日本郵便、動物の苦しみを無視して動物のゆうパック輸送を継続

動物にとって、輸送という行程は苦痛や苦悩、恐怖を伴う、最も心身ともに負担のかかる行程である。

以前アニマルライツセンターでは企業のエシカル通信簿の調査で宅配便業界の動物への配慮について調査を行ったが、その際に最も悪質であったのが日本郵便株式会社であった。佐川急便と西濃運輸は原則的に生きた動物の輸送を行わないとしており、クロネコヤマトは動物専用の輸送便があり特別の配慮を行うか昆虫と魚類を許可していた(クロネコヤマトも問題があるが)。一方で日本郵便はそのウェブサイト上でも鳥類、は虫類、魚類、昆虫の生きた動物を輸送することができると公言した状態であり、それがいまだに続いている。

実際、ペットショップやブリーダーなどの第1種動物取扱業者もゆうパックで動物を輸送している。2021年頃に日本郵便のサイトには「哺乳類はゆうパックで送ることができません。」という注釈がついたし、その前でも哺乳類は輸送できるとは書かれていなかった。しかし、実際には哺乳類についても輸送されており、アニマルライツセンターでも、ペットショップが別の支店に哺乳類を「トカゲ、カエル、カメ」と内容物を偽って輸送されていたことを把握している。結局動物を輸送できるとしているからこそこのような不正も継続する。ゆうパックでの配送は頻繁行われており、実際に、げっ歯類が死亡したり、鳥類が死亡したりしていた。

日本郵便の生きた動物を送る際の注記はむごい。

問題点

  • 餌だけでなく水すらも与えないことを明言している=動物愛護法第44条2項の罰則に該当するおそれ
  • 温度調整や換気をしない(通風なし)であること=動物愛護法第44条2項の罰則に該当するおそれ
  • 輸送により死亡することが予測できている=動物愛護法第44条2項の罰則に該当するおそれ
  • 配送が1~4日かかることもあるとしており、その場合4日間給餌給水なしになるが何のケアも行わないとしている=動物愛護法第44条2項の罰則に該当するおそれ

と、これだけの動物愛護法違反の可能性がある状態で日本郵便は動物を運ぶことを請け負っている。注記しているということは動物が衰弱し、死に至ること予測済みであることを示しており、故意ではなくても未必の故意に当たっていることは間違いない。

死ぬことを了承していることを条件にしているが、実際に輸送中に動物は多数死亡しているのだ。

そもそも、哺乳類がダメで鳥類爬虫類はよしとする根拠は一体なんだろうか。哺乳類はケアが必要だが鳥類はケアが不要?そんなことは有り得ないし、同じ愛護動物であり罰則の対象になっているはずであるのに・・・。

アニマルライツセンターからの要望と回答

アニマルライツセンターでは3月28日付で日本郵便に対し下記要望書を送り、早急な是正を申し入れた。しかし結果としては是正しないという回答を得ることになってしまった。

アニマルライツセンターからの要望書

動物の輸送についての要望書

わたしたちは「すべての動物に思いやりを」というスローガンを掲げ、動物たちの苦痛や苦悩、弱者への暴力や差別、環境問題をなくすために力を尽くす市民団体です。

貴社では現在、哺乳類以外の動物の輸送について、サービスを提供されています。さらに、哺乳類と同じ愛護動物である鳥類、爬虫類については輸送業務を請け負うにあたって、以下のような非倫理的と考えられる条件付けをされています。

  1. 輸送中にえさ、水の補給等特別の手当てを要しないもの
  2. 特別な取扱い(温度(気温、水温)の調節、換気(通風の確保)等)をしないため、死亡するおそれがあることについて、ご承諾していただけたもの

他社宅配事業者では少なくとも動物愛護管理法における愛護動物にあたる哺乳類、鳥類、爬虫類は基本的に輸送の対象としておらず、一部専門のサービスがあるケースがあるといった対応状況になっています。そのため、規制のゆるい御社のサービスが頻繁に利用される傾向にありました。

しかし、動物の輸送は動物が人間に飼育される上で最もストレスの大きい行程であり、また温度や湿度管理、換気、動物のケアも行わず、当然専門の人員がいるわけでもない状態は、不適切な取り扱いであると言わざるを得ません。輸送中に動物が苦しめられている可能性は高く、さらには死ぬこともあると思われます。これらは、現状の動物愛護管理法の第44条2項の罰則にも該当する可能性があり、つまり、貴社の輸送サービスは法に抵触しているように思われます。

死亡した場合の承諾があったとしても、死亡した場合には送り主は所有権に基づく器物破損を訴えることはできないと思いますが、動物愛護管理法による罰則の対象にはなりえます。

