2024年10月、動物愛護法改正に関する政党アンケートを実施しました。重要な6つの質問に関する各政党の回答を公開します。
この政党アンケートは公正な動物愛護法改正を求める3団体(アニマルライツセンター含む)で行われたものです。
Q1 動物の緊急一時保護について
現行の動物愛護法では、虐待者や劣悪な環境で飼育するような悪質な飼い主の元から強制的に動物を引き離し保護することができません。動物虐待罪で有罪判決が下っても、動物の命が危険にさらされている緊急事態でも、救出することは不可能です。動物を人質にとられている状態では、行政や警察が虐待者や悪質な飼い主に強い手段を講じることができないという問題もあり、自治体からも緊急一時保護できるようにしてほしいとの声があがっています。
動物愛護法を改正し、動物の緊急一時保護ができる規定を盛り込むことについて、どう考えますか?
国民民主党
その他
自由民主党
どちらでもない
動物の安全の確保は重要であるが、飼い主に責任放棄させない取り組み、飼い主の財産権および所有権の扱い等の観点や虐待の定義に留意したうえで検討が必要です。引き続き愛護動物の不適切な飼育をなくすべく、動物取扱業への適切な監視、飼い主への指導などが実施されるよう国と地方自治体との連携強化を図ります。
れいわ新選組
賛成
立憲民主党
賛成
動物虐待事犯を取り締まるためのアニマルポリスの設置。虐待所有者からの「所有権はく奪」と「緊急一時保護」制度の創設について検討します。
日本共産党
賛成
動物愛護法改正で命と尊厳への認識が高まりつつあり、緊急一時保護でも前進を図ります。
社民党
賛成
動物は人間と同じく感受性があり生命ある存在です。動物の緊急一時保護規定を設けるべきだと考えます。
公明党
どちらでもない
飼い主が動物を適切に扱うよう指導することと虐待を受けている等の動物の安全を確保することが重要であると考えます。一方で、飼い主の元から強制的に動物を引き離すことについては、財産権及び所有権等について整理する必要があるため、緊急一時保護や保護した動物の適切な飼養保管、保護後の取扱い等も含め慎重に検討しなければならないと考えます。
日本維新の会
多頭飼育崩壊でも助け出すことができない現状は変えるべきです。
Q2 動物の輸送について
動物の輸送は最も動物に負担がかかる行為であるにも関わらず、法律での規制がありません。現在では、給餌給水や温度管理等の配慮は何もない状態であっても、宅配便などで自由に動物を送ることができ、実際に多くの動物が宅配便での輸送中に死亡しています。宅配便での輸送は多くの国が禁止しています。輸送時間を最小限に留め、できる限り負担が少ない状態を保つ必要があります。
動物愛護法を改正し、動物輸送に関わる業を動物取扱業に加え、規制強化することについて、どう考えますか?
国民民主党
その他 動物を飼養・管理する者の責務の強化、動物取扱業者の責任の強化などに取り組みます。
自由民主党
どちらでもない
動物の輸送については家庭動物等の飼養及び保管に関する基準において動物の健康及び安全の確保は当然必要です。基準の周知徹底を図ることとともに、その規制のあり方についても検討は必要と考えます。
れいわ新選組
賛成
立憲民主党
どちらでもない
党としてのきちんとした見解は取りまとめておりません。
日本共産党
賛成
輸送中の死亡は本当に痛ましい事態です。明確な規制、ルール化が必要です。
社民党
賛成
公明党
どちらでもない
動物の輸送については、家庭動物等の飼養及び保管に関する基準に基づき、動物の健康及び安全の確保を行うことが必要だと考えます。なお、当該基準は所有者又は占有者に課せられているため、基準に適合しないような輸送をしている場合は、各輸送業者が占有者として改善を図る、または自主的にとりやめることが望ましいと考えます。
日本維新の会
命あるものを荷物と同様に搬送し、死んで届くという痛ましい状況を変えたい。
Q3 動物実験の代替の推進について
動物実験の3Rの原則である、「動物を用いない方法への代替」「実験動物数の削減」「苦痛の軽減」の遵守は国際的な共通認識になっています。ところが、現行の動物愛護法においては、「苦痛の軽減」のみが義務規定で、「代替」と「数の削減」は配慮事項となっています。その結果、国際機関で公定化されすでに利用可能な代替法が多数あるにもかかわらず、国はその利用に消極的で、企業や研究機関の自主的な利用に留まってしまっています。
動物愛護法を改正し、3Rすべてを義務規定とし、国に代替法の開発や推進を義務付け、代替法の利用を促進させることについて、どう考えますか?
