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すべての動物に思いやりを。 わたしたちは、工場畜産や動物搾取がもたらす動物たちの苦痛や苦悩、弱者への暴力や差別、環境問題をなくすために力を尽くします。 TRENDING NEWS TOP アニマルウェルフェア 動物たちに関わる問題 【採用情報】畜産動物の苦しみをなくすために尽力しませんか? TOP アニマルウェルフェア 動物たちに関わる問題 採卵鶏 豚 アニマルウェルフェアアワード2025:シャトレーゼなど3社が受賞 TOP 乳牛 14番と呼ばれた牛 乳牛という過酷な運命の末路 TOP 屠殺 採卵鶏 肉用鶏 国内鶏肉処理のレベル再び低下:屠殺に失敗し70万頭の鶏を生きたまま熱湯に入れ殺す TOP サンクチュアリ 動物たちに関わる問題 豚 緊急レスキュー 8頭の豚を畜産の鎖から解放しよう TOP…
5月のアニマルライツチャンネルvol64はウータン・森と生活を考える会との共催です。 ウータン・森と生活を考える会からは、主に東南アジアの森林の減少の原因となる世界中で利用される油や電力のお話をお伝えします。東南アジアを中心とした森林破壊とその原因について話を聞きましょう! アニマルライツセンターからは、畜産業が及ぼす森林破壊への影響の今をお伝えします。私達日本での食料システムと直接関わりのある工場畜産で使われる飼料(大豆やとうもろこし、小麦)の話です。鶏や豚が食べる濃厚飼料の自給率はたった12%程度。残りは世界中からかき集めてきていますが、その中には”紛争飼料”といえるような動物も人も苦しめた飼料が混ざっています。 アニマルライツチャンネル✕ウータン[森林破壊が止まらない] 2025年5月8日(木曜日) 20時30分〜22時過ぎ 出演: ウータン・森と生活を考える会 事務局長 石崎雄一郎 アニマルライツセンター 代表理事 岡田千尋・北穂さゆり・学生部 社会活動家・元衆議院議員:堀越けいにん https://youtube.com/live/GO2u_l61Yvs https://youtube.com/live/GO2u_l61Yvs…
食品の価格高騰の話題を聞かない日はないですが、一般の商品が値上がりした分、もともと高価格帯の商品との価格差が縮まり、手が届きやすくなったと思われるのが、じつは高級スーパーの商品です。 平飼い卵の浸透に一役買っているのは、むしろ庶民的なスーパーで、平飼い卵取り扱い数の前年比が、飛躍的に伸びたスーパーもありました。現在首都圏のほとんどの有名スーパーと、アニマルライツセンターはお話し合いをして、平飼い卵などアニマルウェルフェアの推進を協力して進めているところです。 ところが一部をのぞき、いわゆる高級スーパーマーケットにはお話合いを断られることが多く、この企業の対応が、小売業全般のアニマルウェルフェア推進の足かせになっていると考えています。 もともと高級スーパーであれば、平飼い卵は高級品として1ないし2ブランドの取り扱いがあるのが普通です。しかし、それ以上増やすのが、じつは難しい現状にあるのがいわゆる高級スーパーで、そのあたりがNGOとの交流お断りの背景にあるのではと推察します。 高級スーパーはなぜアニマルライツセンターと話し合わないのか? 1,流通経路が多層的・分散的 高級スーパーの多くは、商品を自社生産ではなく、卸業者や専門ブランド、地域の生産者など、多岐にわたる供給元から、創業以来の付き合いで仕入れています。これにより、NGOが「この商品を改善してほしい」と要求したとしても、しがらみ、制約感があるのだと思われます。また、契約期間中の変更が難しく、対応までに長期間かかることも理由ではないかと推察します。 このように、スーパーは見た目以上に「商品選定の主導権」を握っていないケースが多く、NGOとの対話が即対応にはつながらないという現実があります。 2,サプライチェーンの情報共有不足 複数の仕入先・加工業者を通じて商品が供給されることで、「その商品がどのような動物福祉レベルで生産されているか」という情報が、末端の店舗やバイヤーまで届いていない場合が多いと思われます。たとえばわたしたちが「もっとアニマルウェルフェアに配慮された卵を増やしてください」とお願いしても、一般スーパーと違い高級スーパーは、生産背景を把握するための体制が整っていないため、早期に判断・改善できる基盤がないのではないかとおもいます。 3,社会的価値よりも経済合理性を優先する構造的要因 アニマルウェルフェアを推進する市民団体を、軽視する傾向がある高級スーパーは、つまるところ、アニマルウェルフェアを軽視する傾向があるといわざるをえません。アニマルウェルフェア商品のなかにはいわゆる高級品もあるのに、どうしてこのような心理が動くのか?それは企業構造と収益モデルに根ざした問題があるからです。 まず、高級スーパーとは「高付加価値商品を効率的に売る」ことに特化しており、そのための判断基準は味・品質・ビジュアル・話題性など、直接的な購買意欲につながる要素です。そうなるとアニマルウェルフェアのような長期的な企業価値は、その経済的効果が短期では見えづらく、投資対効果(Return On Investment:ROI)を示すのが困難です。 また高級スーパーの多くは、大手流通グループの子会社・関連企業である場合が多く、グループ全体の方針に沿って動くため、グループ方針にアニマルウェルフェアが上がっていない段階では、方針転換しづらいという制約もあります。 さらに、高級スーパーという付加価値てんこ盛りスーパーの場合、アニマルウェルフェアという新しい社会的価値の導入は「他の付加価値とのトレードオフ」になると見なされがちです。たとえばアニマルウェルフェアに配慮された畜産品は価格が高くなるのではないかという懸念から、他のなにかの付加価値を犠牲にしなければ、従来の「高級だが手の届く」イメージから逸脱してしまうことを懸念して、あえて取り扱いを避けることもあるのでしょう。 その結果、社会的課題への取り組みは「大企業のCSR部門がやるもの」「行政や専門家が先導すべきもの」として企業活動の中心から切り離されがちで、高級スーパーの現場レベルの優先度は、極めて低くなっていると思われます。 4,管理コストと制度設計への忌避感 アニマルウェルフェアに配慮した商品展開を行うには、仕入れ先の選別、表示の変更、スタッフへの教育、消費者への説明など、店舗オペレーション全体にわたる制度設計が必要です。