アニマルライツセンターの理事であり、横浜国立大学 教育推進機構 安野 舞子准教授より、「人と動物の幸せな共生を考える授業」を通じて見えた、学生たちの心の変化についての貴重な報告をいただきました。私は、所属する横浜国立大学で、2017年度より「人と動物の幸せな共生を考える」という教養教育の科目を担当しています。この授業では、人間の飼育下に置かれている動物たちについて、「愛玩/伴侶」「展示」「産業」「実験」の4つのカテゴリーに分け、その分野の専門家を招いてオムニバス形式で講義を行なっています。この授業を履修する学生には、純粋に「動物のことについてもっと深く知りたい」と関心を持つ人から、「動物の話を聞いて単位が取れるなら有難い」と思う人まで、その履修動機は本当に様々ですが、押し並べて言えることは、最初はどのような動機であれ、全15回の授業を終えた時には、一人一人の動物に対する意識がほぼ確実に変わっている、ということです。以下、その代表的な学生の声をご紹介します:「本講義を通して思ったことは、知識があるのとないのとでは天と地ほどの差があるのだということです。産業動物や実験動物など、普段の生活では生きているところをあまり見ない動物は、ひどい扱いを受けている動物もいる。展示動物も幸せな環境じゃなかったり、殺処分されることが仕方ない犬猫もいたり。知識がなければ気づくことができなかった不幸せな動物たちが存在していることに気づけた。当たり前のことだけれど、「動物を大切にする」ということ。その気持ちを持つことがやはり重要なことであるのだと再認識した。」特に大学生というのは、勉学、サークル活動、アルバイト等で日々忙しくしており、授業を履修した後、その授業で学んだことはほとんど忘れてしまう、ということも残念ながら少なくありません。また、この「人と動物の幸せな共生を考える」の授業を履修する中で意識が感化され、有志グループを作って学内でアニマルウェルフェアに関する啓発活動を行ったり、自主的な勉強会グループを立ち上げた学生たちもこれまで数名いましたが、中核メンバーが卒業したり、学年が進行したりすると、自然と活動がフェードアウトしてしまう、というのが現実です。しかし、そのような現実であったとしても、上にご紹介した学生の声にあるように、これまでほとんど(もしくは全く)意識に上っていなかった、特に日陰に置かれている動物たちのことを「知る」ということは、今後の人生において、いつ・どこでその知識が花開き、行動変容に繋がるか分かりません。教育とは「種蒔き」のようなもので、確実に一人一人の心の中に「種」は植えられているのですが、それがいつ、どのような形で芽を出すかは人それぞれだと思っています。もちろん、どのような「種」を植えるかも重要ですので、いつかその「種」が芽生え、動物たちのために思いを馳せ、どんなに小さな一歩でも行動を起こしてくれる若者たちが現れてくれることを期待して、これからも「動物たちの声」を代弁する授業を続けていきたいと思っています。安野 舞子(横浜国立大学 教育推進機構 准教授)クリックして Twitter で共有 (新しいウィンドウで開きます)Facebook で共有するにはクリックしてください (新しいウィンドウで開きます)クリックして X で共有 (新しいウィンドウで開きます)Share This Previous Article豚が暮らすための土地を購入しました:豚レスキュー Next Articleアニマルウェルフェアアワード2024 味の素のこれまでの取り組みを評価 2024/04/09