2017年の例大祭は、台風のため、予定の9/17から10/9に変更になりました。神事とされる例祭が参加者の都合で延期されるという時点で、もはや神事とはいえないかもしれません。毎年、熊本県の藤崎八旛宮の例大祭では馬が使用されています。2017年の奉納団体は65。それぞれの団体が馬を引き連れ、「ドーカイ、ドーカイ」という掛け声と楽器を大音量で鳴らしながら熊本市中を練り歩きました。 2016年に馬への虐待的行為があった7団体に対しては今年の出場停止を要望していましたが、このうち6団体が今年も出場しました。各団体が引き連れている馬は衣装を着せられ、背中には男女の性器を模ったという大きなオブジェを背負っています。夕方にはこのオブジェの周りに電球が付けられ、クリスマスツリーのように点滅させるという趣向です。朝夕12kmを5時間ほど、馬はこの奇妙な衣装を着せられ、喧騒と人ごみの中を歩かされます。熊本市のこの日の気温は31.6度。真夏日の気温です。馬にとっての快適な温度域は、概ね7~23℃と言われています*からこの温度で長時間歩かされることだけでも大きなストレスとなるでしょう。毎年暑い時期にアスファルトの上を歩かされる馬への配慮として「長時間の使役、例大祭の時期を考慮し、飾馬奉納の日は、1kmごとに馬の水掛場を設置すること。」を藤崎八旛宮に求めていましたが、その要望は受け入れられず、水掛け場の設置は例年と変わらず各団体の任意となってしまいました。SNSに投稿された写真や動画、そして市民からの通報をもとに、今年の例大祭で馬がどのように扱われていたのかを記していきます。馬を殴る「当日12時前後に古城堀端公園付近で、ある奉納団体の団体員が、クーラーBOXかそれくらいの大きさの箱を振りかぶって馬を叩いていた」という通報がアニマルライツセンターのもとにありました。通報者によると、とくに馬が悪さをしたような感じもなくただイライラしていて殴ったという風に見えたそうです。道路側だったためたくさんの人が見ており驚いた様子で動画を撮影している人もいたとのことでした。(これは「ハミの扱いかた」などとは違い警察も判断しやすい虐待行為なので通報し、動物愛護管理法に基づき処罰を求めます。)暴力的なハミの扱い「ハミを使用した横歩きや右左、ぐるぐる引き回すなどのパフォーマンスの禁止」も求めていましたが、こちらも例年通り行われており、ハミを執拗にひっぱり馬に苦痛が与えられていました。ハミは口という体の中で最も敏感な部分に痛みを与えて馬を制御しようとするものであり、痛みや苦しみの原因となるものです。ハミで舌を切ってしまう馬もいます。不適切なハミの使用は馬にかなりの痛みを引き起こす可能性があります。本来ならば優しく、扶助的に扱わなければならないものですが、今年もやはりパフォーマンスのために手綱を強引に右に左に上にと引っ張りまわす様子が散見されました。ハミによる苦痛が気になるのか馬たちが始終口をクチャクチャと動かしているのも例年どおりでした。 藤崎八幡宮例大祭におけるハミの使用方法は極めて不適切と言えます。 これらのハミの暴力的な扱いは、環境省の示す「積極的な虐待」にあたる行為だといえます。後ろ蹴り勢いよく見せるために馬に行わせる「後ろ蹴り」について、警察は「馬に後ろ蹴りさせるという行為はどの場所であれ不適切な行為にあたる」との見解を示しており、藤崎八旛宮へも申し入れされています。しかしそこかしこで、後ろから馬を驚かせる、性器付近をつかむなどの方法で、これまでと同様後ろ蹴りが行われていました。強い後ろ蹴りに観覧者が驚いて飛びのくというシーンもありました。 奉納団体がSNSにアップロードした動画から、今年も練習段階から後ろ蹴りを仕込んでいたことがわかっており「不適切な行為」だということが関係者間で共有されていないことがわかります。 後ろ蹴りは危険な行為というだけではなく、虐待にあたる行為でもあります。蹴るというのは攻撃ではなく、馬にとっては防御であり、不安や危険から遠ざかろうとする行動です。