これは単なる一商品の追加ではなく、「流通・販売・広報の仕組みを部分的に再構築する作業」となり、コストと時間がかかります。 また、こうした取り組みは一度始めれば、継続的に更新と管理が求められるため、企業としては「一過性のプロモーションでは済まない」ことを理解しており、歴史ある老舗高級スーパーは概して硬直したオペレーションマネジメントのため、新しいことに着手するのを避ける傾向があります。 加えて、消費者や市民団体から「不十分な対応だ」と批判されるリスクもあり、そうした批判に耐える内部体制やコミュニケーション能力が整っていない高級スーパーにとっては、着手そのものが過剰な負担として映るのです。 こういった事情のある高級スーパーとお話し合いを進め、高級スーパーの企業価値を損なわないために、アニマルライツセンターには、最新の情報提供とともに以下のような準備があります。 ①個別商品ではなく「PB商品」など限定した対象に絞った提案 ②必要であれば生産者と連携した対話 ③PR方法の改善や社内教育資料の提供など、即実行可能な支援 今や、スーパーマーケットはアニマルウェルフェア推進の騎手であり、高級スーパーにも同様の対応が求められていることは言うまでもありません。高級スーパーの中に少しずつでも“社会と動物に優しい選択”を増やしていくのが、アニマルライツセンターのミッションです。そのためには、胸襟をひらき、まずお話合いをしたいと願ってやみません。そして、今回のに分析に誤りがあるとしたら、ぜひともご指摘ください。消費者のみなさんも、お気に入りの高級スーパーが、NGOとの対話に積極的かどうか確認をしてみてください。そしてまだ話し合ったことがないのなら、ぜひアニマルライツセンターとともに、アニマルウェルフェアの向上に一歩踏み出してほしいとお願いをしてください。…
まさに奴隷船、過酷な長期間にわたる長距離輸出が変わり始めている。 長らく世界中で生体輸出の反対運動が展開されてきた。その成果が2022年以降、つぎつぎに出てき始め、昨年はイギリスが輸出禁止を法的に決めるという画期的な動きにつながった。日本を含め、長距離輸送は世界中でたくさん行われているが、その変化がようやく始まったのだ。 EU加盟国の共同声明 動物福祉に関する共同声明(2022年): ドイツ、オランダ、ルクセンブルク、スウェーデン、ベルギーの5カ国は、特定の輸出の禁止とEUの輸送に関する法律の抜本的な改善を求める共同声明に署名。 ルクセンブルク 第三国への生体輸送禁止(2022年): 2022年3月より、ルクセンブルクは食肉処理を目的とした第三国への生体家畜の輸送を禁止。 ニュージーランド 生体輸出禁止(2023年): ニュージーランドは、動物福祉上の懸念から、2023年に生体家畜の輸出を全面的に禁止 ブラジル 生体輸出の裁判所命令による停止(2023年): ブラジルの裁判所は、国内全港での生体家畜の輸出を禁止する判決を下した。ただし、この決定は上級裁判所での審査待ちであり、最終的な結果は未定。 イギリス 輸出禁止の法制化(2024年): 2024年5月、イギリスは動物福祉(家畜輸出)法を施行し、食肉処理や肥育を目的とした生体家畜の輸出を禁。 オーストラリア 羊の生体輸出禁止(2028年までに): オーストラリア政府は、2028年までに食肉処理を目的とした羊の生体輸出を段階的に廃止する計画を発表。 日本では牛の長距離輸送が行われ続けている。船で北海道から沖縄まで輸送されるなんてことも日常だ。これらについて、なんの規制もなく、またなんの改善もない。唯一の今年の改善は、郵便局が愛護動物の輸送を廃止したことだ。課題は山積みだが、声を上げることでだけ、変化を起こすことができる。…
フォアグラの輸入量が2024年大幅に減少した。主要な理由は、フランスからの輸入がストップしたことによる。鳥インフルエンザの発生により、フランスでは家禽にワクチンをうつこととなり、そのため生きた鳥も家禽の肉類もすべて輸入が禁止になっているためだ。この場合鳥インフルエンザの状況が変化した際には、フォアグラの輸入にも変化が起きる可能性がある。 だが、スペイン、カナダ、ブルガリアやハンガリーからの輸入も大きく減っている。鳥インフルエンザの発生により、輸入元を様々工夫をこらす業界のあがきが見える。いずれにしても、フォアグラの不安定さを露呈している。 そしてなにより、フォアグラが足りないなんていう声は全く上がらない。そもそも不要なものであり、かつ動物虐待に加担した非倫理的なものであることを認識し、ホテル業界、ウェディング業界、その他飲食店、そして貿易を担う商社などはフォアグラを手放すべきときである。なくても誰も困らないのだ。企業は”客のニーズがあるから提供する”と消費者を言い訳に利用してきたが、そのような言い訳はもう通用しない。企業や事業体の大きさにかかわらず、暴力からはできる限り遠ざからなくてはならない時代なのだ。 日本のフォアグラ輸入量は、2024年9831キログラムであり、羽数で換算すると16,385羽が犠牲になった計算だ。まだ1万6千羽以上が苦しみの中にいるため喜ぶことはできないが、大幅に減少している。私達がフォアグラに反対するチラシを配布しはじめた2008年の輸入量の3.74%になったのだ。 この動きに乗じ、様々な代替品が出てきている。培養フォアグラなども出てきているし、もともと海外ではきのこ類を使った代替品が売られている。更に日本では、いいものとは言えないが、豆腐に他の動物を混ぜて作ったものもある。 年 KG 取引金額 (単位:千円) 羽数換算(600g) 2008年比 2008 262,703 1,256,770.00 437,838.33 0 2009 227,544 887,296.00 379,240.00 86.62% 2010 218,535 789,515.00 364,225.00 83.19% 2011 204,648 744,643.00 341,080.00…
