2019年6月19日に改正動物愛護管理法が公布され、翌2020年6月1日から施行になった。今回の改正時期は、2020年6月1日施行、2年以内に施行、3年以内に施行の3パターンに分かれている。2020年6月1日施行 下記2,3以外施行2021年6月1日施行 動物取扱業(動物を販売したり展示したり貸し出したりする業者)の基準、犬猫の生後56日齢規制2022年6月施行予定 マイクロチップ装着の義務化2の動物取扱業の基準(改正動物愛護管理法第21条)は先月6月1日に施行され、この第21条の基準を明確にした第一種動物取扱業者及び第二種動物取扱業者が取り扱う動物の管理の方法等の基準を定める省令も同日に施行された。6月1日に施行された動物取扱業者の基準がどのようなものなのかというと、犬猫の運動スペース分離型飼養等(ケージ飼育等)を行う際の基準<寝床や休息場所となるケージ>犬:タテ(体長の2倍以上)×ヨコ(体長の 1.5 倍以上)×高さ(体高の2倍以上)猫:タテ(体長の2倍以上)×ヨコ(体長の 1.5 倍以上)×高さ(体高の3倍以上)、1つ以上の棚を設け2段以上の構造とする。複数飼養する場合:各個体に対する上記の広さの合計面積と最も体高が高い個体に対する上記の高さを確保。<運動スペース>運動スペース一体型飼養等と同一以上の広さを有する面積を確保し、常時運動に利用可能な状態で維持管理すること。(運動スペース一体型飼養等を行う際のケージ等の数値基準はコチラをご覧ください。ここでは省きます)運動スペース分離型飼養等を行う場合、犬又は猫を1日3時間以上運動スペース内で自由に運動できる状態に置くこと。ケージ等の床材としての金網の使用禁止(犬・猫の四肢の肉球が痛まない構造である場合は除く)犬猫を休息できる設備に自由に移動できる状態を確保できない場合は、展示時間が6時間を超えるごとに、その途中に展示を行わない時間を設ける。動物の飼養又は保管に従事する従業者の員数犬:1人当たり繁殖犬 15 頭、販売犬等 20 頭が上限猫:1人当たり繁殖猫 25 頭、販売猫等 30 頭が上限犬猫には清潔な給水を常時確保する犬猫の飼養施設に温度計及び湿度計を備え付ける犬猫の繁殖年齢及び繁殖回数の制限犬猫には年1回以上の獣医師による健康診断飼養施設に輸送された犬猫は輸送後2日間以上観察すること参照:https://www.env.go.jp/press/files/jp/116015.pdfなどが盛り込まれている。この新たな基準を厳格に運用していくために、基準の具体的な指針を解説する「動物取扱業における犬猫の飼養管理基準の解釈と運用指針~守るべき基準のポイント~」も公表された。これまでと違うのは、内容が具体的で、数値規制があるというところだ。これまでこういったものがなかったことで、劣悪な飼育でも改善につながらなかったというケースがどれだけあったかと考えると、十分な内容とは言えないものの前進だろう。しかし上述した基準の内容は2021年6月1日から施行されたこの動物取扱業の基準の対象は、犬猫だけだ。私達はJAVAやPEACEとともに、犬猫以外の動物の基準も必要だと訴えてきたが、結局犬猫以外の動物は後回しになってしまっているのが現在の状況だ。幸いにも2021年1月8日の中央環境審議会答申の中に、「犬猫以外の哺乳類、鳥類及び爬虫類に係る基準についても、今後検討を進めるものとする」と記載され、同年5月17日の動物の適正な飼養管理方法等に関する検討会で示された今後のスケジュールにも「今年度、来年度にかけて犬猫以外の動物に関する検討を進める予定」と書かれていることから、ほかの動物が無視されることはまさかあるまいとは思う。だが、動物愛護管理法の議論でも犬猫が異様に重視され、もはや「動物愛護管理法」ではなく「犬猫法」ではないかというほど危ぶまれるような状況なので、油断はできない。今回、「犬猫以外の動物」がどんな飼育に耐えているのか、最近訪れた鳥類のペットショップを例にあげて、あらためて「犬猫以外の動物」も犬猫同様に具体的な飼養基準を必要としていることを知らせたいと思う。