アニマルライツセンターでは2009年から茨城県霞ヶ浦周辺にあるレンコン田の防鳥ネットにより多数の水鳥が死亡している問題について、取り組んできました。一向に上がらない一部の生産者の意識とそれによる野鳥被害の継続、それに対して一般の生活者はどのようにこの問題を捉えるのか、意識調査を行いました。渡り鳥(水鳥)が茨城県産のレンコン栽培のために多数死亡していることを知っていましたかこの問題についての認知度は8.2%で、高くはありません。しかし一部の地域で起きている問題としては、意外にも多いように感じます。また年代別で見たときに特徴があり、若い世代ほど認知度が高い傾向にありました。SNSなどでの情報取得によるものと思われます。生物多様性や動物の命よりも食害を防ぐことのほうが重要だと思いますか生物多様性や動物の命のほうが重要だと考える人が67%、食害を防止することのほうが重要と考える人は33%でした。とくに女性は生物多様性や動物の命を重視する傾向にあり、男性と比較すると12.6%の差がありました。代替策がある中で、食害を防ぐために渡り鳥を死亡させる網を設置することに賛成ですか食害を防ぐながら野鳥の被害もなくすことはすでに可能です。まず高い位置に網をかけるのではなく、直置きで網を設置する方法があります。また、高い位置に網をかけた場合でも、側面にも網をつけて完全に囲うことで中に渡り鳥が入れなくなり被害をほぼ無くすことができます(※研究によるとゼロではない)。また、レンコンを栽培しているのは茨城県だけではありません。つまりすでに代替策がある状態です。その中で渡り鳥を死亡させる網を設置することには、82%の人が反対であると答えています。当然の結果といえます。茨城県産、千葉県産、石川県産、佐賀産のレンコンが売られていたら茨城県産を選びますか消費行動に影響があるかも調査しました。あくまでも選択肢がある場合という前提ではありますが、68%の人が茨城県産ではないレンコンを選ぶと答えています。男性64.5% 女性 70.7%という結果になっており、女性の方がやや消費行動への影響が大きく出ることがわかりました。生物多様性は、私たちが持っている最も貴重なものの 1 つです。生物多様性がなければ、人間と動物の生命を支えるシステム全体が崩壊します。自然の生態系は非常に多くのものを提供してくれます。一方で人間側は奪い取るだけで一切与えないという考えは共生とは遠い考え方です。同時に、すべてのビジネスは生産~廃棄まで含めて生態系の恩恵に預かっており、生態系を脅かすビジネス活動は経営上のリスクになります。 数十、数百の野鳥を殺す程度ならと考えるかもしれませんが、さまざまな動植物は、私たちが知り得ない場所や方法で、相互に関連しています。一部を壊すことは、バランスを壊し、すべてを壊すことにつながっていきます。動物への暴力は、人への暴力に密接につながっています。動物が網にかかり長い時間もがき死んでいく様子を冷静に見ていられる人は多くはありません。動物が苦しむ姿は人々の心に深く訴えかけます。絡まった野鳥を外してほしいという依頼を断る生産者もいましたが、これは驚くべきことです。自分の敷地内で動物がもがき苦しむことを容認することは、他者への思いやりの無さの顕れであり、同時に暴力への慣れでもあります。動物への暴力の慣れは、人への暴力につながることは立証された事実です。暴力や動物の殺害への慣れは、人の社会の平和と対極にあるものです。暴力ほど早く、社会を荒廃させるものはありません。これらの価値観を軽視し、被害防止作を徹底しないことは、レンコンのビジネスを継続する上での将来のリスクになりうるのではないでしょうか。消費者は他県の鳥を犠牲にしないレンコンがあれば、そちらを選びたいと考えるのです。野鳥被害が長期化すればするほど、茨城県産の魅力は低下し続けるでしょう。【調査主体】NPO法人アニマルライツセンター【調査期間】2023/3/22【有効回答数】1,443【調査設計】 手法:一般調査会社のネットモニターを使用したインターネット調査【調査地域】全国クリックして Twitter で共有 (新しいウィンドウで開きます)Facebook で共有するにはクリックしてください (新しいウィンドウで開きます)クリックして X で共有 (新しいウィンドウで開きます)Share This Previous Article2023年 畜産動物に関する認知度調査アンケート Next ArticleG7国際会議はケージフリーのステップになるか 2023/03/27