2025年4月15日、実験動物と畜産動物の保護・ウェルフェアのためにすべきことを考える院内集会を開催しました。200名の会場は満席、熱気に包まれたなか、18名の国会議員と19名の議員代理の方々が、産業に利用される動物たちのために駆けつけてくれました。 平日、年度始まりの忙しい中、動物たちのために休みを取り、また遠方から、ご参集くださいました皆様に、心からありがとうございました。この思いが国会に届くことを願い、引き続き課題の解決に向け、訴えて回ります。 ご参加くださった国会議員(あいうえお順) 石井智恵衆議院議員 奥野総一郎衆議院議員 鎌田さゆり衆議員議員 川田 龍平参議院議員 北野裕子衆議員議員 串田誠一参議院議員 小宮山泰子衆議員議員 篠原孝衆議院議員 田中和徳衆議院議員 丹野みどり衆議院議員 沼崎満子衆議院議員 福島みずほ参議院議員 福田 かおる衆議院議員 松木けんこう衆議院議員 松原仁衆議員議員 眞野 哲衆議院議員 みやかわ伸衆議院議員 森山浩行衆議院議員 ご関心を寄せ代理の秘書が参加してくださった国会議員(あいうえお順) あべ俊子衆議院議員 阿部知子衆議院議員 泉ケンタ衆議院議員 岩屋 毅…
最近のメディアでは、米の価格高騰の話題を聞かない日はありません。 この米の価格高騰と、わたしたちが活動する卵の価格の問題とは、共通する点が多いことをご存じでしょうか。 卵の高値のポイント ・行き過ぎた成鶏更新空舎延長事業 ・鳥インフルエンザ 2024年から2025年初めにかけて、約841万羽が殺処分 ・飼料価格、エネルギーコストの高騰 卵の価格の6割が飼料価格 ・流通コスト増 ・飼料会社、卸売会社、流通・小売業者のマージン固定 ・インバウンド増による外食産業、ホテル業の卵需要増 参考:米の高値のポイント ・行き過ぎた減反政策 ・天候不順、気候変動で不作 ・国の在庫管理ミス 国の備蓄米放出の出遅れ ・流通コスト増 ・農協の中間マージン固定 ・輸出増と円安 円安によって海外需要が増える 以上、2つを並べてみると、卵と米、その高値の背景にある3つの共通項が見えてきます。 1環境要因 気候変動、感染症 2政策要因 生産調整が生産力と意欲を奪いすぎた。なおかつ安定策を誤った。 3市場要因 外国人需要の高まりを受け止めきれない 行き過ぎた生産調整に疑念 なかでも今、問題とすべきなのは2です。 行き過ぎた減反政策で人生を変えられた。減反に応じないと農業をつづけられないところまで追い詰められた…
近年、世界中の国が次々と毛皮農場を禁止し、カリフォルニア州を始め毛皮の売買の禁止も進んでいる。だが、日本で、または世界でも、毛皮の問題はいまもまだ解決に至っていない。動物たちは苦しみの中に取り残されたままだ。 財務省貿易統計によると、毛皮・または毛皮がついた衣類などの輸入量は減り続けている。それでも、2024年の日本の消費による動物の犠牲数は189,639頭であった。 (単位:KG) 毛皮 はき物 毛皮付衣類付属品合計 2015年 144,750 4,415,801 2,188,900 2016年 125,260 2,892,590 1,730,789 2017年 143,432 2,673,034 2,004,372 2018年 147,974 2,465,874 1,933,442 2019年 106,557 2,114,645 1,302,806 2020年 91,992 1,520,074 669,116…
米国は1938年に連邦食品・医薬品・化粧品法(FD&C法)により、新薬のヒト臨床試験前に動物実験が義務化し、2022年12月に「FDA Modernization Act 2.0」が成立させ、動物実験の義務が撤廃され、その方針に従い、2025年4月10日に、FDAは、AIモデルやヒト由来の細胞・オルガノイドを用いた新たなアプローチ(NAMs)を積極的に導入し、動物実験の段階的な廃止を進める計画を発表した。新薬開発者に対し、動物実験ではない方法で得られたデータの提出を奨励し、特定の条件下では迅速な審査を行う方針だ。 FDAは公式の発表の中で以下のように述べている。 「製薬会社は長年にわたり、国際的に広くヒトへの使用実績のある医薬品について、追加の動物実験を行ってきました。この取り組みは医薬品評価におけるパラダイムシフトであり、動物実験を削減しながら、米国人にとっての治癒と有意義な治療の実現を加速させる可能性を秘めています」と、FDA長官のマーティン・A・マカリー医学博士(公衆衛生学修士)は述べています。「AIベースの計算モデリング、ヒト臓器モデルに基づくラボ試験、そして実世界のヒトデータを活用することで、より安全な治療をより迅速かつ確実に患者に提供できると同時に、研究開発費と薬価を削減できます。これは公衆衛生と倫理の双方にとってメリットのあることです。」 重要なことであり、そして日本での認識が足りていない部分が、動物実験を排除していくことが”より安全な治療をより迅速かつ確実に患者に提供できる”ことに繋がると言う部分である。動物実験は人の治療を妨げてきたのだとも言える。もしも1938年に義務化していなかったら、より多くの人が救われていたかもしれない。 EUは米国より先に動物実験を廃止する動きをしている。欧州議会は、動物実験の段階的廃止と代替手法への移行を加速するための行動計画を求める決議「研究、規制試験および教育における動物の使用なしでの革新への移行を加速するための計画と行動」を採択している。 世界は動物実験ではなく、人をベースにした試験方法にすでに移行している。動物実験は動物を害するだけでなく、人も害するのだ。これをしっかりと日本人は認識すべきである。 https://doi.org/10.1177/02611929231157756 未だ、日本の動物愛護管理法では、3Rのうち2Rが義務化されていない。動物の苦痛の軽減は義務規定だが、罰則もなく、義務規定といっても強制力はない。日本はあまりにも努力も科学も足りない状態である。 *https://www.amjmed.com/article/S0002-9343%2823%2900254-1/ *https://www.fda.gov/news-events/press-announcements/fda-announces-plan-phase-out-animal-testing-requirement-monoclonal-antibodies-and-other-drugs *https://www.reuters.com/world/us/us-fda-phase-out-animal-testing-drug-development-2025-04-10/ *https://www.pcrm.org/news/news-releases/fdas-plan-replace-animal-testing-begins-new-era-drug-testing-says-doctors-group https://www.europarl.europa.eu/doceo/document/E-10-2025-001354_EN.html…