つきましては、早急に動物の輸送サービスの中止を要望いたします。

【要望事項】

1:早急に動物の輸送サービスを中止すること

理由1:輸送は動物飼育の中で最も負荷の高い行程であり、丁寧な輸送を行ったとしても死亡する可能性が高い。

理由2:温度管理、および換気が行われない場所は、罰則規定にある「健康及び安全を保持することが困難な場所」といえる。暑い日に換気がないなどはまさに虐待である。

理由3:動物が輸送中に怪我をしたり、病気になった場合は早急に治療をする必要があり、これを怠ることは罰則規定にある「疾病にかかり、又は負傷したものの適切な保護を行わないこと」にあたる。

理由4:脱水症状や食塩中毒などになる可能性があり、基本的に、水は動物が常時飲めるようにすることが必要である。

2:動物の輸送サービスを中止するまで、または輸送を行う場合は、動物の健康管理を行うことができる専門の人員が輸送を担当すること、適切な給餌給水や温度や湿度管理および換気を行い、動物が疾病にかかったり負傷した場合には輸送を中断し迅速に治療を受けさせることを徹底してください。

日本郵便からの回答

動物の輸送についてのご要望(回答)
貴社から弊社に宛てられた2023年3月28日付け「動物の輸送についての要望書」につきまして、送付物の引受業務を担当しております当部から、下記の通りご回答いたしますので、よろしくお願い申し上げます。
なお、ご回答にお時間をいただきましたことをお詫び申し上げます。

この度は、貴重なご意見を賜りまして厚く感謝申し上げます。
さて、弊社では、荷物のお預かりに際してゆうパックサービスをご提供していることから、ゆうパックを前提としてご回答申し上げます。
弊社は、お客様からお預かりした大切な荷物を安全・安心かつ確実にお届けするため、平素から品質向上に取り組んでいるところです。
その際、内容品が生きている動物であるか否かによる取り扱いの区別ができないことから、弊社Webサイト上のゆうパックに関するQ&Aでは、魚介類、は虫類、昆虫類や小鳥などの小動物について、ゆうパックで贈ることができる条件をお示しした上で、その条件を満たしたゆうパックをお取り扱いすることとしております。
また、輸送において特に配慮等が必要と考えられる犬、猫などの哺乳類につきましては、ゆうパックとしてお取り扱いすることは想定しておらず、このような動物の輸送について依頼された場合は、お引き受けをお断りしています。
以下、ご質問いただいた各項について回答いたします。

1 早急に動物の輸送サービスを中止すること
前述のとおり、弊社では、ゆうパックの内容品が生きた動物であるか否かなどによる取り扱いの区別ができないため、弊社Webサイト上で 条件をお示しした上で、その条件を満たした貨物をお取り扱いすることとしております。
また、ゆうパック約款第7条第1項において、人に危害を与える恐れのある動物のお引き受けを拒絶することがある旨を定めておりますので、そのような動物を内容品とする荷物については、お取り扱いしておりません。
一般のお客様がゆうパックをご利用頂く場合、送ることができる「生き物」には、「哺乳類」を含みません。

2 動物の輸送サービスを中止するまで、専門の人員を輸送担当とすること
現在のところ、動物専門輸送等の新設の予定はございません。
全国の郵便局で、日々多数の荷物を扱う上で、動物の生理・生態・習性にあったサービス等のご提供は困難ですので、ご利用のお客様が特別な取り扱いをご希望される場合には、弊社ではお取り扱いができないこと及び当該取扱いに対応した他の運送サービスのと利用をご検討いただきたいと考えております。

3 その他
この程ご要望をいただきました点については、一般のお客様への影響も踏まえ、今後のサービス提供のあり方などを、引き続き検討いたします。
以上

回答では、内容品を確認できないため、生きた動物も拒絶できないとしているが、一方で哺乳類や危険な動物については拒絶することとしており、矛盾している。哺乳類や人に危害が及ぶ動物と同じように、取り扱いをしないことを明記することがまず第一歩であるが、取り扱いをする前提での条件を提示しているに過ぎない。さらにその注意事項からは、ゆうパックでの生きた動物の輸送自体に違法性があることがわかるが、その点は考慮に入れていないようである。日本郵便の独自の基準が、法律よりも優先されているように書かれているとすら感じる。動物の生理・生態・習性にあったサービスが提供できないのであれば、それは動物愛護法に違反しているのだということを自覚しなくてはならない。なお、罰則対象でなかったとしても全ての動物が動物愛護法の対象になることも忘れてはいけない。魚類や昆虫であっても、生きた動物をゆうパックで何の配慮もなく送るなどということがあってはならない。

あなたはゆうパックでペットショップに送られてきた動物たちが撮されたこの写真を見てどう感じるだろうか。

そして輸送中に死亡していたこの動物の遺体をみて、どう感じるだろうか。(発見した従業員が埋葬しているところ)犬や猫じゃないから良いじゃないか、鳥類やは虫類は死んでも問題ないなんて考える人はちょっと異常だ。でも日本郵便はそう言っているのだ。

ゆうパックを運ぶトラックは、今も、このような動物に対する見えない虐待の温床になっている。

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