生きたまま、意識のあるイセエビをいきなり頭と腹部で真っ二つにして、また動いている状態で皿に盛るという「料理」は日本で珍しくありません。イセエビやカニを、生きたまま沸騰した熱湯の中に放り込むという「料理」も、一般的です。無機物の様な扱いを受けている甲殻類ですが、こちらの記事に書いたとおり、甲殻類は痛みを感じ苦しみます。人からの残酷な仕打ちに彼らは耐え続けています。生きたまま蒸されるイセエビ。このお店には2017年にもこの行為の廃止を要望したが、現在もこの「料理」が続けられている。2021年にも廃止要望したが拒否された。生きたまま動けないように鉄串にさして焼く(口あたりから鉄の串が出ているのが分かります)前半分(頭胸部)と腹部の間でナイフを使って切断されて皿に盛られています。これも一般的な「料理」ですが、イセエビの体に縦に長く伸びる中枢神経系が破壊されていないため、イセエビは死ぬまで皿の上で痛みに苦しみます。甲殻類を殺して食べるという行為は、必ず甲殻類を苦しめます。殺すときだけではありません。捕獲・輸送・生け簀の中、すべての過程で甲殻類は苦しみます。栄養学的に彼らを食べる必要はどこにもありません。苦しみを無くせる唯一の選択は、彼らを食べないという選択です。甲殻類の非人道的な扱いの廃止を求める要望書アニマルライツセンターはこういった甲殻類への非人道的な行為が明らかになった11店舗に、2021年3月初旬、下記のとおり要望書をおくりました。私たちは動物の権利及び福祉の向上を目指して市民運動を行う認定NPO法人アニマルライツセンターです。貴店において、生きたままで甲殻類が解体されているという通報が市民から当法人の元へございました。つきましては、動物の権利及び福祉の観点から、下記のとおり要望いたします。ご検討いただけますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。甲殻類を殺す際は、まず甲殻類の意識を適切で速やかな方法で喪失(気絶処理)させ、続いて適切で速やかな方法で殺したのちに、解体、焼く・茹でる・蒸すなどの調理を行ってください。甲殻類が痛みを認知して苦しむことができるという、国際的な同意が広まっています。ニュージーランド、ノルウェー、オーストラリアのいくつかの州は甲殻類及び魚を動物福祉法の対象としています。2017年、イタリアでは、最高裁判所が、ロブスターは殺される前に、レストランの厨房の氷で保管してはならないと裁定。裁判官は、生きている甲殻類を氷上に置いていたフィレンツェ近郊のレストランの所有者に、2,000ユーロの罰金(5,593ドル)とさらに3,000ユーロの法定費用を支払うよう命じました。レッジョ・エミリア(イタリアの都市)では、ロブスターを生きたまま煮沸した場合、495ユーロの罰金が科せられる条例が採択されています。同2017年、スイスでは、ロブスターがまだ生きている場合、調理のために熱湯に入れることを禁じる法律が成立しました。イギリスの大手スーパーのテスコ、ウェイトローズは、甲殻類を殺す前に意識の喪失(気絶処理)をすると約束しています。また、イギリスでは多くのメジャーなレストランが殺す前に電気式に即時の気絶をさせる装置「Crustastun」を導入しています。昨年、英国獣医師会は、ロブスターを生きたまま沸騰した湯に入れた場合、殺すのに最大15分かかる可能性があるとして、甲殻類が知覚力を持つことを示す最新の科学的証拠を踏まえ、殺して調理する前に気絶させることを義務付けるよう声明を出しました。国内でも動きがございます。養殖場では、繁殖用メスのエビが、そのほうが繁殖性が高まるという理由から麻酔なしで片目が切断されていますが、国内においてもこの行為を廃止しようとする動きが始まっています。生きたままで、甲殻類を沸騰したお湯に入れると、手足を落とす(自切)ことが知られています。イギリスの調査はすべてのカニが沸騰中に足を失ったと報告しています。自切は尾のむち打ちや逃避行動と同時に甲殻類の苦痛を示すストレス指標として用いられるものです。日本でよく見られる、イセエビを頭胸部と腹部の間で横半分に切断するという行為は、中枢神経系が破壊されていないため、イセエビは死ぬまで皿の上で痛みに苦しみます。