アニマルウェルフェアの設備投資に対して国が理解を示さず補助がないことがケージフリーや妊娠ストールフリー、鶏の屠殺場改善のネックになっている。このことを問題視し、自らも長崎県で放牧養鶏を行う国会議員山田勝彦議員が、衆議院農林水産委員会で大臣に理解を求めた。 山田議員から国際的な水準をクリアするケージフリー、ベターチキン、妊娠ストールフリー、つなぎ飼いフリーの設備投資に対し、支援があるかを確認したところ、農林水産省は牛の放牧については牧柵の支援などがあり、また採卵鶏の平飼い飼育については畜産クラスターで支援が可能であると回答した。 畜産クラスター事業での支援は以前から可能となっているが、実際には非常にハードルが高い。地域全体で畜産の収益性を向上させるために、畜産農家と地域の畜産関係者(流通加工業者、農業団体、行政など)が連携して事業を行うことが条件となるためだ。ケージフリーは1羽あたりの産卵率をあげるなどはできる可能性があるが、地域で収益性を上げたりを押し通すことは簡単ではないだろう。そもそも羽数を増加させるることはアニマルウェルフェアの目的にかなっていない。また、生産者がやろうとおもっても、その周辺の関係者の理解を得る必要があることも大きなハードルだ。 これに対し、山田議員はアニマルウェルフェアを独立させる必要があると訴えた。 江藤大臣は、アニマルウェルフェアは難しい課題だとし、「ゲージの中に入れて前しか向けない状態で卵を産み続けることについて、いかがなものかという指摘は国際的にもあ」ると課題は認識しているが、国内的にも批判が大きくなっていることは気がついていないようだ。アニマルウェルフェアを独立させるのは、小さな予算しかとれない可能性などを示し否定的だった。だが、これは単なる制度の技術的な話でしかない。本質は、アニマルウェルフェア自体に価値を認めるかどうかなのだが、この部分はぼかしたままとなった。 もう一点重要なことは、「環境省の法律に従ってですねやってることだけはご理解いただきたい」と述べ、農林水産省のアニマルウェルフェアへの取り組みが動物愛護管理法が根拠となっていることを明言したことだ。主体性のない環境省が主導なのではお先真っ暗である。別の記事で書くが、畜産動物のアニマルウェルフェアの特性を考えると、必ずしも環境省の動物愛護管理法だけが根拠ではないはずだ。食料・農業・農村基本法という農林水産省の法律があり、これもまたアニマルウェルフェアを推進しなくてはならない根拠なのではないかと思う。 2025年4月8日農林水産委員会質疑全文(該当箇所のみ) 山田勝彦議員:次に、アニマルウェルフェア、動物福祉についてです。 私自身、8年前、スイスに農業福祉を学びに行った際、畜産の方法が日本と全く違うことに驚きました。 牛も豚も鶏も放し飼いでなければ法律違反になることを知りました。 私は帰国してすぐ、地元長崎県の大自然の中で放し飼いで養鶏を始めました。 おそらく700人以上いる国会議員の中で、動物福祉を実践している人は少ないと思います。そういった意味で現場の思いを込めて質問させていただきます。 アニマルウェルフェアとは、動物が意識や感覚がある存在であることを理解し、たとえ短い一生であっても、動物の生態欲求を妨げることのない環境で適切に扱うことと定められています。 この考え方は1965年イギリスで提唱され、世界中で採用されています。 そして日本は世界に比べ、このアニマルウェルフェアがかなり遅れています。 世界中で動物保護活動を行う世界動物保護協会が発表した2020年の動物愛護指数ランキングで日本は最低ランクのGです。 資料5をご覧ください。 国際水準のレベルを取り入れなければ評価されません。 狭く窮屈な環境から動物たちを解放していく、卵はケージフリーへ、肉用の鶏はベターチキン、豚は妊娠ストールフリー、牛は繋ぎ飼いフリーこのような動物福祉に配慮した環境を整えるための設備投資に対し、国からどのような支援があるのでしょうか? 松本畜産局長:お答えします。 アニマルウェルフェアに対応してできる生産方式としましては、例えば牛の放牧に必要な牧柵、吸水施設等の整備に対する支援、また、乳用牛の自主的な行動を促す飼養管理システムであります搾乳ロボットや、採卵鶏の平飼い方式の導入に対しまして、畜産クラスター事業やICT化等機械装置の導入事業などによりまして支援を行ったとこでございます。 山田勝彦議員:はい、ありがとうございます。 畜産クラスター事業の中で、アニマルウェルフェアの取り組みを支援できるようになったということですただ、畜産農家のほとんどはこの情報を知りません。壱岐の島で新たに放牧を始めた若手農家さんから話を伺いました。 みんな良い牛を育てるために環境が大切だと理解していて、限られた環境、牛舎の中で牛のストレスを減らす努力をしていると私に教えてくれました。 畜産動物の放牧を積極的に進めていくのであれば、例えば、アニマルウェルフェア環境整備支援事業として畜産クラスターから独立させ、現場にわかりやすく発信していくべきだと考えております。 こういった考えに対して、大臣、ご賛同いただけでしょうか 江藤拓農林水産大臣:このアニマルウェルフェアですね。 難しいですね。平飼いをされてることでありますが、ゲージの中に入れて前しか向けない状態で卵を産み続けることについて、いかがなものかという指摘は国際的にもあります。 しかし日本の限られたこの今土地の状況の中でですね、国民の需要を満たすために卵を生産することについてはですね、なかなか現状では難しい部分ありますが、ただいま環境省の法律に従ってですねやってることだけはご理解いただきたいと思います。このアニマルウェルフェアの部分を畜産クラスターから分離するということでありますが内数であることの方がですね、やりやすいと思いますよ。これを別途にするとですね、果たしてどれだけの予算規模を獲得できるのかっていうこともあるかもしれませんし、基本的にはアニマルウェルフェア推進すべきだと思いますが思っておりますが、しかし日本の現実ともですね、見合いながら日本で日本の事情があるということもですね、同時に国際社会には説明する必要もあるんだろうというふうに思ってます。 山田勝彦議員:ありがとうございますまだまだ質問があったけど時間がまいりました。今国会で動物愛護法の改正が予定されておりますアニマルウェルフェアの向上をしっかりと訴えてまいりますありがとうざいました。…
