズームしたもの。2021年2月小美玉市野鳥の会の調査では、周囲に支柱をたてて90㎝網を浮かし、網目が10㎝の「直置き網」を使用しているレンコン田ではコガモ5羽、ゴイサギ1羽、ユリカモメ1羽が絡まっていたそうです*。直置き網は地面にベタに置くこと、浮かす場合でも30㎝以下、網目は4.5㎝程度であることが大事です*。下の写真は、2㎝の網目の「直置き網」です。少し浮かしており、まったくのベタ置きではありませんが、この高さで2㎝の網目であればスズメの様な小さい鳥でも絡まる可能性はほぼないと考えられます(網目が2㎝であっても高い場所に設置すれば小鳥、小さいコガモが絡まることがあります)。網目が2㎝の直置き網(以下3枚同じ場所)2021年2月茨城県小美玉市網目がに2㎝の直置き網 2021年2月茨城県小美玉市これだけ網目が細かいと鳥が絡まる確率はほぼないだろう 2021年2月茨城県小美玉市この地域、茨城県小美玉市下玉里では、すべての天井型防鳥網がなくなったわけではありません。この写真の手前のほうが直置き網が使用されていますが、奥のほうは天井型防鳥網(黒い部分)が使用されています。それでもかつては天井型防鳥網だらけだった地域です。それがいまではオレンジ色の直置き網が当たり前の光景に変わっています。奥の方には天井型防鳥網(黒い網)が設置されている田がある。しかしレンコン田の上にかけられたオレンジの直置き網が広がっている 2021年2月茨城県小美玉市ここでは、天井型防鳥網を設置したまま、直置き網を追加で設置しているレンコン田もありました。これは「天井型防鳥網」の効果自体に生産者が疑念を抱いていることの表れといえます。実際、天井型防鳥網が設置されたレンコン田に野鳥は普通に入っています。野鳥が歩いた足跡、線上痕もあちこちについています。(レンコン田に入ったからと言って野鳥がレンコンを食べているというわけではありませんが、ここではその議論は置いておきます。少し詳しいことはコチラをご覧ください)。四周網もある完全防備型防鳥網であれば野鳥がレンコン田に入ってくる可能性は低くなりますが、それでも野鳥は入ります**。レンコン生産者の中には「四周網があっても、バンは歩いて入ってくる」という人もいます。茨城県の政策が普及の発端となった、野鳥が入るのを防ぐための「天井型防鳥網」ですが、視覚的に、常識的に考えると、直置き網のほうが野鳥が入ってくる可能性が低いように見えます。効果という意味だけでなく、費用的にも直置きのほうがメリットがあるように思います。直置きのほうが安いからです。天井網の場合は鉄の支柱を立てるのも、高い場所に天井網を設置するのも資材費・人件費に多額の費用が必要です。天井型防鳥網の廃止をもう20年近く、野鳥たちは天井型防鳥網に絡まり、逃れようと長時間もがき(あるときは、絡まった日の翌日までまだもがいていました)、苦しんで死んでいきました。他の方法があるのに、これを続ける必要が本当にあるのでしょうか?天井型防鳥網に絡まり死んだカモ 2021年2月茨城県レンコン田天井網にからまった野鳥 手前の一羽も奥の一羽も生きている。2021年2月茨城県署名「茨城県のレンコン 非人道的な管理方法をやめて野鳥との共存を」にどうぞご協力をお願いします。署名*レンコン栽培と野鳥の共存を図る防鳥対策の提案 池野進 日本野鳥の会茨城県 2020**2017年10月-2018年1月に行われた調査(茨城県が茨城大学に委託して行った調査)では天井網+四周網の完全防備型防鳥網のレンコン田のほうは野鳥の飛来数が17羽、防鳥ネット無しのほうは80羽という結果でした。クリックして Twitter で共有 (新しいウィンドウで開きます)Facebook で共有するにはクリックしてください (新しいウィンドウで開きます)クリックして X で共有 (新しいウィンドウで開きます)Share This Previous Article孵化業界に、雛の圧死や窒息死の廃止を求める Next Article2/19学生部オンラインイベント「動物のこと、障がいのこと」 2021/02/14