経済産業省は「皮革産業振興対策事業費補助金」として、毎年毛皮産業振興への補助金を出し続けています。2021年度の皮革産業振興対策事業費補助金の公募は、2021年1月20日~2021年2月19日に行われ、2021年3月25日に決定した補助先の事業者が発表されました(参照 令和3年度「皮革産業振興対策事業費補助金」の採択結果について)。アニマルライツセンターは2021年度の本事業費補助金について、毛皮産業を補助対象事業者から外すよう要望していました。しかし残念ながら、今年もこれまで同様に毛皮を扱う2事業者に補助金が出ることが決定しました。(補助額はまだ不明ですが、2020年度は19,428,600円が補助金としてこの2事業者に出ています。)「補助金」という性質からいうと、どの事業者に補助金を出すかは、公益性や公共性が審査の重要な柱となるべきです。しかし「毛皮産業」に公益性・公共性があるでしょうか?いくらでもほかの素材があるのに「毛皮」という動物を殺さなければ生産できない産業が社会にとって有益でしょうか?人々はこの産業の存続を求めているのでしょうか?日本の毛皮輸入(国内毛皮養殖場は2016年にすべて閉鎖)は2006年以降大幅に減少しています。ラグジュアリーブランドをはじめ、多くのブランドが毛皮の扱いを止めることを発表しています。スポンサーへの忖度が働く芸能界でも、毛皮を否定する声は年を追うごとに広まっています。2021年4月9日放送の「徹子の部屋」に出演した二階堂ふみさんは放送の中で、「動物福祉を知り、毛皮・皮製品も使用しない」と言っています。2021年4月7日には米高級百貨店サックス・フィフス・アベニューが毛皮の販売を段階的に廃止することを発表しましたが、これに先立つ2020年9月には、ノースドロームが、2019年10月にはメイシーズが毛皮の販売の段階的廃止を発表しています(両社とも全米有数の大型百貨店チェーン)。カリフォルニア州は毛皮製品の販売と製造の廃止を決定した初めての州ですが、同様の禁止法案は、ニューヨーク州やロードアイランド州、ハワイ州でも検討されています**Forbes 2021/04/13 米高級百貨店が毛皮販売を停止へ、広がる毛皮排除のトレンド動物倫理の問題だけではありません。新型コロナを機に毛皮農場が人獣共通感染症リスクとなることも明らかになっています。(毛皮農場のミンクへの新型コロナ感染の結果、2000万近くのミンクが殺されています。)毛皮生産大国であり日本の毛皮輸入先でもある中国では、皮革、毛皮産業製造の過程で使われる多量の薬品による環境破壊、さらに皮革・毛皮産業地帯における「ガンの村」が問題になりました。公益性も公共性も必要性もないのが毛皮です。ぜひ皆さんからも、「毛皮産業に補助金を出さないで」と意見を届けてみてください。経済産業省 意見先https://mm-enquete-cnt.meti.go.jp/form/pub/honsyo03/meti_toiawaseアニマルライツセンターから提出した意見※意見は経済産業省と経済産業大臣に提出しました。2020年12月17日当法人は動物の権利の向上を目指して市民運動を行う認定NPO法人です。令和3年度の「皮革産業振興対策事業費補助金の公募」について要望がありご連絡差し上げました。・要望「「皮革産業振興対策事業費補助金」に係る補助事業者募集要領」**の改正を行うなどして、本事業の補助金支援の対象に、毛皮産業が含まれないようにしていただきたい。毛皮の残酷性が知られるようになったことから、プラダ、グッチ、シャネル、アルマーニといったラグジュアリーブランド含め、多くの企業が毛皮を扱わないことを宣言しています。毛皮廃止の動きはメーカーにとどまりません。2019年10月、カリフォルニア州が毛皮の販売を禁止しました。2020年9月にはフランスが毛皮農場を廃止(ウサギは除く)することを決定しました。毛皮生産世界第三位のポーランドでは、現在毛皮廃止法案が審議されています。同じく毛皮生産大国のフィンランドは2020年8月に、最大政党が毛皮廃止に取り組むと発表しました。すでにヨーロッパでは13か国が毛皮のための動物飼育を禁止しています。動物倫理の問題だけではありません。新型コロナを機に人獣共通感染症のリスクも明らかになったことからも毛皮産業は縮小の方向に向かっています。2020年4月に世界第4位の毛皮生産国であるオランダの2つのミンク農場で、ミンクと従業員が新型コロナウイルスに感染したことが明らかになりました。