日本国内の家禽の屠殺において、世界標準となっている事前意識喪失(スタニング)が行われていないこと、および中にはアフタースタナーと呼ぶ動けないようにするための事後の電気ショックまでおこなわれていることについて、世界的な屠殺に特化した動物福祉団体 Humane Slaughter Association(HSA:人道的屠殺協会)の見解をいただきました。 HSAのコメント HSA(人道的屠殺協会)の立場は、すべての動物を放血の前に効果的に気絶させるべきである、というものです。これにより苦痛の可能性を防ぎます。 気絶処理なしで家禽を屠殺することは、不必要な痛み、恐怖、苦痛を鳥に与えることになります。首の切断は痛みを伴います。この切開は、痛みを感知する受容器(侵害受容器)が存在する領域に深刻な組織損傷を引き起こし、それが活性化されることで痛みが生じます。首の切断による出血によって最終的に意識を失うことになりますが、それは即時ではありません。それまでの間、鳥は痛み、恐怖、苦痛のため非常に劣悪な福祉状態に置かれます。また、意識がある状態で鳥に対して身体を不動化させるための電流を流すことは、さらなる痛みを引き起こす可能性があるため避けるべきです。 さらに、家禽を意識がある状態で拘束具(シャックル)に吊るすべきではありません。逆さに吊るすことは痛みと恐怖を引き起こします。鳥には横隔膜がないため、逆さにされることで内臓が心臓や肺を圧迫し、不快感を与えたり呼吸を妨げたりする可能性があります。拘束具は鳥の脚を圧迫し、痛みを引き起こします。 制御大気気絶処理(CAS:Controlled Atmosphere Stunning)法は、より人道的な家禽の屠殺手法になり得ます。輸送用クレートの中で鳥を屠殺できるシステムであれば、意識がある状態での拘束や逆さ吊りに関連する福祉への悪影響を排除できます。意識喪失を誘導する際の不快感を最小限に抑えるために、できる限り嫌悪感の少ないガスや低気圧システムを使用することが重要です。CASシステムはヨーロッパで商業的に広く使用されています。HSAは、現在スタンを行っていない事業者に対して、できる限り早急に人道的なCASシステムへの切り替えを強く求めています。…
日本の鶏・鴨など家禽の屠殺場(食鳥処理場)では、世界中が行っている事前意識喪失の行程を省くという悲惨な状況が続いている。 世界のスタンダードを知るため、世界の規制がどうなっているかをまとめた。(スタニング=事前意識喪失) 屠畜時の法規制 ※宗教屠畜除く 中国 屠畜前のスタニングを奨励(国会基準の行程に意識喪失あり) 山東省はスタニング義務あり 韓国 屠畜前のスタニングが義務 フィリピン 屠畜前のスタニングが義務 マレーシア 屠畜前のスタニングが義務 インド 屠畜前のスタニングが義務 タイ 屠畜前のスタニングが義務 ベトナム 屠畜前のスタニングが義務 ブラジル 屠畜前のスタニングが義務 ペルー 動物の屠殺は即死または即意識を失わせなることが義務、少しあやふや 米国 州により屠畜前のスタニングが義務 カナダ 屠畜前のスタニングが義務 メキシコ 屠畜前のスタニングが義務 EU…
日本でも進みはじめた畜産動物・水産動物のアニマルウェルフェアですが、その動きを大きくするのは企業の取り組みです。この1年間で重要な一歩を踏み出した企業3社を高く評価し、アニマルウェルフェアアワード鶏賞、および豚賞を送ります。アニマルウェルフェアの取り組みにおいて日本はアジア諸国の中でも遅れており、まだまだ手探りのような状態。そのような中、取り組みや決断の裏には大変な努力があります。各社の取り組みや決断に、心から敬意を表します。 https://www.hopeforanimals.org/animal-welfare-award/ 🐔鶏賞:キユーピー株式会社様 2024年、キユーピー株式会社はOpenWingAllianceとのキャンペーンと交渉により、欧米では使用するすべての卵をケージフリーにすること、グローバルでは2027年までにマヨネーズに使用する卵を20%ケージフリーにすること、そして日本では2030年までにマヨネーズに使用する卵の20%にあたる量をケージフリーで調達し、さらにケージフリーの市場拡大を目指すことを明らかにしました。 これにより数十万羽の鶏がケージから解放されることとなり、これまでの国内企業の取り組みの中では最大の鶏への恩恵になるであろうことを評価しました。 🐔鶏賞:株式会社シャトレーゼ様 シャトレーゼは自社で放牧養鶏を始め、2024年にその卵を使ったプリンの販売を『YATSUDOKI』のブランドで開始しました。平飼い卵の安定調達と、中長期的に見た企業価値向上を目標に、大手製菓企業が自社内で養鶏を始めるのは新たな方法であることはもちろんのこと、放牧という世界水準を超えるアニマルウェルフェアに取り組むことは、日本の卵業界、および製菓業界に衝撃を与えます。放牧4万羽という数は決して少なくありません。 さらに昨今、ケージフリー卵の需要増加に対し、十分な供給ができない状態の国内養鶏を刺激した、インパクトの高さを評価しました。 🐽豚賞:株式会社七星食品 七星食品は香川県、徳島県に位置する養豚場です。国際的なアニマルウェルフェアをいち早く取り入れ、妊娠ストールフリーに取り組んできました。2025年、新たな一歩として、残りの母豚の妊娠ストール豚舎もストールフリーに建て替えることを決め、動き始めました。七星食品は1棟目の妊娠ストールフリー豚舎から、その価値と経験を、他の養豚業者にも伝えてくれています。養豚大手が妊娠ストールフリーに向けて動き始める一方で、国内の中小養豚場が取り残されつつあるなか、七星食品の活躍と姿勢は大きなインパクトを与えます。 アニマルウェルフェアを正しく前向きに捉え、従業員の働きがいにつなげ、小売業と協働で発信も行うという、アニマルウェルフェアを実践する生産者としての価値を、最大限に活かす姿勢を評価しました。 ▼アニマルウェルフェアアワードとは 前年度に国内のアニマルウェルフェアにとって効果的だった企業に贈るアニマルウェルフェアアワード。今年は鶏賞を2社に、豚賞を1社にを送ることが決定しました。 アニマルウェルフェアアワードは畜産水産動物福祉の向上に取り組む認定NPO法人アニマルライツセンターが、前年度(2024年4~2025年3月末)までの間のアニマルウェルフェア向上に最もインパクトのあった企業を評価するものです。 