馬の臆病な性質を利用し、心理的抑圧を与えて行わせるからです。警察には「馬への虐待行為や、後ろ蹴りなど道路交通法上問題となる行為があった際、その場で指導してほしい」とお願いしていましたが、例年通り、馬は乱暴で不適切な扱いを受けています。馬の扱いについて警察がその場で注意することもあるそうですが、今年の例大祭の状況をみると警察の存在が虐待の抑止につながっていないことが分かります。10月9日付の熊本日日新聞Webサイトでは“勇壮「馬追い」に熱気 藤崎宮例大祭・神幸行列”と題する記事が掲載されており、この記事のなかで、「各団体が勢いよく馬を走らせたり跳ねさせたりする「馬追い」を披露。沿道の観客を沸かせた」という一文がありました。 しかし馬追で行われている後ろ蹴りさせるという行為は問題行為であり、馬を驚かせる、性器付近をつかむという恐怖を与える行為を伴っています。勢いよく見せるというパフォーマンスのためのハミの暴力的な扱いは馬に苦痛と苦悩を与えています。「沿道の観客を沸かせた」とありますが、この祭りでの馬の扱いに胸を痛める熊本市民は少なくありません。熊本日日新聞にはこの祭りが内包する動物利用の問題点について意見を送りました。皆さまからもこの祭りの良い面だけではなく、動物福祉の観点からの問題点にも言及してほしいと声を届けてください。熊本日日新聞くまにちコム メールフォーム https://sp.kumanichi.com/user/inquiry/祭りに馬を参加させないでほしい馬の扱いが気になって毎年この祭りを見てしまう、という熊本市民からは、今年の例大祭での馬の扱いについて情報提供とともに、次のようなコメントがありました 「騒がしい状況の中、朝から夜まで人混みを連れ回されているというだけで充分虐待になっていると私は思っています。なのでこのような声が沢山上がって、あの祭りに馬を参加させることがなくなる日が来るように、今回撮った動画を送らせてもらいます。 馬が明らかに嫌がっているのに、しつこくハミを上下に動かして馬はずっと口をクチャクチャしていました。 あの暑さで一日中変な飾りを背負わされて、暗くなると電球まで体につけられて本当にしんどかったと思います。ストレスや疲労で体調を崩す馬がいたのではないかと心配です。」 馬は臆病な動物で周囲の環境の変化に敏感に反応します。絶え間ないストレスも馬のウェルフェア上問題になります* 人ごみの中、常時騒音にさらされ、ハミを乱暴に扱われ意に反した動きを強要されることは馬のウェルフェアを大きく損ないます。藤崎八旛宮例大祭での馬への虐待行為について情報提供を動物愛護法44条における公訴時効は、刑事訴訟法において3年です。現在から3年以内の虐待の証拠になるものがある場合、アニマルライツセンターまでご連絡ください。 sato@arcj.org意見先手紙や電話で皆さんからも意見を届けてください。藤崎八幡宮 〒860-0841 熊本市中央区井川淵町3-1 TEL. 096-343-1543神社本庁(全国の神社をまとめている組織) 〒151-0053 東京都渋谷区代々木1-1-2*参照 馬のウェルフェア飼養管理評価マニュアル(2017年) アニマルウェルフェアの考え方に対応した馬の飼養管理指針(2011年)2015年以前の虐待的行為 http://www.arcj.org/animals/sacrifice/00/id=678 2016年の虐待的行為 http://www.arcj.org/animals/sacrifice/00/id=968 クリックして Twitter で共有 (新しいウィンドウで開きます)Facebook で共有するにはクリックしてください (新しいウィンドウで開きます)クリックして X で共有 (新しいウィンドウで開きます)Share This Previous ArticleVICTORY!!! Gucci がリアルファー廃止! Next Articleタイ第二位の食肉企業 Betagro が妊娠ストール/分娩ストールを段階的廃止 2017/10/14