その後、同国での感染農場は67に拡大し270万頭のミンクが殺処分されました。オランダ議会は2020年6月23日に、ミンクの飼育を即時停止する法案を可決しています。2020年中に同国のミンク農場は終了するだろうと予測されています(オランダ政府はもともとミンク産業を2024年に終了する予定だったので、前倒しになった格好です)感染はオランダのみにとどまりません。スペイン、アメリカ、デンマークのミンク農場でも感染が確認されました。デンマークでは、変異した新型コロナウイルスが発見され、ミンクから人への感染が確認されたことを受け、2020年11月4日、国内の毛皮用のミンク1500万頭以上をすべて殺すことを発表しました。2020年11月24日、ハンガリーは各地のミンク農場での新型コロナの感染発生を受けて、動物福祉と公衆衛生上の懸念から、ミンク・キツネ・ケナガイタチ・ヌートリアの毛皮農場の禁止を決定しました。2020年10月29日には、環境省が年間30万ドルを拠出するIPBES(生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学-政策プラットフォーム)が人獣共通感染症に関する報告書「IPBES Workshop on Biodiversity and Pandemics」を発表しました。この中でも毛皮用動物養殖がパンデミックリスクとなる可能性について書かれています。以下レポートから一部引用します。「飼育下で飼育されている動物がCOVID-19の出現に関与したかどうかは不明ですが、ウイルスが人々の移動を通じて世界的に広まった後、オランダ、デンマーク、米国で毛皮のために飼育されているミンクに感染し、オランダではさらに人間への感染を引き起こしました。」(パンデミックのリスク軽減の政策として)「パンデミックリスクの高い消費パターン(例:養殖野生生物の毛皮の使用)を特定、ランク付け、ラベル付けして、代替案のインセンティブを提供する。」「肉、木材、野生生物製品(毛皮など)などの特定の商品に対する世界的な需要は、病気の発生に直接関連している可能性があり、場合によっては、先進国での消費によって促進される可能性があります。」「SARSの発生中には、生きている動物市場のタヌキが感染していることが判明しましたが、新型コロナウィルスにも感受性があります。タヌキは、中国を含む多くの国で合法的に飼育されており、主にヨーロッパ、北米、その他の地域で国内総生産が高い国のファッション産業に供給するために輸出される毛皮のために飼育されています。」動物倫理の観点から毛皮産業への批判が世界的に広がる中、新型コロナウイルスのパンデミックが、毛皮産業の衰退を加速させているというのが今の状況です。補助金と言うのはその性格からいって公共性・公益性のあるものにたいして支払われるべきもののはずです。動物倫理、公衆衛生の観点から縮小の方向に向かっている産業の振興のために補助金を出さないでほしいというのが当法人の要望です。ご多用中恐縮ですが、ご回答をいただけますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。経済産業省からの回答2020年12月18日いろんな意見があるので、(毛皮業界の言い分もある)ので、意見の一つとして承ります。2018年リトアニアのミンク農場 写真/動物権利団体Tušti narvai2018年フィンランドのキツネ 少しでも毛皮を多く採れるようにブクブクに太らされている 写真/動物の権利団体Oikeutta eläimille2019年中国の毛皮農場2019年中国の毛皮農場**現在の公募要領(「皮革産業振興対策事業費補助金」に係る補助事業者募集要領)の内容のままであれば、毛皮団体であっても補助金の対象となってしまいます。2021年度は毛皮団体への補助金がなされないようにするためには、要領の改正も必要かもしれません。クリックして Twitter で共有 (新しいウィンドウで開きます)Facebook で共有するにはクリックしてください (新しいウィンドウで開きます)クリックして X で共有 (新しいウィンドウで開きます)Share This Previous Articleアニマルウェルフェアアワード2021を発表! Next Articleお客様からのお問い合わせでケージフリーに切り替えた旅館、土湯別邸 里の湯 2021/04/16