https://www.hopeforanimals.org/animal-welfare-award/ ▼アニマルウェルフェア、すべての食品企業が進める時代に 世界のアニマルウェルフェアの進みと国内の進みでは、速度が異なりますが、それでも国内でもようやく具体的な動きが始まりました。それが2024年度に起きたことです。しぶしぶ一歩を踏み出した企業も、価値を把握して意気揚々と一歩を踏み出した企業もありますが、その両方が国内の畜産動物たちの希望です。 しかし残念ながら肉用鶏のアニマルウェルフェアについては良い動きがありません。外国産の鶏肉のアニマルウェルフェアの水準まで全く追いつかない国内の鶏肉は、大きなリスクを抱えています。食の安全に直結する肉用鶏のアニマルウェルフェアを進めないことは、国民全体のリスクでもあります。2025年度以降は、肉用鶏のアニマルウェルフェアについても取り組みが深まることを期待します。 最後に、アニマルウェルフェアを上げることを検討し、行動をしてくれたすべての企業に感謝します。 ありがとうございました。 なお、受賞企業にはあらためてお礼をお伝えいたします。…
世界は今、ロシアウクライナでも、ガザイスラエルレバノンでも平和から遠ざかっていっています。これらの動きに引っ張られ、社会は成熟から遠ざかっているようにも思います。 なぜ人は人への暴力をなくせないのでしょうか。 63回目のアニマルライツチャンネルでは、人と動物の連続性、つまり動物への暴力が人への暴力と密接につながっているというお話をします。 日時: 2025年4月10日(木曜日) 20時30分〜22時過ぎ https://youtube.com/live/4YEGZsFxCfY こちらからご覧ください。…
「持続可能な開発目標(SDGs)に関する自発的国家レビュー(VNR)に 関する意見」のパブリックコメントの募集が行われています。SDGsの目標を達成することがかなり難しい状況になっている今、より加速し、さらに効果を高める取り組みをする必要があります。一方、目標の多くにはアニマルウェルフェアが関わっており、ここが日本政府の施策からは抜け落ちています。 アニマルライツセンターからは以下の文章を提出しました。みなさまからも、アニマルウェルフェアへの取り組みを、持続可能性を高めるためにも行うべきである旨を意見してください。 https://public-comment.e-gov.go.jp/pcm/detail?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&Mode=0&id=350000220 から意見をしてください アニマルライツセンターからの意見 VNR案には「環境保全」や「人権擁護」に関する記述はありますが、これらを含むエシカル消費の三大目的の一つである、「動物の命の尊厳」に関する施策であるアニマルウェルフェアがまったく入っておらず、問題であると考えます。 2022年3月2日、国連環境計画(UNEP)が主催する第5回国連環境総会(UNEA)で、決議「アニマルウェルフェア・環境・持続可能な開発の繋がり」が採択されています。本総会のテーマは「持続可能な開発目標(SDGs)を達成するための自然のための行動の強化」でした。 それに向けて、ガーナ政府は他の6つの国連加盟国と共に、このアニマルウェルフェアの決議案を提出しており、世界中の動物保護団体が各国に賛同を求めていました。結果として日本を含めた193ヵ国すべてが賛成しました。アニマルウェルフェアに焦点を当てた決議案が国連で採択されるのは、これが初めてです。 決議案の主な内容は以下の通りです。 生物多様性の喪失を食い止め、生態系を回復し、気候変動を緩和し、汚染を防ぎ、新たな人獣共通感染症のリスクを低減し、持続可能かつ農業生態系を保護する食糧システムと持続可能な開発へ移行するという意図を踏まえて、野生動物やその他人間以外の動物を保護し、生息地を保護し、動物福祉の要件を満たすよう加盟国に求める 。 アニマルウェルフェア・環境・持続可能な開発の繋がりについての報告書を作成するよう事務局長に要請する。 この決議の実施について第6回総会(2024年)で環境会議に報告するよう事務局長に要請する。 この決議案の概念についてのコンセプトノートには、「動物の搾取と非人道的な利用が、生物多様性の喪失、気候変動、汚染という3つの環境危機、および現在の世界的な新型コロナウイルス感染症のようなパンデミックの出現の主要要因であること」が概説されている。 「動物の福祉に悪影響を与える人間の行動」がこのような危機の主な要因に含まれるため、「更に、アニマルウェルフェアの改善が自然環境に直接的に貢献し、SDGsを達成するための私たち全員の取り組みを強化できることは、増えつつある科学と経験によって示されている」と指摘されています。 以上より、本VNR案にアニマルウェルフェア推進の記述が何もないことは、日本が本分野において何も関心がなく、行動していないかのような印象を世界中に発信することになります。よって、関連文章の挿入を求めます。 SDGsの各目標とアニマルウェルフェアの関係は下記に記述しています。 https://www.hopeforanimals.org/environment/…
取り組みの始まりは生協から 母豚のストールフリー飼育に力を入れる㈱七星食品を、アニマルライツセンターが知ったのは、関西四国地方でアニマルウェルフェアをいち早く取り入れた、コープ自然派の取り組みからでした。コープ自然派が目指す農業の課題には、まず農薬の問題がありました。その目に見える指標として、地域の昆虫や野生鳥類の生態系の観察があり、その先に生まれてきたのが、地域の畜産動物の飼育環境はどうなっているかという疑問でした。さらにヨーロッパの新しい畜産の流れに刺激され、アニマルウェルフェアはコープ自然派の取り組みの大きな柱になっていくのです。 それを実践していくうえのパートナーとして、注目したのが七星食品でした。そのころの七星食品もまた、ヨーロッパのアニマルウェルフェアの流れを受け止めて、ストールフリーでの母豚飼育に踏み出そうとしていたからです。七星食品には古くからある繁殖豚舎が2棟あり、その1棟をストールフリーへ切り替える準備をしていました。当時のストールフリー豚舎はストール豚舎よりも建設、運営コストがかかると見込まれており、少し販売価格が高くならざるをえないストールフリー母豚産の肉を、本当に買ってくれる消費者がいるのかという疑問がありました。そこで七星食品はコープ自然派に何度も何度も確認しました。 