国民民主党
その他 医療や科学の進歩のためには、生物を使っての検証が欠かせないことも事実です。人に使用する前段階として、どのような手法が考えらえるのか、幅広い議論が必要です。
自由民主党
どちらでもない
3Rの原則は踏まえるべきではありますが、実験動物の利用は生命科学の進展や医療技術等の開発等のために必要不可欠であるため、動物を用いない方法への代替が難しい実験もあり義務規程とするには乗り越えるべき課題があります。
れいわ新選組
賛成
立憲民主党
賛成
産業動物や動物実験への対応を含め、動物福祉に関する法整備を目指します。
日本共産党
賛成
EUやアメリカ研究協議会の取り組みに学び、3Rを法的に位置づけるべきです。
社民党
賛成
動物実験の3Rの原則遵守は国際的な共通認識です。3Rすべての義務化が必要だと考えます。
公明党
どちらでもない
国際的にも動物実験の3Rの原則を遵守することは重要だと考えます。一方で、一部には、代替することができない実験もあるため、科学の発展のために、どのような方法で3Rを推進していくべきか検討しなければならないと考えます。
日本維新の会
化粧品でもクルーエルフリーが選ばれる時代となりました。我が国が創薬の業界で世界と戦うために必要です。
Q4 実験動物を扱う施設の所在を把握することについて
諸外国では、動物の福祉や虐待防止を目的とした法制度によって、動物実験施設は許認可制や登録制となっており、立入検査などの仕組みが法制化されています。国内では、兵庫県のみが動物の適正な取扱いの観点から動物愛護条例で動物実験施設の届出制度を設けており、これにより兵庫県のみ全ての動物実験施設が把握できています。しかし、国としては法整備が行われてこず、すべての動物実験施設を管理する行政機関は存在せず、動物実験施設の場所すら正確に把握されていません。
動物愛護法を改正し、動物取扱業の対象業種の中に動物実験施設や実験動物販売業者を含め、地方自治体が実験動物を取り扱う施設や飼育動物の把握を行うことについて、どう考えますか?
国民民主党
その他
自由民主党
どちらでもない
実験動物の適切な取り扱いのために実験動物を扱う施設の所在を把握する新たな制度として、動物取扱業の対象業種に追加することが適切か、慎重な検討が必要と考えます。
れいわ新選組
賛成
立憲民主党
どちらでもない
党としてのきちんとした見解は取りまとめておりません。
日本共産党
賛成
国民の理解を高めるためにも透明性の向上が大事であり、情報把握を強めるべきです。
社民党
賛成
公明党
どちらでもない
動物の適正な取扱いの観点から、実験動物を扱う施設の所在等を把握することは望ましいと考えます。そのために、動物愛護管理法に基づく動物取扱業の業種に加えることが、手段として適切であるのか等、実効性を含めて検討しなければならないと考えます。
日本維新の会
大手は問題ないと思います。劣悪な実験を防止するために所在確認は必要です。
Q5 畜産動物のと畜方法について
畜産動物のと畜は、アニマルウェルフェアや食の安全、労働者福祉のために事前に意識喪失をさせてから失血死させる方法が世界標準であり、多くの国で事前の意識喪失(スタニング)が義務化されています。日本に販売される鶏肉は、タイ、ブラジル、米国、中国などからの輸入が多いですが、これらも宗教と畜を除いて100%事前の意識喪失が行われています。一方、日本の動物愛護法では規制がなく、そのため未だに鶏などの家禽のと畜では事前の意識喪失を怠っている食鳥処理場が約85%以上残っています。
動物愛護法を改正し、日本でも、事前の意識喪失を行ってからと畜をするよう義務付けることについて、どう考えますか?
国民民主党
その他
自由民主党
どちらでもない
畜産動物のと畜にあたり、アニマルウェルフェアを推進していくことは重要ですが、義務化による生産状況等畜産業界への影響をふまえたうえで判断していくべきと考えます。
れいわ新選組
賛成
立憲民主党
賛成
畜産動物の福祉を向上させるための支援ができる法規制等を整備し、アニマルウェルフェアの世界標準達成を目指すとともに、畜産物を調達する企業の国際競争力の低下を防止します。
日本共産党
賛成
国際的なルールをよく検討し、苦痛をできるだけ与えない方式を目指します。
社民党
賛成
公明党
どちらでもない
アニマルウェルフェアの観点から、我が国においても、事前の意識喪失によると畜を進めることが重要であると考えます。一方で、食肉処理施設等の人手不足や老朽化も課題となっており、と畜を義務付けることで、事業者等への負担を考慮する必要があります。こうしたことを踏まえ、まずは、食肉処理施設の人材確保や施設整備など、事業者への支援を行い、事前の意識喪失によると畜が実施できる環境整備を後押ししていきます。
日本維新の会
国際的にも義務付けている国が多いです。日本は法規制が少ないため、アニマルウェルフェアは世界最下位です。スタニングは必須です。
Q6 畜産動物の密飼い防止について
畜産動物のアニマルウェルフェアを向上させることは、動物のためであるとともに、食の安全や人の健康にも直結しています。ワンヘルス(人・動物・環境の健康はつながっているという考え方)は国も重要視する考え方の一つになっています。飼育密度は動物の健康に直結し、薬剤耐性菌やウイルスなどの疾病を防ぐためにも適正な飼育密度を規定する国が多くあります。一方で日本では畜産動物の飼育密度について強制力を持つ規制は一つもなく、そのため他国よりも飼育密度が高くなってしまっています。
動物愛護法を改正し、日本でも、適正密度での飼育規定を盛り込むことについて、どう考えますか?
