マイクロチップを犬と猫に入れることは、日本でも一部の飼い主の間で徐々に広がってきました。 特定動物はすでに義務であり、また特定外来生物(アライグマなど)もすでに義務化されています。 アニマルライツセンターも飼い主がいざというときのためにマイクロチップを飼い犬猫に入れることは、問題ないと考えています。しかし、それが全飼い主の義務となったとき、どうなるのでしょう。共同通信の「犬猫へのチップ装着を義務化へ 自民議連が法改正骨子案まとめる」(2018年4年28日)の記事によると、その義務化の議論は、与党の中で検討が着々と進み、今回改正で導入される見込みのようです。自民党どうぶつ愛護議員連盟のプロジェクトチーム(座長・山本幸三衆院議員)は、迷うなどして保護された犬や猫の殺処分を減らすため、飼い主を特定する個体識別用マイクロチップの装着を義務付ける動物愛護管理法改正案の骨子案をまとめた。関係者が28日、明らかにした。 このマイクロチップ義務化は獣医師会の悲願ですが、犬猫の愛護団体も一部賛同しているものの、マイクロチップ導入で動物が救われるわけではないのだということは多くの人が分かっていることであろうと思います。 実際、マイクロチップの問題点に詳しいJAVAによると、動物を危険に陥れる数々の問題点があるようですし、さらには目的であるはずの殺処分の回避やトレーサビリティについても担保できないであろう欠陥があります。一番の問題点は野良猫・外猫排除の流れこの議論を通じてアニマルライツセンターが感じるのは、野良猫を無くしたいのだという意志です。販売犬猫に限らず、すべての犬猫に入れたいのはなぜなのでしょうか。犬は日本では狂犬病予防法によって放浪していれば殺処分に回されていきます。このシステム自体不思議に思っている人も多いことでしょう。 その波は猫にも押し寄せています。狂犬病などのリスクは全くありませんが、近隣トラブルなどの原因になりやすい猫は今でも複数の自治体が駆除目的で引取り、殺処分をしています。また野良猫になるであろう子猫の捨て猫は、殺処分されています。現在の殺処分の多くをこの子猫の殺処分が占めています。 つまり、現在の日本の考え方では、所有者がいないことが判明していれば殺処分してもよいということになっているのです。多くの猫が所有者がいても外で飼育しており、野良猫かどうかの区別はつきません。しかしマイクロチップが【義務化】されたら、、、?たとえ所有者がいても、入れていなければ法律に違反しているため、殺処分されても抗議はできなくなるかもしれません。マイクロチップが入っていないことがわかれば、殺処分される口実になりうるかもしれません。今回の法改正のパートナーとして動いている私たち3団体(JAVA、PEACE、アニマルライツセンター)は、マイクロチップが入っていないことを理由に殺処分してはならないことを法文に明記することも求めていますが、まだわかりません。そもそも、野良猫はなくすべきなのでしょうか。 ここまで定着し、人々が利用してきた動物を、所有以外の方法では生きることを許さないという国に、日本は向かうのでしょうか。 アニマルライツセンターは現代のペットブーム、パートナー動物の過剰な飼育は早急に収束すべきであると考えていますが、それはすでに定着している動物の殺処分を持って収束すべきではありません。 まずペットショップやブリーダーでの繁殖を極限まで抑え(むしろ無くし)、不妊去勢で動物が適正に飼育可能な数まで減らすという方法を提案しています。ネコがいつから日本で定着していたのかは不明ですが、弥生時代にはすでに野生ネコが人間の周囲にいたようです。特定外来生物のように、日本に入ってきた歴史が数百年だと非情にも殺されますが、猫はそれには当たらないはずです。 しかし、野良猫をなくすという流れは着実に大きくなってきています。その他の問題点すべての飼い猫にマイクロチップを入れるのは現実的でしょうか。元野良猫の里親になっている方は大いにわかるはずです、逃げ回る猫を捕まえて病院に連れていき、保定して入れられるでしょうか。老齢の犬猫はどうしたらいいでしょうか。病気の犬猫はどうしたらいいでしょうか。譲渡団体にも義務が課されますが、その費用負担(一回6,000円程度)、大丈夫でしょうか。捨てるときに、素人がナイフでえぐり出すという事件が海外で起きています、日本で起きないと言えるでしょうか。マイクロチップは背中から移動してしまうことも多々ありますが、本当に読み取ってくれるでしょうか。読み取るときには、興奮した犬猫をじっとさせてすべて漏れなく読み取るなんてことができるでしょうか。狂犬病予防法の注射は義務ですが71.4%と低いですが、マイクロチップ義務化は実現可能でしょうか。現在のシステムにはトレーサビリティ機能はないことに、皆さん気がついているでしょうか。一部の関係者(獣医師、一部のチップ販売業者)の既得権益が税金を使って新たに形成されますが、それを正当化できるくらいの良い効果があるでしょうか。 そもそも、このような効果が低く、野良猫を追い詰める可能性のあるシステムに、多額の税金をかけるべきなのでしょうか。殺処分数をグイグイ押し下げてきた実績のある不妊去勢をさらに徹底させるため、私たちは義務化することを求めていますが、これすら達成できていない中、なぜ導入率がマイクロチップだけは強硬に推し進めるのでしょうか。義務化ではなく努力義務に与党案に盛り込まれることとなっている今、私たちは 一般家庭の犬猫は努力義務に緩和 とすることを要望をしていきます。詳細はJAVAさんのページをご覧ください。 引き続き、みなさまからの声を、届けてください。 http://www.arcj.org/campaign/00/id=1259 クリックして Twitter で共有 (新しいウィンドウで開きます)Facebook で共有するにはクリックしてください (新しいウィンドウで開きます)クリックして X で共有 (新しいウィンドウで開きます)Share This Previous Articleユニリーバが日本も含めて2025年までにケージフリー目標 Next Article八王子で講義「人間”を考えるための動物のはなし」~食としての動物の現状~ 2018/05/25