「間違いないですよね?消費者に買ってもらえますよね?」 コープ自然派は組合員へのたゆまぬ発信で、その不安にこたえようとしました。七星食品に対し 「次の組合員への発信はアニマルウェルフェアをテーマにします。それについてこんな写真はありませんか?」 コープ自然派は何度も七星食品の養豚の様子をわかりやすい写真を添えて発信し、そのアニマルウェルフェア的な価値は組合員に浸透していきました。コープ自然派という意識の高い生協が推進するアニマルウェルフェアというひとつの運動に、組合員が消費という形で参加したいとおもうようになっていくのです。 ストールフリー豚肉の難しい課題を超える生産者マインドとは しかし、母豚のストールフリー養豚には一つの難しいビジネス課題があります。それはストールフリーとそうでない豚肉の味に変化がないのに、価格が違うということです。七星食品の肥育(肉用豚)施設にはバイオベッドや一頭あたりの飼育面積など、他と差別化できる要素があり、それははっきりと品質の違いにでるから、消費者からも高い評価を得ています。しかし母豚の環境を狭いストールから自由に動けるストールフリーに変えることは、目に見える、食べてわかるような商品価値の変化をもたらすものではありません。生産事業部の海部さんはストールとストールフリーの違いを 「繁殖成績が変わるということはない。つまり、ストールフリーにしたからといって生まれる子豚の数が変わるわけではないということ。しかしそれであれば、ストールフリーのほうがいいと思う。同じ成績ならば、ストールフリーのほうがいいとおもうんです。当社にはストールとストールフリーの豚舎があるので、比較すると、狭いストールにいる母豚はかわいそうだとおもう。前後20センチぐらいしか動けないんですよ。横は動けない。 豚の飼育をする仕事のやりがいは数をこなすことではないんです。豚と遊ぶというのかなあ。豚と戯れられるのがストールフリー豚舎。もともと豚は鼻がよくて、飼育者一人ひとりを認識しわけている。とくに母豚は飼育期間が長いからよく懐く。それが飼育管理の仕事の幸せなんですよ。でも(妊娠)ストール豚舎の母豚のことは機械のように感じてしまう。豚として見たいのに。それでも人間のにおいを感じるから、慣れて戯れるけれど。でもストールフリー豚舎なら、同じ飼育が楽しいんですよ。生産者の幸せ。生産者の喜び。我々の業界には動物が好きで入ってくる若者が多いから、やりがいとしては大きな違いとなる。豚と戯れられる仕事がしたいのだから、ストールフリーだと仕事が続けやすくなる。結局生産者が楽しいと思えるのがストールフリー飼育の価値だとおもいます」 海部さんの言葉を言い換えるなら、養豚事業の持続可能性に集約されるでしょう。現在の畜産の最大の問題は働き手の不足で、それで経営困難となり廃業する事業所があとを絶ちません。これを克服する最大のカギがストールフリー化だと、海部さんはおっしゃっています。養豚は辛い、大変な仕事だとマイナスに陥りがちな生産従事者のマインドを、養豚は大変だけど楽しい、豚の世話ができて幸せだに変えていくのが母豚のストールフリーなのです。海部さんは 「母豚が自由に動けるストールフリーには足に怪我をしたり、喧嘩するなど一長一短ある」 とも言います。まだストールフリーに取り組んでいない養豚業者の多くが、この点に不安を持ちますし、それはストールフリー飼育の注意点であることを意識して、海部さんは日々、豚を世話しています。だからこそ 「従業員の教育が大事。何に注意すべきか、どこを見るか、しっかり仕事を覚えていく」 進むストールフリー。不安をもらす経営担当者 2021年に日本ハムがストーリフリー宣言をしたときには、「流れが来たな」とおもったという海部さん。 「でも自分たちが先駆者。競争するでもなく、自分たちは自分たちの道を歩もうとおもった」 その七星食品は今年、新たな第一歩を踏み出します。もう1棟のストール豚舎もストールフリーに建て替えを始めるのです。これに対して管理事業部の大井さんには心配もあります。 「弊社には阿波ファームとさぬきファームがあります。阿波ファームがすでにストールフリーで、今年からさぬきファームのストールフリー化への建設を始めます。設備は阿波ファームと同じものを導入する予定です。しかし香川県特産豚も生産している関係で、一気にストールフリーに切り替えることはできません。価格の問題がありますから。だからさぬき市の方は段階を追って建て替えていきます。さらに建設資材の高騰の問題、建設作業者の不足の問題がありますから、完成がいつになるかはいまのところわかりません。見積もりをとって、何か問題がおきて、また見積もりをとって、の繰り返しなんです。しかし最終的にはすべてストールフリーにしますよ」 アニマルライツセンターの取材に答えてくださった、生産担当者と管理担当者の完全ストールフリーへの受け止めには、若干の違いがありました。生産担当者の声はあくまでも強く明るく、希望にあふれている。対して管理経営担当者の声は慎重で、言葉を選び、事業の行方を案じながら、それでも覚悟を決めてアニマルウェルフェアの追求に歩みを進めている。これはとても興味深い違いで、現在の母豚のストールフリーの現状を声の表情で示してくれます。母豚が喜ぶ未来に重ねる生産者の明るい未来。その反面、悪化の一途をたどる今の日本経済に対する漠然として不安。七星の場合はうまくいっていますが、ほかのたいてい養豚業者にとっては、ストールフリー豚肉の売れ行きという不安もあります。 この点に対して管理事業部の大井さんはこう分析しています。 「ヨーロッパはアニマルウェルフェアをやろうとして、最初は肥育しかできなかった。それが繁殖(母豚のストールフリー)にも広げられて、今は輸送にも広がってきている。その流れにウチも乗っていきたい。全棟アニマルウェルフェアになったら、むしろヨーロッパだけでなく、日本の農水省の考えもいれて、日本のアニマルウェルフェアを実現していきたい。それが今、一般の農家にできるかといったらできるところは少ないかもしれない。だからこそ完全ストールフリーになったら、農水省の取り組みをしっかり取り入れていきたい。それでウチが日本のストールフリーの基準になっていけば、経営の不安も払拭されるだろう」 「アニマルウェルフェアをやりたい」生産者の本音 最後にちょっと意地悪な質問をぶつけてみました。 -もしコープ自然派の存在がなかったら、七星食品のアニマルウェルフェアはどうなっていたと思いますか? この問いに対して答えてくれたのは、やはり生産事業部の海部さんでした。 「うーん……コープ自然派がなくても、アニマルウェルフェアはやっていたとおもう。いずれにしても、新しいことをやろうと思っていたときに、ヨーロッパから日本にアニマルウェルフェアが来た。ストールフリーをやりたいと思った、だから、もしコープ自然派さんがいなければ、ストールフリー豚肉を供給できる小売り店を、自分で一生懸命探していたと思う」 その答えを聞いたとき、アニマライツセンターは胸が熱くなったことは言うまでもありません。アニマルウェルフェアをやりたい。ストールフリーをやりたい。働く人が当然求める「やりがい」の追求に、日本のストールフリー化へのカギはあるようです。…