国民民主党
その他
自由民主党
どちらでもない
国際基準に準拠した指針によりアニマルウェルフェアに対応した飼養管理の普及を進めているため、現時点では、動物愛護法を改正し、家畜の飼育密度に関する規定を盛り込む必要はないと考えています。
れいわ新選組
賛成
立憲民主党
賛成
ケージフリーやバタリーケージの導入など、消費者・生産者目線に立ちながら検討します。
日本共産党
賛成
コロナ禍が提起した「ワンヘルス」の観点は重要で、調和を欠く状況は転換が必要です。
社民党
賛成
過密飼育を改め衛生面やストレスを改善するなど、環境を向上させていくことが重要です。
公明党
どちらでもない
アニマルウェルフェアを向上させるため、畜産動物における適正な飼育密度を確保することは極めて重要であると考えます。まずは、国際獣疫事務局(WOAH)の水準を踏まえ、新たに策定した指針に基づき、牛舎の飼育密度への配慮や、十分な空間の確保など、畜産動物の快適性に配慮した飼養管理を実践する生産者への支援を進めます。
日本維新の会
悲惨な飼育環境は動物に苦痛を与えるだけではなく、畜産業から若者が離脱する原因にもなっています。
Q7 動物愛護法の改正や動物福祉(アニマルウェルフェア)に関し、特に取り組みたいとお考えの政策がありましたら、教えてください。
国民民主党
質問(1)、(4)、(5)、(6)について
人と動物が幸せに暮らす社会を実現するため、犬猫の殺処分ゼロをめざします。アニマルウェルフェアの理念(5つの自由)に基づいた飼養管理の推進、動物取扱業者の責任の強化などに取り組みます。ペットショップでの生体販売については、既に動物愛護法において「動物が命あるものであること」と明記されており、また海外では禁止されている国も多いことから、幅広い議論が必要だと考えます。現状においては、業者も個人もむやみな繁殖は避けること、行政と民間の愛護団体が協力し、動物を保護するキャパシティを増やし、引き取り手を探す窓口を増やすことが重要です。
自由民主党
人と動物が共生することのできる社会の実現を目指し、引き続き愛護動物の不適切な飼育をなくし、動物取扱業への適切な監視、指導などが実施されるよう国と地方自治体との連携強化を図ります。また、犬猫へのマイクロチップ装着による情報登録制度の運用や譲渡促進の枠組みづくりを進め、犬猫の殺処分ゼロを目指します。
れいわ新選組
山本太郎代表は街宣などで
・アニマルポリスの設置
・生体販売禁止
などの政策をうったえています。
立憲民主党
人と動物が幸せに暮らす社会に向け、動物を飼養・管理する者の責務と動物取扱業者の責任の強化、動物に不必要な苦痛を与える虐待行為に対する罰則の強化などに取り組みます。ペットショップにおける生体販売の規制のあり方について検討します。
虐待飼育下にある学校飼育動物の救済について検討します。
ペットの同行避難の推進や、難病FIP治療薬などの動物用医薬品の拡充を検討します。
日本共産党
アニマルウェルフェアは、動物の本来の自然なふるまいを尊重し、生活環境からのストレスを減らし、空腹・不快・苦痛・恐怖を与えないように動物の生活の質の改善を図ることです。そのために能力・エサ・空間における集約化を緩和することになります。日本でも畜産のように、ブロイラーや採卵鶏の飼育など大規模な工場的な生産が行われているものや、肉牛・乳牛飼育、養豚など小規模生産が多数存在する分野もあり、状況をよく踏まえて、基準や支援策を定める必要があります。総選挙に向けて党のホームページに、各分野政策「動物愛護」を準備していますので、ご覧ください。
社民党
犬猫の殺処分ゼロをめざし、国の支援強化をします。生後56日以下の子犬や子猫の販売を禁じる「8週齢規制」遵守徹底とより実効性のある取り組みの推進や、動物の緊急一時保護規程制定などを努めていきます。
公明党
公明党は、動物の命と健康を守るため、殺処分ゼロのための譲渡の推進、多頭飼育対策や高齢者とペットの共生など社会福祉政策と連携した適正飼養等の推進に取り組むとともに、動物虐待防止の取り組みを着実に進めます。特に、動物取扱業の更なる適正化のため、飼養管理基準の遵守の徹底のみならず、制度的対応を検討してまいります。
日本維新の会
動物虐待をなくすためのアニマルポリスや、野生動物も含めた法改正も考えられます。法改正については、今後党内で議論します。
2024年10月16日時点で、教育無償化を実現する会、参政党からの回答はいただけていません。