*訪問日は2020年11月及び2021年7月。千葉県下のペットショップ。1.飼養スペースが狭い動画この鳥は「一時的な保管」ではなく、(把握できる限りで)少なくとも2か月このケージに収容されていた。体と同じくらいの大きさしかないケージ飼育だが、現在、犬猫以外に飼養施設サイズの数値基準はない。2.過密動画動画安心して休める隠れ場所もない過密なストレス環境。闘争が起こってもおかしくない状況だが、現在、犬猫以外に、一頭羽あたりの飼育スペースの数値基準はない。3.運動できる機会ゼロ動画2020年11月に居た100万円のこのオウムは2021年7月も売れておらず、このケージに収容されたままだった現在、犬猫以外に運動スペースの数値基準はない。一日中隠れ場もなく展示されっぱなしの状態だが、犬猫のように「6時間ごとに展示しない時間を設ける」という数値基準もない。4.従業員あたりの展示数が多すぎて管理不能コケの生えた水入れ動画掃除する時間がないのか、8か月たつと中に何が入っているのかもわからないくらいに水槽は汚れていた。幼雛保温のための水槽飼育のようだが、かなり成長した雛も入れられており、適切なサイズとも言えなかった。店内だけではない。屋外にもズラリとケージが並んでいる。清潔な水入れは見当たらず(空になっている水入れもあった)、ケージの中は汚なかった。二回の訪問とも、スタッフは同じ方が一人しかおらず、水入れが空であることを指摘すると「今からやろうと思っていた」と、もう管理可能なキャパを超えているというように見えた。しかし、従業員一人当たりの飼育頭羽数の数値基準があるのは、現在、犬猫だけだ。また、「清潔な給水を常時確保」することが求められているのも犬猫だけだ。2020年11月に訪問後、このペットショップを管轄する自治体の動物愛護担当部署に問題点を指摘し、指導してもらったところ、1の「飼養スペースが狭い」に掲載した動画の鳥は移動されることになったが、2021年7月時点で状況はほとんど変わっていなかった。念のために言っておくが、第一種動物取扱業者及び第二種動物取扱業者が取り扱う動物の管理の方法等の基準を定める省令には、犬猫以外の動物の基準も記載されている。例えばケージ等は、個々の動物が自然な姿勢で立ち上がる、横たわる、羽ばたく等の日常的な動作を容易に行うための十分な広さ及び空間を有するものとすること。飼養期間が長期間にわたる場合にあっては、必要に応じて、走る、登る、泳ぐ、飛ぶ等の運動ができるように、より一層の広さ及び空間を有するものとすることという記述もある。だが昨月6月1日に施行された犬猫の基準のような具体性も数値もない。「十分な広さ及び空間」「より一層の広さ及び空間」などの主観にゆだねられるような基準に拘束力はない。飲水についてもそうだ。犬猫以外の動物にも「適切な量、回数等により給餌及び給水を行うこと」という基準がある。だがそれは犬猫の基準「清潔な給水を常時確保すること」とはまったく意味が違う。「適切な量、回数等」もまた個人の主観にゆだねられ、いかようにも解釈できるのだ。自治体の動物愛護担当部署に問題点を伝え指導をお願いすると、必ず視察に行き、指導してくれる。だが彼らも具体性も数値もない基準では、指導に限界があるというのが実情だ。実行力のある基準を必要としているのは犬と猫だけではない。苦しむ能力を持っているのは犬も猫も、ほかの動物も同じだ。自力でどうすることもできないヒトの管理下で、動物たちは苦しみ、助けを求めている。水槽に鳥が過密に閉じ込められているが、汚れて何が入っているのかすらわからなくなっているクリックして Twitter で共有 (新しいウィンドウで開きます)Facebook で共有するにはクリックしてください (新しいウィンドウで開きます)クリックして X で共有 (新しいウィンドウで開きます)Share This Previous Article「Bookcafe days」と「寺子屋オーガニックカフェ EDEN」がケージフリー宣言 Next Article工場畜産が続く限りどこかの生態系が大豆のために消えていく 2021/07/23