千葉といえば・・・アニマルライツセンターの動物の未来サンクチュアリがある場所として近頃アニマルライツ色が濃くなり始めています。でもまだまだ動物たちのための動きは鈍く、もっと勉強してもっといい地域にしていくために、集まれる場を作りたい!東京でやってる動物の未来BASE千葉版を企画しました。 元衆議院議員の堀越けいにん、ドキュメンタリー作家の佐藤榮記、アニマルライツセンター代表の岡田千尋が千葉に集い、動物のためのトークセッションを行います。 何を学べるか:動物たちに思いやりを持って暮らす素晴らしさ、鶏や豚たちの現状、変わり始めた社会の意識と企業の動き、動かない国の動きと課題、動物園の動物たちの現状と変化 cafe369のヴィーガン弁当を食べながら、3人のトークを聞いて知識を頭に入れながら、動物たちのための一歩となる時間を過ごましょう。 日時: 2025年6月7日(土曜日)12時30分~14時15分(12時15分開場) 場所: cafe369の2階レンタルスペース( 千葉県千葉市中央区新町1−12) 費用: 2000円(ヴィーガン弁当付きのプランのみ お飲み物は持参してください) プログラム: ヴィーガンお弁当の説明:cafe369店主 伊庭潤子 畜産動物の最新事情:アニマルライツセンター岡田千尋(15分) 動物園の最新事情:佐藤榮記(15分) 動物のために声を上げて社会を変える:堀越けいにん(15分) 堀越けいにん、佐藤榮記、岡田千尋パネルディスカッション(40分) 質疑応答とみんなで話す時間(30分) クロージング お申し込みはこちらから peatixでお申し込み…
アニマルライツセンターは、2030年には採卵鶏がケージに閉じ込められていないのが当たり前になった社会、肉用鶏が今の半分の飼育密度になった社会、すべての豚が妊娠ストールに拘束されていない社会を目指しています。もう少し先の将来では、工場畜産がなくなることを目指しています。 工場畜産は最大規模の動物虐待です。私達が現在最も力を入れて取り組んでいることは、この底辺で苦しむ動物たちの苦しみをなくすという動物たちの状況の底上げです。なぜなら大多数の動物がこの最底辺の環境下に置かれているからです。彼らを苦しみの中に取り残していたら、いつまでたっても社会から暴力はなくならず、社会も地球環境も持続可能にはなりません。 このページを見てくれる人たちにとって、動物保護や人権養護、エシカルな社会の実現のための行動は”ライフワーク”だと思います。今アニマルライツセンタースタッフとして活躍するメンバーもそうです。 でも、もっと社会に影響力を及ぼすために、NGOのスタッフとして、チームのコアな一員として、働いてみませんか? あなたの貴重な平日の昼の時間を、動物たちのために、エシカルな社会の実現のために使うのは、あなたの人生をより豊かにするでしょう。 一緒に社会を変えましょう。 募集中の職種、アニマルライツセンターの大切にしていることなどは下記からご確認ください。 採用情報を見る…
世界では今、畜産動物や実験動物のような産業に利用される動物の規制が強まっています。日本でも大手食品企業はアニマルウェルフェアのポリシーを掲げるようになり、多数の企業が化粧品のための動物実験を廃止しています。 一方、国の法整備、規制は全く進んでいません。畜産動物や実験動物も対象であるはずの動物愛護法ですが、その検討から畜産動物や実験動物が後回しにされています。化粧品の動物実験の法的禁止も40カ国に増える中、日本ではようやく超党派議員連盟での検討が始まったところです。農林水産省がアニマルウェルフェアに関する飼養管理指針を作るも、強制力がなく、日本の法整備は最低ランクに位置づけられています。 そこで、畜産動物、実験動物それぞれについて、専門家、企業など様々な分野の方にご登壇いただき、異なる視点で情報提供をしてもらい、今後の国の政策のあり方を国会議員や市民の皆さんとともに考えます。 ■日時: 2025年4月15日(火) 10:30~12:30 10:00開場(10:45までロビーにて通行証を配布) 10:30開始 12:30終了(予定) ■場所: 衆議院第一議員会館 大会議室 (東京都千代田区永田町2丁目2-1) 最寄り駅 国会議事堂前駅(丸ノ内線・千代田線)/永田町(有楽町線・半蔵門線・南北線) ■参加方法: 下記のフォームからお申込みください。 参加申込みフォーム ※参加費:無料 ※定員(200名)になり次第、申込受付を締め切ります。 プログラム: 10:00開場(10時45分までロビーにて通行証を配布します) 10:30スタート ◆開会挨拶 NPO法人動物実験の廃止を求める会 事務局長 和崎聖子 ◆特別ゲストスピーチ 立教大学 社会デザイン研究科特任教授 河口眞理子氏 ◆実験動物の現状…
日本有数の蔵書を誇る「思う存分読書できる」芝パークホテルは、環境に配慮したウェルビーイングな取り組みとして、朝食に平飼い卵料理とヴィーガンカレーメニューを提供しています。 畜産と動物の課題解決のためには、アニマルウェルフェアと動物性食材不使用のバランスが必要で、両者は車の両輪ともいえる、どちらが欠けても目的を達しない関係にあります。 その意味で、芝パークホテルの取り組みは、中庸を得て完全な朝食スタイルといえます。同ホテルは早期からアニマルウェルフェア情報の収集に熱心で、アニマルライツセンターが信頼を寄せる、都会のサスティナブルなホテルです。 サイトにはこだわりの朝食として下記のように書かれています。 こだわりの逸品 国産の平飼い卵の使用(アニマルウェルフェア) 提供する殻付き卵は全て国産の平飼い卵を使用しています。平飼い卵は、鶏が自由に動き回れる環境で育てられており、ストレスの少ない健康的な鶏から産まれた新鮮で安全な卵をご用意しております。…