甲殻類は、記憶し、不快な刺激を避けることを学ぶ認知能力を持っていることが数々の研究で示されています。カニは、以前に感電したことがある場所を避け、ザリガニは光の信号とショックとの関連を学習し、ショックを回避する方法を学びます。甲殻類は単なる食料ではなく、感受性のある生き物です。水の中では私たちと同じように社会生活を営んでいます。彼らを尊重し、苦しみの長引く方法で殺さないでください。適切で速やかに意識喪失(気絶処理)させる方法及び、速やかに適切で速やかに殺す方法についての資料を付記します。これをご参考にしていただき、人道的な方法の導入を検討していただきたいと願っております。ご多用中大変恐縮ですが、本要望につきまして、ご回答いただけますよう何卒よろしくお願い申し上げます。添付資料11店舗からの回答2021年3月初旬に要望書を送った11店舗、すべて回答はありませんでした。そのため電話して回答を求めたところ、次のような結果でした。問題電話の内容A店生きたまま焼く2017年に問題のやり方の廃止をお願いし、参考資料も受け取っていただいたが、廃止には至らなかった。今回の再要望でも「100年続いた名物料理のため変更は難しい」とのことで、廃止していただけなかったB店生きたままで蒸す本記事のトップの動画のお店。2017年にも問題のやり方の廃止をお願いしたが「供養しているので問題ない」と電話を切られ着信拒否。今回の要望でもすぐに電話を切られたため、話しをするのも不可能な状態D店頭部と尾部を半分にして生きた状態で皿に盛る話はさせていただいたものの、「答える義務はない」「活動を押し付けないでほしい」と電話を切られたE店生きたままで焼く話はさせていただいたものの、「これを止めろと言うのは店を閉めろと言うのと同じ」「あなたたちは食べないのでいいと思うが」と電話を切られたF店生きたままで焼く甲殻類だけではなく、魚の痛覚についてとOIEの養殖魚の福祉基準についてなど細部の話をさせていただいた。ただ、「ここらへんはどこもイセエビの残酷焼き(生きたままで焼く)はやってる」とのことで、直ちに変更はできないとのことG/H店頭部と尾部を半分にして生きた状態で皿に盛る電話して催促したが回答をいただけていないI店生きたまま焼く電話して催促したが回答をいただけていないC店頭部と尾部を半分にして生きた状態で皿に盛る電話はつながるものの、担当者が常に不在J/K店頭部と尾部を半分にして生きた状態で皿に盛る電話がつながらなかった。休業中の可能性あり電話を切られたケースも含め、なんらかの対応をしてくださった店舗に感謝します。かれらとのやり取りで、甲殻類が私たちの社会の中でどのような位置に置かれているのかがわかりました。現時点で、日本では甲殻類は「配慮されるべき対象」とはみなされていません。豚や鶏も私たちの社会の最底辺に置かれて苦しんでいますが、それでも例えば豚を生きたまま焼いたり、半殺しの状態で皿の上に盛りつけたりすれば大問題となるでしょう。しかし甲殻類ではそれが許されています。多くの店舗が「それを楽しむ客がいる」と言い、客も店舗も現在の甲殻類の扱いに疑問を抱いていません。問題提起して、意識を変えなければ甲殻類の苦しみは永遠に続きます。レストラン、海鮮料理店、釣り人、テレビの料理番組、YOUTUBEなどで酷い方法で甲殻類が殺されていることが分かれば、皆様からも、なぜわざわざそのように苦しめるのかと、メールや電話、コメント欄などで意見を届けてみてください。甲殻類の痛みが考慮されることがほとんどない社会の中で、そのような意見は社会を変える重要な一石となります。クリックして Twitter で共有 (新しいウィンドウで開きます)Facebook で共有するにはクリックしてください (新しいウィンドウで開きます)クリックして X で共有 (新しいウィンドウで開きます)Share This Previous Articleユタ州も採卵鶏のケージ飼育を禁止、最小床面積やエンリッチメントも必須 Next Articleファクトチェック:バタリーケージが「苦痛、傷害、疾病からの自由につながる」は嘘 2021/03/25