今までアニマルライツセンターは、水生生物、とくに甲殻類について、倫理的な殺し方、料理の仕方など周知し、あまりに酷い店には団体として要望するなどしてきました。こういった活魚料理は、コロナ禍によって一時は目にすることもなくなっていましたが、緊急事態宣言が解除され、たとえば大型スーパーや観光地などが、人寄せに生きた甲殻類、魚類などの販売を再開しています。写真のカニは、地方のある道の駅の土産物売り場で販売されていました。 日本の温かい海中に生息 し、ワタリガニやガサミという名称で売られる、手の平ぐらいの大きさのカニです。カニを最大限苦しめる生きたままの調理法このワタリガニの食べ方を紹介するサイトには「おすすめ料理は蒸し蟹。焼き>蒸し>茹での順で、美味い。簡単で美味いのが蒸し。活きていれば、頭をまな板に打ち付け、脳震盪をおこさせる。自切といって、自分で脚を切り離す。蒸し器に甲羅を下に、ひっくり返して入れると旨味が流れ出しにくい。酒少々をふりかけ、20分ほど蒸して出来上がり」とありました。このほか生きたままキッチンバサミでぶつ切りにする、串刺しにして焼く、浜ゆでなど、食用のカニたちは死ぬ前に大変苦しい思いをします。それについて甲殻類、魚類は痛みを感じないのでは?苦しめない殺し方はあるのか?など、反論や疑問がある方は、文章末に示したARC過去記事をご参照ください。活魚販売=展示販売さて今回は、この甲殻類の販売の仕方に注目します。このカニたちは近くの海で採取され、脚を拘束されて動けないまま、店頭で売られていました。しかしそれほど観光客に人気のある食材ではなく、通りすがりの客は、とくに子どもがのぞいたり触ったりするだけで、正直言って、このカニを買い求める人は少ないと思いました。要するに食材としては、プロの料理人でないとなかなか調理しにくいのです。それでもカニたちはもちろん、食べるものも与えられず、乏しい海水だけで、生きている限り数日そのまま放置されます。これまでアニマルライツセンターは、畜産動物の最後の一日に、注目して活動しています。多くの屠殺場や食鳥処理場、さらに関係省庁などに、屠殺前の扱いや屠殺方法の改善を求める行動です。往々にしてそれらの実態は、普段人目につかない場所に隠されているので、わたしたちはやっとの思いで情報を得て、それを根拠に活動を続けています。エンターテイメント化される甲殻類殺しところが水生生物の場合、業者にも隠す意図さえ見えず、「最後の一日」はむしろ、これ見よがしに人目にさらされています。とくにエビ・カニなど甲殻類は、生きたままバーベキューされたり、鍋に入れられたりする。つまり殺すこと自体がエンターテイメントにされているのです。食べたことがなくとも想像すればわかることですが、手のひら大のカニなど可食部分はとても少なくて、お腹を満たすために殺すというより、生きたまま焼くこと煮ること自体が娯楽であり、旅の思い出として演出されています。店側は生きたカニを客に見せることで「この商品は生き物を殺す楽しみがあるよ」と客を誘っているのです。この水生生物の最後の一日をエンターテイメント化することに、アニマルライツセンターは倫理的な問題があると言わざるをえません。いや、動物保護団体でなく普通の感人でも、自宅で生きたカニをザクザク切り刻んだり、熱湯に放り込むことには抵抗を感じるはずです。それが正常な人間の感覚だからです。旅先で鈍麻する倫理観しかしその普通の感覚は、旅先や外食の非日常感で薄らいでしまうようです。過去のARC公式サイト記事でも説明しましたが、甲殻類、魚類をできるだけ苦しませないように殺す調理方法は難しく、素人の旅人にできることではありません。食用のカニを販売するなら、調理のプロが苦しまないようカニを殺してから販売すべきだとおもいます。なぜ生きたまま販売してはいけないか法律がなくてもよく考えればわかることですが、カニやエビを生きたまま販売してはいけない理由は、そこにあります。ひとつは、飼育とはいえない不十分な水槽で、しかも拘束しつづける展示販売であること。もうひとつは、生きたまま販売すれば、素人が粗雑な方法で殺して食べることになり、水生生物の最後の一日が、いっそう悲惨なものになること。だからわたしたち倫理的な消費者は、死んだカニを売るより、生きたカニを見世物にして売ったほうが、人寄せになると考えるビジネスに対して、それは間違っていると教えてあげなければいけません。見かけたその場で意見することが難しければ、帰宅してから電話やメールで伝えることもできます。食用の生物としては地上最悪の販売方法をされている甲殻類の、その最後の一日を改善することは、誰にでもできる活動なのです。甲殻類の生命への無関心しかしその改善への道は、とても険しい……アニマルライツセンターは現在、養殖エビの目を切らないよう飼育方法を改善する「#エビの命も大事キャンペーン」を行っていますが、その街頭活動に対する反応は、畜産動物に比べてもシビアです。「だって畜産動物は食用でしょ」と面と向かって言う人は、最近減ってきたと思いますが、エビについては、食用なのになぜこんなキャンペーンをするのか、悪気なく不思議に思う人がいるそうです。しかしその分、エビやカニに対する意識を高めることは、ほかの動物の最後の一日を改善する、ボトムアップにもつながります。※ARC公式サイト甲殻類関連過去記事は以下へ〇甲殻類を残酷に殺す料理についてhttps://arcj.org/issues/fish/crustacean-kill/〇甲殻類の料理の仕方。海外との比較https://arcj.org/issues/fish/fish984/〇魚を残酷に殺す料理https://arcj.org/issues/fish/aqua692/クリックして Twitter で共有 (新しいウィンドウで開きます)Facebook で共有するにはクリックしてください (新しいウィンドウで開きます)クリックして X で共有 (新しいウィンドウで開きます)Share This Previous Article米国の鶏卵生産業、毎年400万羽分の鶏舎をケージフリーに変換 Next Article2021年10月25日渋谷街頭アクション報告 2021/10/28